多臓器型ランゲルハンス細胞組織球症の啓発と標準治療の確立

文献情報

文献番号
201231177A
報告書区分
総括
研究課題名
多臓器型ランゲルハンス細胞組織球症の啓発と標準治療の確立
課題番号
H24-難治等(難)-一般-076
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森本 哲(自治医科大学 医学部とちぎ子ども医療センター(小児科))
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療研究センター 臨床研究センター)
  • 今村 俊彦(京都府立医科大学 小児発達医学)
  • 塩田 曜子(国立成育医療研究センター 病院内科系専門診療部)
  • 工藤 寿子(静岡こども病院 血液腫瘍科)
  • 東條 有伸(東京大学 医科学研究所血液腫瘍内科)
  • 齋藤 明子(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多臓器型ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は主として乳児期に発症する病態不明の希少疾患である。皮膚や骨、リンパ節などに病変が出現し化学療法が必要であるが、認知度は低いためしばしば診断が遅れ、標準治療はない。約10%が致死的で、約30%は頻回に再燃し長期の経過をたどり、尿崩症や中枢神経変性症などの不可逆的病変を残す。また、成人の多臓器型LCHは本邦では全く認知されておらず、患者は医療難民化している。このような多臓器型LCHの啓発と予後改善を目的とする。
研究方法
1)社会への啓発。a)LCH患者会と共に全国患者会の開催。b)日本LCHH研究会(JLSG)と共に学術集会の開催。c)日本小児血液・がん学会学術集会で同学会の組織球委員会と共にワークショップを開催。d)JLSGのホームページによる広報。e)教科書・総説論文の執筆、特異な症例の報告。2)小児ランゲルハンス細胞組織球症のリスク別臨床研究(LCH-12)の遂行。a)JPLSG参加施設の20歳未満の新規に診断された全LCH症例の登録。b)診断ガイドラインに基づく登録例の中央病理診断、残余検体(生検組織および血漿)の国立成育医療研究センターの検体保存センターでの保管。c)多臓器型と多発骨型に対する臨床試験(UMINの臨床試験登録ID:000008067)の開始(登録期間 4年、追跡期間は登録終了後3年。プライマリーエンドポイント 病型別の無イベント生存期間・率、目標症例数 130例(多臓器型85例、多発骨型45例))。d)臨床試験対象外の病型に対する治療を規定しない前向き観察研究の開始(登録期間 4年間、追跡期間 登録終了後3年間)。e)これらのデータのJPLSGデータセンター(NPO法人臨床研究支援機構、OSCR)での管理。3)成人多臓器型LCHの治療開発。JLSG-02研究に登録された成人LCHの治療結果を基づき成人の多臓器型LCHに対する全国多施設共同臨床研究計画書の作成。4)治療開発に向けた病態解明。a)病勢や再燃、中枢神経変性発症に関わるサイトカイン/ケモカインを中心とした液性因子の網羅的解析。b)LCH細胞の遺伝子変異解析。5)長期フォローアップ調査。長期フォローアップガイドラインに基づき1996~2009年にJLSG-96/02研究に登録された多病変型LCHのコホートの長期フォローアップ調査。
結果と考察
1)社会への啓発が進んだ。a)全国患者会(H25年3月17日、東京)開催し医療相談・疾患解説を行った。b)学術集会(H25年3月17日、東京)で開催し症例検討・講演を行った。c)日本小児血液・がん学会学術集会(H24年12月30日、横浜)でワークショップを開催し、再発LCHの治療経過、JLSG-02臨床試験の成績について発表した。d)JLSGのホームページで文献紹介/疾患解説/ガイドライン掲載やセカンドオピニオン案内を行った。e)総説論文の発表、特異な症例の報告を行った。2)LCH-12臨床研究が遂行された。a)LCH-12臨床研究に23例が登録された。b)このうち、14例の検体が中央診断施設(成育医療研究センター)に送付され、診断ガイドラインに基づき13例の中央診断が行われた。c)LCH-12臨床試験の登録を開始し17例が登録された。d)LCH-12観察研究の登録を開始し6例が登録された。e)これらのデータをNPO法人臨床研究支援機構(OSCR)で管理した。3)成人多臓器型LCHの治療開発の基盤が整った。JLSG-02研究に登録された成人LCHの治療結果を論文発表し、これを基づき成人の多臓器型LCHに対する全国多施設共同臨床研究計画書のコンセプトを作成した。4)治療開発に向けた病態解明が進んだ。LCH-12に登録された16例の患者の血漿検体を収集した。多臓器型LCHで血清osteopontinが高値であること、IL-17受容体発現および血清中IL-17濃度が多臓器型で高値であることを見出した。5)不可逆的病変の経年的増加が明らかになった。1996~2009年にJLSG-96/02研究に登録された320例の多病変型LCHのコホートの年次長期フォローアップ調査を行った。調査の回収率は97%、患者のフォローアップ率(2年以内に来院あり)は85%、観察期間の中央値は8年であった。尿崩症を15%(多臓器型21%、単一臓器多発型3%)、中枢神経変性症を5%(多臓器型6%、単一臓器多発型4%)に認め、これらの発症は観察期間が延びるにつれて増加していた。
結論
1)社会への啓発が進み、2)LCH-12臨床研究が遂行され、3)成人多臓器型LCHの治療開発の基盤が整い、4)治療開発に向けた病態解明が進み、5)不可逆的病変の経年的増加が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2013-04-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231177Z