遺伝性ポルフィリン症:新病型の診断法と新しい診療ガイドラインの確立

文献情報

文献番号
201231185A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性ポルフィリン症:新病型の診断法と新しい診療ガイドラインの確立
課題番号
H24-難治等(難)-指定-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中野 創(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 川田 暁(近畿大学 医学部)
  • 近藤 雅雄(京都都市大学 生命科学)
  • 前田 直人(山陰労災病院 第二内科)
  • 上出 良一(東京慈恵会医科大学 附属第三病院)
  • 大門 真(弘前大学 大学院医学研究科 )
  • 竹谷 茂(京都工芸繊維大学 工芸科学研究科)
  • 古山 和道(東北大学 医学部 分子生物学分野)
  • 堀江 裕(済生会江津総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.X連鎖優性プロトポルフィリン症(Xプ症)の診断法確立.2.要観察症例のモニタリングによる致死的合併症回避.3.遺伝子診断とタンパク質機能(酵素活性)診断との融合による新規重症度推定法の開発.4.新規症例リクルートによる臨床データライブラリーの構築.5.新病型を盛り込んだ最新診療ガイドラインの早期公開.これら,未だ取り組まれてない試みを遂行することによって,患者の生活を支援し,生命を守り,そして全ての有益な知見を国民社会全体に還元したい.
研究方法
1. Xプ症の原因遺伝子であるALAS2の遺伝子診断法を確立.
2. 要観察症例のモニタリングによる致死的合併症回避.
3. 遺伝子診断とタンパク質機能(酵素活性)診断との融合による新規の重症度推定法の開発.
4. 遺伝性ポルフィリン症の遺伝子診断の継続.
本研究では,健常人や患者のサンプルを用いるため,ヘルシンキ宣言を順守し,被検者の人権と利益の保護に配慮する.
結果と考察
1.Xプ症の診断法確立. Xプ症の遺伝子配列決定法ならびにMLPA法によるC末端側エクソンのコピー数定量法を確立し,疑わしい症例22例につき解析を行ったが,変異は見出されなかった. ALAS-Eタンパク質のC末端20~33アミノ酸の欠失は機能獲得型変異であることを示した.
2.要観察症例のモニタリングによる致的合併症回避.光線過敏に対し臨床的に有効とみなせる光線防御効果を有する新規サンスクリーン剤を開発した.ポルフィリン症例の相談窓口を開設して全国からの相談に応じ,さらに講演会でポルフィリン症が難病であることの普及に努めるとともにガイドブックの作製を行い関係機関に配布した.
3.遺伝子診断とタンパク質機能(酵素活性)診断との融合による新規の重症度推定法の開発.赤血球遊離プロトポルフィリン(FEP)が1000μg/dl RBC以上を示した4例の鉄芽球性貧血患者ではEPPと同様の皮膚の光線過敏症をみた. FEPの変化はFerritin等との関連性が大きいことが示唆され,重症度の推定に意義があると考えられた.薬剤輸送ポンプABCG2はポルフィリン輸送に関与するが,機能低下型ABCG2と肝障害の関係は認められなかった.
4.遺伝性ポルフィリン症の遺伝子診断の継続. 10家系の骨プ症症例を新規収集し, 7家系でFECH遺伝子に変異を同定した.そのうち3症例で新規変異を認めた. 2)カンボジア人の異型ポルフィリン症の遺伝子診断を行いホモのミスセンス変異が同定された.3)孤発性の晩発性皮膚ポルフィリン症4症例について原因遺伝子であるウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素遺伝子につき変異解析を行ったが変異は同定されなかった.過去の 23家系,25症例の骨プ症症例を解析し,赤血球プロトポルフィリン値は108~8,578μg/dlRBCで,ほとんどが2,000μg/dlRBC以下であり,3名に肝障害が見られたことを明らかにした.16名についてFECH遺伝子変異と臨床症状との関係を調べたが,変異の種類と臨床症状に相関は認めなかった.急性間欠性ポルフィリン症(急間ポ症)の責任酵素であるハイドロキシメチルビレンシンターゼ(HMBS),および遺コ症の責任酵素であるコプロポルフィリノゲン酸化酵素の遺伝子解析を行い、急間ポ症1家系1例および遺コ症1家系1例において新規の遺伝子変異を明らかにした.急性ポルフィリン症における遺伝子解析は家系内保因者の早期発見や将来の発症予防にも有効であった.急間ポ症家系ではホットスポットの解析をより重点的に行うことが推奨された.
結論
遺伝性ポルフィリン症は臨床診断が極めて難しく,確定診断のためには遺伝子診断が必須であることが明らかになった.現在明らかになっている9病型の遺伝子診断法は確立したと言ってよいが,骨プ症,AIPにおいてもそれぞれの原因遺伝子に変異が認められない症例が存在するため,他の遺伝子が原因である可能性があり,今後の研究課題である.また,遺伝性がほとんど認められないとされている晩発性皮膚ポルフィリン症についても,積極的に遺伝子診断を行うべきと考えられる.ポルフィリン症の作用波長に有効なサンスクリーン剤の開発が進んでおり,光線過敏ならびにこれによって引き起こされる肝不全などの重症合併症の予防効果に期待ができる.重症度を推定するための生化学的あるいは分子生物学的方法も予後改善のためには絶対に必要なものであるが,今回研究が緒に着いたばかりであり,さらに時間をかけて検討しなければならないと言える.一般医家に対する啓蒙もなお不十分であり,今回作成したポルフィリン症例のガイドブックに加え,インターネット等を利用するなど時代に即した普及法も展開する必要があると思われた.

公開日・更新日

公開日
2013-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231185Z