神経フェリチン症の実態調査と診断基準の構築に関する研究班

文献情報

文献番号
201231164A
報告書区分
総括
研究課題名
神経フェリチン症の実態調査と診断基準の構築に関する研究班
課題番号
H24-難治等(難)-一般-063
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高尾 昌樹(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 百島 祐貴(慶應義塾大学医学部・射線診断科)
  • 山脇 健盛(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 脳神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経フェリチン症(NF)はフェリチン軽鎖遺伝子変異に関連した鉄と神経変性病態解明の糸口となる疾患である。多彩な神経症候・数十年に及ぶ経過から診断されていない可能性が高く実態が不明であった。平成23年度「脳表ヘモシデリン沈着症の診断基準の構築と調査に関する研究班H23-難治-一般-062」における知見を活用し、NFの実態解明、診断基準(診断指針)提唱、医療関係者への周知、医療行政への貢献、鉄と神経変性との基礎研究への橋渡しを目指す。英文診断基準(診断指針)も提唱し、医療発展途上国へNFを紹介し貢献することを目的とする。
研究方法
期間は2年(24から25年度)。24年度:診断基準(指針)改訂案により、全国の主な神経内科施設、放射線診断科に対しNF例(疑いを含む)の有無や、臨床症候、画像所見などを詳細に調査(疑い剖検例も)。その後、NF例を研究班会議で主治医参加を依頼し、1例1例検討し本邦の実態を掌握する。同時に、診断疑い例の確定診断のための、遺伝子診断施設紹介などを含む診断支援を(当初平成25年度予定を前倒しで実施中)、一部の症例で開始。剖検例の存在を確認するため高齢者ブレインバンク共同研究施設やリサーチリソースネットワークへ依頼。25年度:NF確定例の詳細な臨床、画像、血液・脳脊髄液検査所見、遺伝子変異が確定した例では表現形の対応も検討。NF(疑い)剖検例は、共同研究として検索を依頼し検討する。画像と病理の対比も施行。班会議では、確定例や疑い例を有する主治医への参加を依頼し、24年度同様に診断支援を継続する。同時に類似症候を呈する家族性パーキンソニズム関連遺伝子も検索依頼し診断基準(診断指針)を提唱し、初年度アンケート調査を実施した施設へ再依頼、妥当性と実態を検討。成果は各年度、日本神経学会や論文で報告。
結果と考察
神経フェリチン症(NF)の診断指針を作成した。MRIにおける用語を平易にし、時に混同されるパントテン酸キナーゼ関連神経変性症との違いも明記するなどの工夫がなされた。研究班設立後よりNF疑い例診断支援の依頼があり、本疾患の診断に対する関心の高さと同時に,診断指針などがないことにより診断困難さも想定され,調査票を当初予定していた一次,二次方式ではなく,より詳細な調査票(別添)を一括して送付した。送付先は予定通り全国の神経内科施設(716施設)へ施行、さらに神経放射線科への送付を(403施設(会員))施行した。調査票は、回収率を上げるための工夫(脳表ヘモシデリン沈着症の診断基準の構築と調査に関する研究班(H23-難治-一般-062);当時40%の回収率)を計画通り施行し、平成25年度3月31日現在で神経内科施設241施設より(回収率33.7%)、神経放射線学会施設(会員)82施設より回答を得た(回収率20.3%、平成25年3月14日現在)。アンケート調査等により、報告書提出時点で、NF確定・疑い例を神経内科施設から11例、神経放射線施設から4例確認した。特に、研究班設立後より診断支援等の依頼があり、第2回班会議までに6例の診断支援を主治医参加のもとに施行した。6例のうち、1例は第1回班会議において、NFの可能性が高いとのことで、米国への診断支援を行い、新規遺伝子変異が発見された。1例は未報告例で既報告遺伝子変異例。残り1例は既報告例で長期経過の詳細を検討された(後に死亡が確認された)。残り3例のうち、2例は遺伝子学的に検索中。1例は、NFではない可能性が指摘され、剖検によってミトコンドリア脳症と診断。班会議後、あらたに1例の支援を開始したところである。
第53回日本神経学会総会の「鉄と神経疾患」に関するシンポジウムで,研究班による発表を行い,特に診断基準(診断指針)となる画像診断方法とNFの神経病理学的背景を研究班開始年度より行うことができた。概ね研究計画、目的に沿って進行しており、特に遅れなどは生じておらず、平成24年度から平成25年度(2年間)における目標は達成可能と考慮される。
結論
神経フェリチン症(NF)の本邦における実態をはじめて明らかにしつつあり、診断基準(診断指針)(案)が完成した。次年度以降、ひろく臨床医学への貢献、国際的貢献、特定疾患治療研究事業助成などにおける適切な医療費助成といった政策貢献を目指すものである。また、鉄関連疾患の根本治療法や既存薬による治療法開発や鉄-フェリチン-神経変性の病態解明に関する基礎的研究への端緒となりうる。本研究班は、文部科学省「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」班との共同研究が準備・調整中であり、iPSによる研究などへの貢献も可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2013-05-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231164Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,600,000円
(2)補助金確定額
6,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,324,518円
人件費・謝金 302,500円
旅費 1,411,460円
その他 680,308円
間接経費 900,000円
合計 6,618,786円

備考

備考
分担研究者の自己負担分があるため.

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-