ミトコンドリア脳筋症MELASの脳卒中様発作に対するタウリン療法の開発

文献情報

文献番号
201231169A
報告書区分
総括
研究課題名
ミトコンドリア脳筋症MELASの脳卒中様発作に対するタウリン療法の開発
課題番号
H24-難治等(難)-一般-068
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
砂田 芳秀(川崎医科大学 医学部神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 雄一(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第2部)
  • 古賀 靖敏(久留米大学 医学部小児科学)
  • 太田 成男(日本医科大学大学院医学研究科 加齢科学)
  • 萩原 宏毅(帝京科学大学 医療科学部)
  • 村上 龍文(川崎医科大学 医学部神経内科学)
  • 大澤 裕(川崎医科大学 医学部神経内科学)
  • 西松 伸一郎(川崎医科大学 分子生物学1)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は希少難病ミトコンドリア脳筋症MELAS患者における脳卒中様発作の再発抑制治療としてタウリン療法の医師主導治験を実施しその有効性と安全性を検証して国内薬事承認を得ることを目的とする。
MELASはミトコンドリアDNAがコードしているtRNALeu(UUR)遺伝子一塩基置換により脳卒中様発作を繰り返しながら進行するため、発作再発を抑制する治療の確立が急務である。われわれは、世界に先駆けMELASの変異tRNALeu(UUR)においてアンチコドンのタウリン修飾が欠損していることを発見し、MELAS基本病態がRNA修飾異常症であると提唱した。MELASモデル培養細胞にタウリンを添加するとミトコンドリア機能が改善し2例のMELAS患者にタウリン経口投与をおこなったところ、反復していた脳卒中様発作が9年以上にわたって完全に抑制された(Rikimaru, et al. Intern Med 51,3351-3357, 2012)。タウリンは既に心不全と高ビリルビン血症に対する保険適応が承認され、これまで重篤な副作用報告はない。厚生労働省ミトコンドリア病研究班のバックアップのもと平成24年度は将来の国際標準治療を見据えたタウリン療法の医師主導治験のプロトコルを整備した。平成25年度は2年間の計画で治験を実施することにより、有効性・安全性を評価し、薬事承認申請に取り組む。
研究方法
平成24年度は、タウリンのMELAS脳卒中様発作に対する再発防止の薬事承認を目指す医師主導治験についてプロトコルを作成し治験インフラを整備した。①治験薬(タウリン)供与(砂田)②治験薬概要書作成(砂田、太田、萩原)③治験患者登録・実施医療機関選定(砂田、後藤、古賀)④治験プロトコル・同意説明文書作成(砂田、大澤、萩原、村上)⑤PMDA本審査・対面助言(砂田)⑥IRB審査・患者登録(砂田)⑦薬効モニタリング準備(太田、萩原、西松)⑧国際特許申請(太田、砂田)
結果と考察
①治験薬(タウリン)供与:企業(大正製薬)と治験薬提供・GCPに従った治験協力・終了後の薬事承認申請について合意。GCP基準で製造するラインの構築。②治験薬概要書作成:非臨床試験成績のPOCデータを収集し治験薬概要書を作成。③治験患者登録・実施医療機関選定:日本神経学会、及び日本小児神経学会の承認を受け、それぞれの専門医認定施設(合計911施設)神経内科、及び小児科診療部長あてにMELAS潜在患者に関するアンケート一次調査を実施:回答率:59.5% (487施設/全911施設)、患者数:297名(小児科69名/神経内科228名)、登録候補患者:過去2年間に2回以上の脳卒中様発作:85名(小児科33名/神経内科52名)、タウリン適応外服用:3名。
④治験プロトコル・同意説明文書作成:プロトコル作成ワーキンググループを立ち上げ治験プロトコル原案を作成しPMDA事前面談を受けた。⑤PMDA本審査:現在、平成25年6月予定のPMDA対面助言の準備中。⑥薬効モニタリング準備:血中タウリン濃度、被験者検体(白血球)を用いたミトコンドリア遺伝子変異率、プライマー延長法によるtRNAleu(UUR)タウリン修飾率、ND6蛋白質量ウエスタンブロット解析について正常対象者検体を用いて試行している。
平成25及び26年度の治験実施に向け当初計画したタイムテーブルに沿って進捗している。
結論
本邦で遺伝子変異が発見され、疾患概念が確立したMELASは特定疾患に認定されている希少難病で、予後を決定する脳卒中様発作の再発予防治療が待望されている。ところが世界的にもMELAS患者の疫学・自然歴については、小規模なコホート研究に限られているのが現状である(Yasuga S, Koga Y, et al. BBA 1820:619-624, 2012)。今回、本研究で明らかとなった本邦のMELASとその脳卒中様発作についての最新疫学調査により、これまでの報告と比較し最大の症例を集積することに成功した。このうち反復する脳卒中様発作患者の占める頻度については、小児科患者が神経内科患者を上回り、小児期発症MELASが成人発症MELASと比較して、より重症と考えられる。本研究は平成24年3月厚生労働省・文部科学省発令の臨床研究・治験活性化5ヶ年計画2012の目的のうち、(i)日本の国民に医療上必要な医薬品・医療機器を迅速に届ける、(ii)日本発のシーズによるイノベーションの進展・実用化に繋げる、(iii)市販後の医薬品・医療機器の組み合わせにより、最適な治療法等を見出すためのエビデンスの構築を進める、のいずれにも合致する。本年度の治験インフラ整備により来年度から2ヶ年で実施する。

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231169Z