フォン・ヒッペル・リンドウ病の診療指針に基づく診断治療体制確立の研究

文献情報

文献番号
201231183A
報告書区分
総括
研究課題名
フォン・ヒッペル・リンドウ病の診療指針に基づく診断治療体制確立の研究
課題番号
H24-難治等(難)-指定-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
執印 太郎(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門(泌尿器科学))
研究分担者(所属機関)
  • 篠原 信雄(北海道大学大学院医学研究科腎泌尿器外科)
  • 矢尾 正祐(横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器分子遺伝学)
  • 菅野 洋(横浜市立大学医学部脳神経外科)
  • 宝金 清博(北海道大学大学院医学研究科脳神経外科学分野)
  • 西川 亮(埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科)
  • 夏目 敦至(名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科)
  • 倉津 純一(熊本大学大学院生命科学研究部脳神経外科学)
  • 米谷 新(埼玉医科大学医学部眼科)
  • 福島 敦樹(高知大学教育研究部医療学系眼科学)
  • 石田 晋(北海道大学大学院医学研究科眼科学分野)
  • 西森 功(西森医院)
  • 伊藤 鉄英(九州大学大学院病態制御内科学)
  • 田村 和朗(近畿大学理工学部生命科学科遺伝医学)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学医学部小児科学)
  • 齊藤 延人(東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻・脳神経外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
VHL 病は希少優性遺伝性難治性疾患で過去に国内で大規模に調査された事はない。多発再発性の腫瘍に対して現在のところ、根本的な治療法はない。すなわち、一般的な診断治療・経過観察が困難な疾患である。平成24 年度の本研究では小児科領域の診断と遺伝性に配慮して、小児内分泌専門医、遺伝専門医を班員に加えた。さらにVHL 病患者会と連携協力して、患者登録や、ガイドライン実践しVHL 病患者の早期診断と治療、予後改善とQOL の向上を図り、VHL 病患者が早期対処により病気と共存する事を目的として研究を遂行した。
研究方法
1.多領域専門医の連携による診断治療とその質の向上のための実践的な活動
VHL 病は中枢神経系、網膜、腎臓、副腎、膵臓に多彩な病態を示し、我々、専門医でも単科での判断では治療に苦慮する症例が多く見られる。病気に関する質問として患者会、医師、遺伝相談医などに窓口を広げ、診断、治療、遺伝など具体的な相談を受けて内容を匿名化し、可能な内容についてはWeb班会議で相談内容を定期的に提示、検討してその解決法を模索した。この際、同時にガイドラインを利用してガイドラインの有効性をさらに検証した。
2.VHL 病の各病態について重症度分類の作成と重症度判定システムの構築
VHL 病の中枢神経系(脳、脊髄)、網膜、腎臓、副腎、膵臓の各病態について重症度分類の作成を行った。他の難病の重症度分類を参考としてVHL病の各疾患の専門医により重症度分類を作成し、検討した。それに基づいて総合的な重症度判定システムを作成した。
3.VHL 病患者会を対象とした重症度判定システムの試験的な運用
高知大学医学部倫理委員会にて患者会対象の疫学的調査の承認を得てVHL 病患者会のメンバーに対して(40 家系総数61 名)重症度の調査を試行した。
結果と考察
Web班会議システムにより年間3 回の症例検討会を行った。そこで8 症例の提示を行い、班員間で診断治療と経過観察の方法、遺伝子診断について、また患者さん個々の治療法の問題点について検討し、その結果を症例提示者に回答した。
また、VHL 病の中枢神経系血管芽腫、網膜血管腫、腎癌、傍神経節腫瘍を含む副腎褐色細胞腫、膵神経内分泌腫瘍、膵嚢胞の各病態について重症度分類を作成した。
我々は生活の質の障害という観点で個々の臓器機能障害を5 段階(0~4)の障害度とし、臓器の障害による生活の質の低下では障害なしを0、最も軽度の障害を1 とし、最も重度の障害を4、すなわち最重症とし、その間に障害度2 と3 を設けた。また、個々の臓器障害では障害度は3 が2つ以上の臓器にまたがってある場合も障害度4 と同等に最重症と判定した。重症度4 の患者の場合は診断や治療を補助することを念頭に置いた。重症度の内容は患者さん側からも比較的簡単に理解し、自己評価できるように内容をなるべく平易なものとした。その重症度分類を用いて、高知大学医学部倫理委員会許可を得てVHL 病患者の46 名に対して調査結果を得た。その結果、重症度3,4 を各病態における重症度の高い者と考えると、重症度3,4を多く示す患者の多い順は中枢神経系血管芽腫=網膜血管腫>腎癌>褐色細胞腫=膵神経内分泌腫瘍>膵嚢胞となった。中枢神経系血管芽腫に由来する症状を持つ患者では重症度3は6 名(13%)、重症度4は7 名(16%)で最も重症患者の割合が多かった。次いで重症患者が多い疾患は網膜血管腫であり、重症度3は8 名(17%)、重症度4は6 名(13%)であった。次いで腎癌では重症度3は4 名(9%)、重症度4は4 名(9%)、膵神経内分泌腫瘍では重症度3は1 名(2%)、重症度4は4 名(9%)、褐色細胞腫では重症度3は2 名(4%)、重症度4は3 名(7%)、膵嚢胞では重症度3は1 名(2%)、重症度4は3 名(6%)であった。
最重症と判定される患者は全体で21 名(46%)という非常に重症度が高い結果となった。これは試験的な調査であり、正確な判定を目指して次年度も継続して調査を行っていきたい。
結論
本年度は小児内分泌専門医、遺伝専門医を班員に加え、VHL 病患者会と協力して、登録、ガイドライン実践、VHL 病患者の早期診断と治療、予後改善とQOL の向上を目的として研究を遂行した。ガイドラインを利用した症例の診断治療カンファレンスを3 回開催した。またVHL病の主な疾患に対してQOL を基にした5 段階の重症度分類と重症度判定システムを構築した。今後、VHL 病患者の早期診断と治療、予後改善とQOL の向上と、重症度判定システムの改善を図って、VHL 病患者の診断治療に貢献することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231183Z