脂肪萎縮症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231161A
報告書区分
総括
研究課題名
脂肪萎縮症に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-060
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
海老原 健(京都大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 一和(京都大学 医学研究科)
  • 伊藤 裕(慶應義塾大学 医学部)
  • 柳瀬 敏彦(福岡大学 医学部)
  • 望月 弘(埼玉県立小児医療センター 代謝内分泌科)
  • 安達 昌功(神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脂肪萎縮症は全身性あるいは部分性に脂肪組織が消失する疾患で、脂肪組織の消失とともに重度の糖尿病や高中性脂肪血症、非アルコール性脂肪肝炎など様々な代謝異常を発症する予後不良な難治性疾患である。脂肪萎縮症には先天性のものと後天性のものが知られており、先天性脂肪萎縮症の原因遺伝子が近年相次いで報告されているが、その発症メカニズムの詳細は不明である。一方、脂肪萎縮症は数百万人に1人とも言われる極めて希少な疾患であるため、これまで十分な調査がなされておらず、脂肪萎縮症の発生頻度についての我が国における直接的な統計データはない。これまで脂肪萎縮症において脂肪萎縮そのものに対する根治療法は存在しなかったが、近年、脂肪組織より分泌されるホルモン、レプチンの有効性が証明され、本年3月にレプチン製剤が脂肪萎縮症を適応疾患として薬事承認を取得した。
脂肪萎縮症は「希少性」「原因不明」「効果的な治療方法未確立」「生活面への長期にわたる支障」の4要素を満たすにもかかわらずこれまで、国内外において、十分な調査や研究の進んでいない疾患である。今後レプチン製剤の市販が予定され医療費も高額になることが想定されているが、脂肪萎縮症は医療費助成の対象疾患ではなく診断基準も策定されていない。そこで本研究では、我が国における脂肪萎縮症の実態把握および診断基準の策定を目指す。
研究方法
1.脂肪萎縮症の実態調査
申請者らは以前、日本内分泌学会専門医を対象にアンケート調査を行った。しかし脂肪萎縮症患者が内分泌学会専門医以外にかかっていることも想定され、十分な調査とは言えない。そこで本研究ではより網羅的な調査を行うためにある一定病床数以上の病院を対象にアンケート調査を行う。また回答率の向上とより詳細な調査の実施のために調査は、症例の存在と簡単な質問から成る1次調査と、1次調査で存在の明らかになった症例に対して行うより詳細な2次調査の二段階で実施する。
2.先天性症例に対する原因遺伝子の検索
本研究では上記実態調査で見出された先天性症例を対象に血液からゲノムDNAを採取し原因遺伝子の検索を行う。既知の原因遺伝子に異常を認めない症例についてはさらに全ゲノム解析を実施し原因遺伝子の解明を試みる。
3.脂肪萎縮症センターの設立
上記実態調査で見出した症例については症例登録を行い、主治医と連携することにより、治療経過のモニタリングを実施し継続的なデータ収集を行う。さらに適正な治療法の提案を行い、脂肪萎縮症に関する医療環境や予後の向上に努める。
結果と考察
1.脂肪萎縮症の実態調査
研究1年目は、経費やマンパワーを考慮しながら調査対象や調査項目、調査方法について検討準備を行った。症例の存在と簡単な質問から成る1次調査と、1次調査で存在の明らかになった症例に対して行うより詳細な2次調査の二段階で実施することを予定している。
2.先天性症例に対する原因遺伝子の検索
これまでのアンケート調査などで得られた情報をもとに遺伝子解析研究に対し患者リクルートを行い、患者情報と血液検体の得られた先天性症例についてまず既知の原因遺伝子に関する変異の有無を検討した。先天性全身性脂肪萎縮症12例を対象に変異検索を行ったところ10例でseipin遺伝子にホモ接合体変異が確認され、2例ではいずれの遺伝子にも変異は確認されなかった。今後、この原因不明の2例について全ゲノム解析を実施予定である。
3.脂肪萎縮症センターの設立
本年3月にレプチン製剤が脂肪萎縮症を適応疾患として薬事承認を取得した。このときの承認条件として市販後10年間の全例調査が科せられた。そこで、レプチン製剤が処方された症例の登録および継続的なデータ収集を、製薬企業と連携して実施することとし、現在体制の調整中である。
結論
1年目は分担研究者との連絡体制の強化と調査への準備で終わったが、これまでの経験や分担研究者との検討結果を踏まえ今後全国実態調査を実施する。また、今後発売が予定されているレプチン製剤の承認条件として市販後10年間の全例調査を行うこととなったため、製薬企業と連携しての情報収集が可能となり、今後の全国レベルでの継続的な調査が期待できる。
 脂肪萎縮症の原因解明については、先天性全身性脂肪萎縮症12例を対象に既知原因遺伝子の変異検索を進め、10例でseipin遺伝子にホモ接合体変異が確認された。今後、既知遺伝子に変異の確認できなかった原因不明の症例について全ゲノム解析を実施し、原因解明を進める。

公開日・更新日

公開日
2013-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231161Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,850,000円
(2)補助金確定額
5,850,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,088,502円
人件費・謝金 290,820円
旅費 86,180円
その他 34,524円
間接経費 1,350,000円
合計 5,850,026円

備考

備考
26円は利息としての差異

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-