家族性LCAT欠損症患者に対する細胞加工医薬品「LCAT遺伝子導入ヒト前脂肪細胞」の早期実用化にむけた非臨床試験

文献情報

文献番号
201231166A
報告書区分
総括
研究課題名
家族性LCAT欠損症患者に対する細胞加工医薬品「LCAT遺伝子導入ヒト前脂肪細胞」の早期実用化にむけた非臨床試験
課題番号
H24-難治等(難)-一般-065
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武城 英明(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 俊(自治医科大学附属病院 糖尿病内科学)
  • 佐藤 兼重(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 花岡 英紀(千葉大学 医学部附属病院)
  • 黒田 正幸(千葉大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
54,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性遺伝病は根本的治療法が存在しないあるいは既存療法の種々の問題点から欠損蛋白質の持続的補充を可能とする新規治療法の実用化が医療行政上の喫緊の課題である。申請者らは、この現状を打破することを目的に、患者脂肪組織由来の前脂肪細胞に治療目的遺伝子を導入しこれを自家移植する遺伝子導入細胞医薬品の薬事承認を目指す。本研究は根本的治療法のない難治性血清蛋白欠損症である家族性LCAT欠損症に持続的蛋白補充に基づく細胞医薬品の患者への早期提供を目指し、遺伝子治療技術の有効性と安全性にかかわる臨床研究、臨床試験(治験)を経て、国内での医薬品製造・販売承認(薬事承認)へと円滑に繋げるための非臨床試験成績を得ることを目的とする。
研究方法
これまでの試験成績概要を踏まえた、開発計画ならびに問題点についてPMDAから助言を受け、非臨床および前期第II相試験までの開発計画を確定する。遺伝子治療臨床研究の審議過程において獲得した非臨床研究成績に基づき、治験開始に向け必要となる非臨床試験(薬効薬理試験、安全性・体内動態試験、毒性試験)について、その予備検討を実施し、その評価を行う。並行して対象疾患である家族性LCAT欠損症の患者調査に向けたプロトコール作成を行う。
結果と考察
本研究の進捗に影響を与えると考えられる遺伝子治療臨床研究作業委員会での審議をH25.12.5に受けた。その後、申請書類等の修正・改訂を行い、H25.5.13に厚生労働大臣より遺伝子治療臨床研究実施承認を受けた。現在遺伝子治療臨床研究への移行時期にある。これまで同作業委員会で審議を受けた議事内容を精査し、治験・薬事承認に向け、PMDAとの事前相談を申し込んだ。H25.5.10に事前相談を受け、本格相談に向けた資料作成を進めている。
家族性LCAT欠損症患者の実態把握調査について、プロトコール作成と登録病院の選定を行った。H25年に動脈硬化学会の了承の下、「原発性高脂血症に関する調査研究班」の患者実態調査の対象疾患の一つとして患者調査を開始する予定である。家族性LCAT欠損症患者症例について治療法適応検討を行い、検討した症例はいずれもin vitroで前脂肪細胞が分泌するrLCATに反応した。患者脂質プロファイルとrLCATに対する反応性解析から、本疾患の合併症である腎機能障害を惹起する異常リポ蛋白を同定した。
LCAT欠損マウスにおいて免疫抑制剤投与下、HDLコレステロールの出現と56日間のLCAT持続分泌が可能となった。LCAT欠損マウス血中に分泌されたヒト型LCAT(hLCAT)は、ヒトApoAI(hApoAI)を添加することにより2~3倍程度の活性上昇を認めた。これらの成績を基に鋭敏に有効性を検出する目的で、LCAT欠損(LCAT-KO)マウスとhApoAIトランスジェニック(hApoAI-Tg)マウスの交配による有効性評価モデル(LCAT-KO/hApoAI-Tgマウス)の作出を進めている。
上記移植マウスの移植部位を採取し、マウスにおいて皮下移植された細胞のクローナリティー解析を実施したところ、移植後の安全性に問題を生じるようなクローナル増殖は認めなかった。引き続きヒト前脂肪細胞におけるクローナリティー解析を安全性・体内動態試験の予備試験として進める予定である。
NudeマウスへのLCAT遺伝子導入ヒト前脂肪細胞移植を行ったところ、移植2週間で血中LCATの検出ができなくなった。安全性試験に向け、他の免疫不全マウス(SCIDマウス、NOGマウス)で検討中である。
結論
これまでの成果から、家族性LCAT欠損症の患者調査に向けた遺伝子解析含めた特殊脂質解析技術を確立することができた。PMDA事前相談から①細胞の規格・品質・製造法、②非臨床試験実施内容、の2回に分けて戦略相談を受けることとなった。薬事戦略本格相談は今後の課題であり、可及的速やかに進める予定である。また薬効評価モデルとしてApoAI-Tg/LCAT-KOマウスの導入を進めているが、薬効薬理試験に用いる匹数の確保には時間を要することから、H25年度途中で得られた少数個体による予備検討を実施し、当該動物の有用性を事前評価することを考慮している。移植細胞のプレコンディショニング検討、出荷時に混合するスキャフォールド製剤を用いた有効性の向上を目指した製剤化検討はH25年度も継続し、今後実施する非臨床試験に反映させ、「LCAT遺伝子導入ヒト前脂肪細胞」の製剤キット化を進める。今後実施予定の遺伝子治療臨床研究、臨床試験(治験)そして国内での医薬品製造・販売承認(薬事承認)へと円滑に繋げ、患者の予後ならびにQOLの向上に資する医療技術の迅速な確立と本細胞医薬品の患者への早期提供を目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231166Z