難治性潰瘍を伴う強皮症、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデスに対する低出力体外衝撃波治療法

文献情報

文献番号
201231170A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性潰瘍を伴う強皮症、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデスに対する低出力体外衝撃波治療法
課題番号
H24-難治等(難)-一般-069
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石井 智徳(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 川口 鎮司(東京女子医科大学)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 下川 宏明(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 伊藤 健太(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 石澤 賢一(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 斎藤 真一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 藤井 博司(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 井上 彰(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
28,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SSC、MCTD、SLEにおいては、しばしば重症レイノーに伴い指尖を中心として血管炎によらない虚血性難治性潰瘍が出現する。こうした潰瘍は炎症性病態が中心ではなくステロイドホルモン等の免疫抑制療法の効果は極めて限定的である。現在、血管拡張薬、抗凝固薬、抗血小板薬が使われているが、ほとんどの症例で内服療法の効果は不十分で、プロスタグランジン製剤頻回点滴がなされる。しかし、これら加療でも潰瘍の改善は容易ではなく患者個人のみならず社会的にみても大きな経済的コストがかかる。一方、尿路結石破砕治療に用いられている出力の約10分の1という低出力の衝撃波を体外から照射すると同部位の血管内皮細胞などより血管増殖因子が産生される。欧州では、この作用を利用した難治性潰瘍に対する低出力衝撃波療法の有効性が示され薬事承認されている。今回の研究では平成25年度にSSC、MCTD、SLEにおける虚血性潰瘍病変に対する医師主導治験を行いその効果・安全性を検討する事を目標としている。
研究方法
本研究は平成25年度以降に「難治性潰瘍を伴う強皮症に対する低出力体外衝撃波治療法」の医師主導治験を行うことを目指し以下のことを行った。
A)平成24年度は、平成25年度に医師主導治験が速やかに開始できるよう、1)治験概要書の作成及びPMDA事前相談を受け、2)1)と同時に治験実施体制を構築し、3)プロトコール・患者説明同意文書および同意書・CRF (Case Report Form)作成・治験薬概要書作成をおこなった。
B)膠原病合併皮膚潰瘍の自然歴のレジストリー構築(東北6県 20施設、目標60症例)
疾患における自然歴の解析を目的としたレジストリーを構築し、前方視的に観察を開始した。
C)小規模臨床研究
治験プロトコールの妥当性を検討するための、小規模臨床研究を平成24年度より開始した
結果と考察
平成25年度開始予定の治験準備
①平成25年度開始の医師主導治験体制の確立:
東北大学臨床試験推進センター内、開発部門に、治験調整事務局を設置した。ここを中心に当院臨床治験推進センターデータ部門、実施部門の間で実施体制を調整し、一部モニタリング業務等に関しての外部委託をおこない、本臨床治験に対する実施体制ができあがった。
②東北地区におけるSCC、MCTD、SLEに出現した指尖潰瘍に対して通常加療を行ったときの自然暦を見るためのレジストリーの確立:
来年度から始まる治験を前に、東北地方リウマチ膠原病専門20施設(目標60症例)において、SSC、MCTD、SLEに出現する指尖潰瘍に対して通常の加療を行ったときに認められる自然歴を前方視的にみる観察研究を、当院倫理委員会の承認を得て平成24年12月より開始した。
③治験プロトコール・患者説明同意文書および同意書・CRF (Case Report Form)作成・治験薬概要書作成:
平成25年度より開始となる治験の治験概要を作成し、これをもとにPMDAにおける本治験に関する事前相談を1月、4月に行った。
④SSC、MCTD、SLEに出現する指尖潰瘍に対する衝撃波療法に関する治療プロトコールの妥当性を検討する小規模臨床試験の設定:
実際の治験開始前にプロトコールの妥当性を検討するための臨床試験を来年度治験開始前に行うこととし本年度当院倫理委員会の審査を受け、承認を受けた。本臨床試験は平成25年1月より開始とし対象、選択基準、除外基準、評価項目、プロトコール等は来年度治験と基本的に同一とし、本臨床試験での成果を治験に反映させる事を目的とした。なお、本臨床試験の実施体制も治験と同一とし、データ管理なども治験と同一とし、本臨床試験でえられたデータは来年度の治験のデータの参考として精度の高いデータとすることとした。
また、これらの成果は高度医療申請のためのデータとしても使用する。
結論
難治性潰瘍を伴うSSC、SLE、MCTDは、治療困難かつ社会生活に多大な不利益をきたす難治性病態で、これまでの治療法の有効性は限定的なものであった。低出力衝撃波療法は、これまで対応に苦労したこれら病態に対する治療として、全く現存の加療と違った原理で働くものであり有効性と安全性に優れた治療法である。
平成24年度は、平成25年、26年度に同治療法の保険収載を目指した治験を行うにあたっての準備として、主として潰瘍性病変の自然歴に関する調査研究の開始、治験実施体制の整備、プロトコール確定のための準備としての小規模臨床試験をおこなった。
現時点で平成25年度の治験を行う準備は概ね整っており、今後、PMDAとの治験実施における相談を実施しプロトコールの確定を行い、実際の治験開始は平成25年度10月を目標としている。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231170Z