先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の有効性・安全性に関する研究

文献情報

文献番号
201231171A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の有効性・安全性に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-070
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
依藤 亨(大阪市立総合医療センター 小児代謝・内分泌内科)
研究分担者(所属機関)
  • 横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 小児科)
  • 有阪 治(獨協医科大学 小児科)
  • 長谷川行洋(東京都立小児総合医療センター 内分泌・代謝科)
  • 増江道哉(木沢記念病院 小児科)
  • 西堀弘記(木沢記念病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
42,180,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性高インスリン血症は、新生児・乳児期に重篤な低血糖症をきたす稀少難治疾患で、適切に対応しないと高頻度に重篤な神経学的後遺症を残す。現時点ではジアゾキサイド内服のみが保険適用で、これらの治療に反応不良な場合は膵亜全摘が行われてきたが、術後は大部分の症例に医原性のインスリン依存性糖尿病を発症した。ソマトスタチンアナログであるオクトレオチドは本症に対しての血糖上昇効果が報告されており、長期使用で自然治癒も見込まれる。本格的な臨床試験の上で薬事承認を目指すことが望ましいが、国内年間発症が10-20例の超稀少難病で、かつ治療に緊急性を要する新生児・乳児の疾患であるため、従来の枠組みでは本格的な臨床試験は困難であった。本研究では、こうした実態を打開するため、将来の保険適用を目指した臨床試験を計画した。
研究方法
1)先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の有効性・安全性確立のための臨床研究 国内年間発症数10-20人のジアゾキサイド不応性先天性高インスリン血症に対して将来的な保険適用を目指した臨床試験のありかたを検討し、プロトコルを作成した。策定に当たり、過去の疫学的調査を参考にし、分担研究者の会議、臨床試験専門家の助言、新生児医療専門医の助言、医薬品医療機器総合機構の対面助言を受けた。さらに計画は日本小児内分泌学会理事会、評議員会にも諮った。2)本邦における先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド既治療例の臨床経過の検討 臨床研究の一部を先進医療として行うことを計画したため、その前提として本邦における先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の既施行例の臨床経過を担当医を通じて収集した。3)18F-DOPA PET検査による先天性高インスリン血症の膵臓病変局在診断の有用性と限界に関する研究
現時点で、本邦において18F-DOPA PETが唯一可能な施設である木沢記念病院中部療護センターにおいて蓄積したデータを解析し、診断上の有用性と問題点を検討した。4)局所性先天性高インスリン血症の画像診断法の確立 18F-DOPA PETによる画像診断法の精度をより高めるために、[18F]F-を用いた[18F]FDOPA合成法を検討した。市販の原料を用いた同位体交換反応とキラル補助基を用いる反応を比較し、その純度、収率を検討した。5)本邦における先天性高インスリン血症の遺伝疫学研究
本邦における先天性高インスリン血症患児のゲノムDNAからKATPチャネル遺伝子(ABCC8, KCNJ11)の全エクソンをPCR増幅、直接シーケンス法により解析し、変異陽性の場合は両親の検索による変異の親由来を検討した。6)オクトレオチド血中濃度測定技法の研究 オクトレオチド皮下注射を安全に行うため、血中濃度測定の基礎的検討を、種々のEIA測定法を用いて行った。
結果と考察
(1) 医療として行われた症例を集積したレジストリによる観察研究と、先進医療としての前向き介入研究を並行して行い、最終的に双方を合わせて保険承認を目指すことを計画したプロトコルを両研究について作成した。計画には最先端医療としての局所型本症の遺伝子診断・PET診断を組み込み、医療としての最先端レベルを確保した。(2)先進医療化のための前提として、本邦における先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド既治療例を集積し、臨床経過を解析し報告した (Yorifuji et al., Clin Endocrinol 2013;78:891-7)。(3)18F-DOPA PETを実施した28症例を検討した結果、国内では非典型例や膵頭部病変のため手術困難な症例も多く、必ずしも18F-DOPA PET検査した全症例が手術可能というわけではなかった。また欧米人に比較すると診断が困難な症例が多いことが判明した。(4)18F-DOPA PETの合成法として高い収率で合成可能なキラル補助基を用いる標識法を自動合成装置に応用するのが適切であることが判明した。(5)本邦症例ではジアゾキサイド不応性本症の86.2%はKATPチャネル遺伝子異常により、うち81.8%は父由来片アリル変異、すなわち局所性病変の可能性があると考えられた。(6)オクトレオチド血中濃度測定にはPeninsula Laboratories社のオクトレオチド用EIAキットS-134が安定した結果を与える事が明らかになった。(7)先進的医療の普及のために現時点での本症の最新医療情報を患者家族に広く伝えるためのホームページを開設した。
結論
平成24年度の研究を通じて、オクトレチド持続皮下注射療法の先天性高インスリン血症に対する有効性・安全性を確認し、将来の保険適用を目指した臨床研究を開始する準備が整った。

公開日・更新日

公開日
2013-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231171Z