先天性中枢性低換気症候群(CCHS)の診断・治療・管理法の確立

文献情報

文献番号
201231165A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性中枢性低換気症候群(CCHS)の診断・治療・管理法の確立
課題番号
H24-難治等(難)-一般-064
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
早坂 清(国立大学法人山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 綾子(国立大学法人山形大学 医学部)
  • 長谷川 久弥(東京女子医科大学東医療センター)
  • 鈴木 康之(独立行政法人国立成育医療研究センター集中治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 CCHSでは,呼吸の化学的調節機構が障害され,主に睡眠時に低換気を呈する.呼吸中枢や自律神経系の形成に重要な役割を有している転写調節因子PHOX2B遺伝子変異が病因である.殆どの症例は,5~13アラニンの伸長変異を有し,多くは突然変異である.臨床診断においては,呼吸機能解析が必須であるが,多くの症例は新生児期に発症し,解析には多くの困難が有る.再呼吸法を利用した炭酸ガス換気応答試験の確立を試みることを目的とした.
 一方,遺伝子診断は簡便であり,遺伝子型と表現型の関係も明らかにされて,有用な情報が得られる.伸長変異の殆どは,突然変異によると考えられてきたが,最近,約25%は変異のモザイクの親からの遺伝であると報告された.しかし,この論文では解析数が少なく,多くの症例で確認する必要がある.精度の高い方法の確立と多数の解析を目的とする.
 治療・管理法に関して,米国では,治療指針が作成されており,国内でも作成が求められている.国立成育医療センターにおいては,国内では最多の4症例について,長期にわたり治療・管理を施行している.これらの情報を後方視的に解析し,有効な治療管理法の確立を目指すことを目的とする.
 日本の新生児・周産期医療は高度であり,適切な情報を提示することにより速やかな診断そして適切な治療・管理が展開するものと考える.最終的には,日本におけるガイドラインを作成し標準的な医療の普及および患者家族の会の支援を目的とする.
研究方法
1.診断について
 (1)炭酸ガス換気応答試験による臨床診断法の確立(長谷川久弥担当)
 東京女子医科大学東医療センターで出生し、正常新生児室に入院中の新生児で、在胎週数37週以上42週未満、1分後Apgar Score7点以上、出生時体重2500g以上、パルスオキシメータによるトレンドモニタにて明らかな低酸素血症を呈さなかった者を対象とした。5%CO2と95%O2の混合ガスを閉鎖回路内でマスクを用いて呼吸させることにより連続的にCO2を蓄積させ換気応答を調べる再呼吸法を用いた。再呼吸を継続しCO2濃度と換気量の関係をコンピュータで解析した.
 (2)PHOX2B 遺伝子診断法(早坂清,佐々木綾子担当)
 最初に,シークエンサーを利用したfragment analysisによる鋭敏なモザイクの検出法の確立を試みた.次に,PHOX2Bの5-13個のアラニン伸長変異を確認した45症例の両親を対象とし,モザイクによる遺伝の有無を解析した.
2.治療および管理について(鈴木康之担当)
 1993年より国立小児病院および国立成育医療研究センターで治療管理をおこなっているCCHS 4症例の治療経験および海外のCCHSの文献より、呼吸管理を中心とした治療管理方法を検討した。
結果と考察
 CCHSの臨床診断法に関して,新生児期ではpassive flow-volume techniqueを用いる標準的な呼吸機能検査に,炭酸ガス換気応答試験を加え中枢性呼吸機能を測定し,年長児に関しては,再呼吸回路でCO2 を蓄積させる再呼吸法を用いた診断法を確立した.これらの検査は臨床的に有用な方法であると考える.
 遺伝子診断に関しては,鋭敏なモザイクの検出法の確立し,45名の両親を検索し,1名は5アラニン伸長変異をlate-onset CCHSの親から,9名は5-7アラニン伸長変異を無症状の体細胞モザイクの親から遺伝を確認した.22%は,親からの遺伝であり,遺伝カウンセリングに有用であることが明らかにされた.
 治療・管理法について,出生直後に気管切開人工呼吸管理を行った症例でも12歳前後に非侵襲的人工呼吸管理に変更し、安全に管理ができていた。非侵襲的方法にはマスクによるNoninvasive positive pressure ventilationと横隔神経ペーシングとがある。横隔神経ペーシングに関しては本邦では健康保険適応になっておらず、早期導入が求められる。気管切開人工呼吸管理から非侵襲的呼吸管理への変更の時期については慎重に検討すべきであり,また在宅モニタリングシステムの確立も重要であると考えられた.
結論
 新生児を含めた呼吸機能の解析は診断に有用であり,方法の普及が必要である.遺伝子診断は,簡便であり,遠隔地にあっても診断が可能であり,合併症の情報や遺伝カウンセリングについても有用である.治療・管理法については,標準的な治療・管理法を提示し,周知する必要がある
 患者家族の会への支援も重要なテーマであり,提供可能な医療および社会的支援についての情報も提供すべき課題と考える.

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231165Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,850,000円
(2)補助金確定額
5,850,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,145,020円
人件費・謝金 33,150円
旅費 367,481円
その他 1,954,349円
間接経費 1,350,000円
合計 5,850,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
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