臨床症状を伴う前頭縫合早期癒合症の病因・病態と診断・治療に関する研究

文献情報

文献番号
201231187A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床症状を伴う前頭縫合早期癒合症の病因・病態と診断・治療に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-指定-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮嶋 雅一(順天堂大学 医学部脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 川上 浩司(京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学)
  • 樋之津 史郎(京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学)
  • 下地 武義(順天堂大学 医学部脳神経外科)
  • 柿谷 正期(立正大学 心理学部)
  • 富永 大介(琉球大学 教育学部)
  • 下地 一彰(順天堂大学 医学部脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
前頭縫合早期縫合でおこる軽度三角頭蓋は、形態異常による臨床症状は発現しないと考えられていた。しかし、我々は頭蓋形成術を行った後、患児らの臨床症状に改善を認めた事実を経験している。しかし、これまでの評価は、客観的で国際的に通用する評価法を用いた第3者による評価では無かった。そこで今回、軽度三角頭蓋症例に対する頭蓋形成術の有効性を多施設による統一プロトコールを用いた臨床研究として行い、術前から臨床心理士による評価を導入して客観的に手術の有効性を評価することを目的とした。
研究方法
対象患児は、頭部CTで確定した患児で年齢は2歳から5歳の28例(男;26、女;3)である。検査法は新版K式発達検査、国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査、日本語版CBCL (Child Behavior Checklist)、広汎性発達障害日本自閉症協会評定度(Pervasive Developmental Disorders Autism Society Japan Rating Scale: PARS)母親の養育態度(by ベネッセ)を用いた。術前、術後3ヶ月および術後6ヶ月検査時期とし、それを独立変数とし、各時期に得られた平均得点を従属変数とし、1要因3水準被験者内計画の分散分析を行った。主効果が認められた指標に関しては、Tukey-Kramer法による多重比較検定を行った。
結果と考察
新版K式発達検査;姿勢・運動、認知・適応、言語・社会および、全てを合わせた全領域の発達指数の平均指数を求めた。姿勢・運動では分散分析を行った結果、主効果を認められなかったが、しかし、その他の指数は主効果が認められた。認知・適応で(F(2, 54) =0.447, p<.01),言語・社会で (F(2, 54) =12.964, p<.01), 全領域で (F(2, 54) =12.788, p<.01で多重比較検定の結果、術前よりも術後3ヶ月と術後6ヶ月の方が有意に指数が高かった。
 言語発達は,国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査の質問紙の中の,言語・コ
ミュニケーション・遊びについての質問紙使用し,ことばの表出とことばの理解
について評価した。各指標において分散分析を行った結果,ことばの表出で主効果が認められた(F(2,46)=8.650,p<.01)。多重比較検定の結果,術前よりも術後3ヵ月および術後6ヵ月のほうが有意に高かった。このことから,術前よりも術後3ヵ月や術後6ヵ月でことばの表出が増加したことが示された。
 こどもの情緒と行動を日本語版CBCLにて評価した。日本語版CBCLは、2-3歳用(CBCL/2-3)と4-18歳用(CBCL/4-18)に分けられている。対象の2歳と3歳の患児にはCBCL/2-3を4歳の患児には日本語版CBCL/4-18を使用した。行動の問題の変化を検討するための分析には,T得点を利用した。我々の症例の対象年齢が2-4歳のため、CBCL/2-3とCBCL/4-18において、類似している4下位尺度、引きこもり尺度,攻撃尺度,不安神経質尺度,注意集中尺度は、全症例を対象にし、他の4下位尺度2-3歳で反抗尺度,依存分離尺度,発達尺度,睡眠・食事尺度、4-18歳で身体的訴え尺度、社会性の問題尺度,思考の問題尺度、非行的行動尺度はそれぞれで分析した。各下位尺度の分散分析の結果は、ひきこもり尺度でF(2, 54)=10.506, p<.01 攻撃尺度でF(2, 54)=15.875, p<.01 睡眠・食事尺度でF(2, 28)=6.368, p<.01 発達尺度でF(2, 28)=7.137, p<.01 反抗尺度でF(2, 28) =11.870, p<.01 注意集中尺度でF(2, 54) =4.228, p<.05 不安神経質尺度で F(2, 54) =4.652, p<.05 これらの尺度は多重比較検定の結果、術前より術後3ヶ月、術後6ヶ月において有意にT得点が低くなっていた。その他の尺度、依存分離、思考の問題、社会性の問題、非行的行動、身体的訴えなどの尺度ではT得点は下がる傾向はあるが、有意とまではなっていない。
 広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度(PARS);分散分析の結果 F(2, 52)=33.908, p<.01で、多重比較検定の結果で術後有意に得点の低下が見られた。
 母親の養育態度;分散分析の結果、養育態度におけるポジティブ得点はF(2,44)=8.650, p<.01 で、ネガティブ得点はF(2,44)=4.855 p<.01であった。これらの多重比較検定の結果として、前者では術後有意に得点を上げ、後者では下げている。
結論
各評価法いずれにおいても術後改善の傾向を示した。このことから手術の有効性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231187Z