National Clinical Database を用いた医療資源の現状把握並びに適正配置に関する研究

文献情報

文献番号
201232012A
報告書区分
総括
研究課題名
National Clinical Database を用いた医療資源の現状把握並びに適正配置に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岩中 督(東京大学医学部附属病院 小児外科)
研究分担者(所属機関)
  • 里見 進(東北大学 )
  • 兼松隆之(長崎市立病院機構)
  • 杉原健一(東京医科歯科大学 腫瘍外科)
  • 高本真一(三井記念病院)
  • 橋本英樹(東京大学 保健社会行動学)
  • 木内貴弘(東京大学大学 病院医療情報ネットワーク)
  • 宮田裕章(東京大学 医療品質評価学)
  • 後藤満一(福島県立医科大学 第一外科)
  • 本村 昇(東京大学医学部付属病院 心臓外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本では現状、多くの外科領域においてどのような品質の医療が提供されているかについて把握されていない。このような状況で、患者の視点に基づいた良質な医療を根拠に基づいて提供するため、多くの臨床学会が連携して外科専門医制度と連携したNational Clinical Database(以下、NCD)が2010年4月に設立された。本研究はNCDとの連携の下で、よりよい医療を長期的に提供することができる体制を構築するため、臨床現場との連携により体系的なデータ収集と実証的な分析を行うものである。本研究の目的は、NCDを用い、日本全国の領域別・術式別の臨床実態を明らかにし、医療資源の適正配置、医療提供体制の再構築に向けた方針を検討することである。また、臨床データベースから創出されるエビデンスが信頼性の高いものであるためには、臨床データベースのデータに対する品質管理・品質保証が重要となる。本研究では、NCDにおけるデータの質検証を行った。
研究方法
NCDは、2011年1月1日より、外科専門医、心臓血管外科専門医、消化器外科専門医、小児外科専門医、内分泌・甲状腺外科専門医、乳腺専門医、呼吸器外科専門医などが協働して、共通のプラットフォームを用いた症例登録を開始した。NCDでは共通調査票に基づいた体系的なデータ収集を行っており、2011年は年間で約120万症例が蓄積された。そこで2012年度の分析で、2011年1月1日~2011年12月31日に手術を受けた2011年手術症例について、まず外科専門医制度上認められる術式に関して登録された施設診療科を対象に、①手術症例数、②7つの領域別(消化器・腹部内臓、乳腺、呼吸器、心臓・大血管、末梢血管、頭頸部・体表・内分泌外科、小児)の手術症例数、③領域ごとの主なNCD術式別の手術件数を分析した。またNCDは、2012年8月より、2011年手術症例に対するデータの質の検証を開始した。検証は、医療機関の訪問による診療録等とNCDデータの照合によって行い、本研究では現在までに分析を終えた15施設を対象とした。
結果と考察
3,007施設4313診療科で1,165,178件の手術症例数が蓄積され、NCDにおける領域別の手術症例数、各領域の主要な術式の詳細な手術件数も明らかとなった。なおNCDでは、約2500からなる詳細なNCD術式より実施された手術の術式を選択しているため、手術件数を解釈する場合には、臨床的により解釈しやすい手術分類を行う必要がある。対象となる施設診療科は、2011年手術症例登録施設診療科から無作為に抽出し、施設訪問による手術台帳や診療録等とNCDデータの照合を照合した。またデータの質検証においては、手術台帳との照合による登録悉皆性の検討では、手術台帳とNCDデータの両方で照合可能であった2,343件のうち、2,330件が正しく登録されていた。また個々の入力項目に対する入力データの正確性の検討では、453件について診療録とNCDデータが一致するかを検証した。その結果、患者性別・退院日転帰・退院時転帰の一致割合は99%以上で、術者・生年月日・入院日においても95%以上の高い一致割合であることが明らかとなった。ただし、照合対象となった施設診療科数は、2011年のNCD手術症例登録施設に対して非常に限られているため、結果の解釈および今後のデータの質検証の方法については、さらなる検討が必要である。
結論
本研究により、NCDにおける2011年手術症例について、外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布、手術症例数、消化器・腹部内臓、乳腺、呼吸器、心臓・大血管、末梢血管、頭頸部・体表・内分泌外科、小児の7つの領域別の手術症例数および各領域の主な手術に対する手術件数が明らかとなった。
施設訪問によるデータの質検証については、対象施設が限定されており、対象施設数も少ないことから、結果の解釈には注意が必要である。一方で、限られた施設ではあるが、手術台帳との照合により、NCDの多くは適切に症例が登録されていること、重複登録のケースは少ないことが明らかとなった。また、登録漏れや重複登録が発生する具体的な傾向についても、その事例を抽出することができた。個々の入力項目における入力データの正確性については、診療録とNCDデータを比較した結果、高い一致割合であることが明らかになった。
今後もデータの質検証を行い、データの信頼性の担保および症例登録によるデータの蓄積を行うとともに、領域別の手術件数、手術総数から検討した専門医制度の在り方(基本領域・専門領域)などの基礎情報をはじめ、専門医育成施設の在り方の検討、外科診療科の繁忙性、地域格差について実態を明らかにし、臨床現場に対しては、NCDデータを活用したフィードバックを行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232012Z