ジストニアの病態と疫学に関する研究

文献情報

文献番号
201231188A
報告書区分
総括
研究課題名
ジストニアの病態と疫学に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)・指定-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
梶 龍兒(徳島大学 病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ジストニアは、海外ではパーキンソン症候群の約4分の1の有病率といわれる決してまれではない病態で、重症化すると著しい日常生活上の障害をきたす重要な病態である。その有病率は、これまでの報告では病院に受診している患者数をベースに人口10万人当たり15人前後と報告され、比較的わが国では少ないと考えられてきた。
近年、慢性の肩こりがジストニアとしての臨床的特徴をもつことが注目され我々は整形外科や麻酔科との共同研究を行ってきた(H19 肩こり研究会)。一般の国民のレベルでもジストニアの認知度が高まるにつれて、その有病率のあらたな切り口による検討が、国民の衛生上必要になってきている。一部のジストニアは職業と関係がある(職業性ジストニア)ことがわかっており、また、早期診断や予防法などについても、検討が必要である。
本研究ではとくに、整形外科・麻酔科の協力を得て、肩こりを主訴とする患者の中で、どの程度頸部ジストニアとしての臨床的な特徴を有する患者がいるかを調査し、また音楽家のなかで起こる職業性ジストニア(音楽家のジストニア)がどの程度の頻度であるかをアンケートにより実態調査することを目的とする。
「肩こり」に関しては外国語に同義語は見当たらない。したがって我が国での研究は、我が国での特有の病態を反映する可能性があり、結果は国際的にも発信できる可能性がある。また国際的に音楽家のジストニアの実態調査はまだ少ない。
研究方法
肩こり研究会に属する整形外科。麻酔科の医師3名に協力をあおぎ、外来にて1年以上の持続の慢性的な肩こり患者でアンケート調査を行う。以下の点に注意する。
1.頭部の左右の回転運動においていずれかの方向に制限があるか?(運動障害)
2.朝方に症状が軽快するか?手をあてると肩こりが軽減するか?(感覚トリック)
3.朝起床時に症状が軽減するか?(morning benefit)
京都芸術大学・または京都医療センター音楽療法室を通じて音楽科の卒業生に、上記の運動制限、感覚トリック、morning benefitをしめす病態があるかをアンケート調査する。
歯科にて顎関節症が疑われる患者で運動制限、感覚トリック、morning benefitをしめす病態があるかをアンケート調査する。
以上のアンケート調査・集計・研究会を開催する。
(倫理面への配慮)
課題遂行に当たっては、必要に応じて徳島大学、または研究者の所属機関に於いて、倫理委員会による審査を受審し承認を得ている。
結果と考察
1) アンケート調査
肩こり研究会及び、京都医療センター音楽療法室にてアンケート調査を実施中である。現在、数十例の調査を終えている。今後、引き続き調査登録、データ解析を行う。
2) 研究会
平成25年1月26日に学士会館にて、ジストニアに関する研究会を開催した。肩こりと頸部ジストニアの疫学調査について、歌手の痙攣性発生障害、演奏が困難な音楽家に対するアンケートなどを含め、厚生労働省精神・神経疾患研究委託事業「ジストニアの疫学・病態・治療に関する研究」(長谷川一子班長)、厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「ジストニアの治療法の確立・治療指針策定のための調査研究」(研究代表者 梶)から引き続くジストニアの臨床、研究に関する情報の交換を行った。
結論
ジストニアに関する疫学調査、特に、肩こりとジストニアの関連や、音楽家のジストニアに関するデータを収集している。肩こりの病態解明、予防法の研究につなげていく必要があり、また、この疾患により困難にぶつかっている人々の一助となるようさらに努力していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201231188C

成果

専門的・学術的観点からの成果
音楽大学の生徒・職員に対する1300通のアンケート調査を行い、「演奏しにくくなった」経験について38例(2.9%)で回答を得られた。音楽家のなかで起こる職業性ジストニア(音楽家のジストニア)がどの程度の頻度であるか明らかにできる可能性がある。
臨床的観点からの成果
慢性の肩こりを主訴として病院を受診した人31例のアンケート調査では、ジストニアの臨床特徴を2項目有する人は11例、3項目を有する人は2例であった。ジストニアの加療により介入できるものが無いか検討を続けている。また研究会にてジストニアについて疫学調査や遺伝子検査の成果発表、難治性症例の検討など含めた情報交換を行った。
ガイドライン等の開発
数年間続くジストニア班の成果として、ジストニアのすべて―最新の治療指針を2013年5月24日出版した。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
2012年4月10日、朝日放送「たけしの健康エンターテイメント みんなの家庭の医学」にて、肩こりの原因について、研究代表者梶龍兒が言及した。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hideyuki Matsumoto, Yasuo Terao, Yoshikazu Ugawa.
Ocular Paradoxical movement and severity of Parkinson's disease
Brain , 136 (10)  (2013)
10.1093/brain/awt124
原著論文2
Toshiaki Furubayashi, Hitoshi Mochizuki, Yasuo Terao, et al.
Cortical hemoglobin concentration changes underneath the coil after single-pulse transcranial magnetic stimulation: a near-infrared spectroscopy study
Journal of Neurophysiology , 109 (6) , 1626-1637  (2013)
10.1152/jn.00980.2011
原著論文3
Ryosuke Miyamoto, Hidetaka Koizumi, Hiroyuki Morino, et al.
DYT6 in Japan-genetic screening and clinical characteristics of the patients
Movement Disorders , 29 (2) , 278-280  (2014)
10.1002/mds.25745
原著論文4
Ryosuke Miyamoto, Hiroyuki Morino, Akio Yoshizawa, et al.
Exome sequencing reveals a novel MRE11 mutation in a patient with progressive myoclonic ataxia
Journal of the Neurological Sciences , 337 (1-2) , 219-223  (2013)
10.1016/j.jns.2013.11.032

公開日・更新日

公開日
2019-10-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231188Z