Isaacs症候群の診断、疫学および病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
201231175A
報告書区分
総括
研究課題名
Isaacs症候群の診断、疫学および病態解明に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-074
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 修(鹿児島大学 医学部・歯学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Isaacs症候群は、筋けいれん、発汗過多、四肢の疼痛など多彩な臨床徴候を呈する疾患として提唱されてきた。電位依存性カリウムチャネルの機能異常による末梢神経の過剰興奮の関与が明らかになり、抗VGKC複合体抗体のスクリーニングが用いられているが、陽性率は30%に満たない。また症状が多彩であるために社会的認知度が十分とは言えない。実態調査により診断基準を完成させ、関連学会でのコンセンサスを得た上で疫学調査による詳細な臨床像解析を行う。標的抗原に関する定量的解析を行い、臨床像との関連性を明らかにし、病態解明を行う。
研究方法
対象は、Isaacs症候群およびその類縁疾患。これまでの抗VGKC抗体検査の依頼例の解析や実態調査(患者会参加を含む)を行い、病像の広がりを確認する。そのデータを元にして、暫定的に作成した診断基準を作成する。本研究は、鹿児島大学の倫理規定を遵守して行った。
結果と考察
H21年以降の当科にスクリーニング検査依頼があった1085検体中、Isaacs症例検体は185で、うち62検体(33.5%)のみが抗体陽性であった。また、患者会に参加し、患者会参加者に対して実態調査を行った。抗VGKC複合体抗体検査依頼例の臨床像解析を行い、暫定診断基準を作成した。主要症状・所見に①睡眠時も持続する四肢・躯幹の持続性筋けいれんまたは筋硬直(必須事項) 、②myokymic discharge, neuromyotonic dischargeなど筋電図で末梢神経の過剰興奮を示す所見、③VGKC-Ab(抗Kv抗体、抗Caspr2抗体、抗LGI1抗体など)が陽性、④ステロイド療法やその他の免疫療法、血漿交換などで症状の軽減が認められる、の4項目を設定した。支持症状・所見として①発汗過多、②四肢の痛み・異常感覚、③胸腺腫の存在、④皮膚色調の変化、⑤自己抗体の存在(抗AChR抗体、抗核抗体、など)、の5項目を選択した。主要項目の4つすべてを満たすものをdefinite例とし、主要項目①と①以外の1~2項目を満たすものをprobable例、主要項目①と支持項目のいずれか一つを満たす例をpossible例とする。免疫性神経疾患調査研究班や神経免疫学会などでコンセンサスを得るべく、シンポジウム開催について協議を開始した。既知の分子については、定量Cell-Based ELISAにて症例毎の量比を検討した。多くの症例で複数の自己抗体を有することがあきらかになった。辺縁系脳炎群では、LGI1抗体が有意に高い傾向にあるが、Isaacs症候群例では、一定の傾向は得られなかった。
候補遺伝子を一つずつCBAで検討するのだけではなく、一例ずつことなる複数の抗原についてCell-Based ELISAにて網羅的に解析した。
結論
今回の検討では、同一の症例が、二つ以上の自己抗体を有する症例が散見された。一自己抗体→一疾患という今までの単純なパラダイムではなく、症例毎に、自己抗体の組み合わせやその量比による症状に差異が認められた。
今回、作成した暫定診断基準を元にIsaacs症候群およびその類縁疾患の一次調査に取り組む。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231175Z