三重県南部に多発する家族性認知症-パーキンソン症候群 発症因子の探索と治療介入研究

文献情報

文献番号
201231159A
報告書区分
総括
研究課題名
三重県南部に多発する家族性認知症-パーキンソン症候群 発症因子の探索と治療介入研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-058
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小久保 康昌(三重大学 大学院地域イノベーション学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩田 淳(東京大学医学部付属病院 分子脳病態科学講座)
  • 江良 択実(熊本大学 発生医学研究所 幹細胞誘導分野)
  • 岡本 和士(愛知県立大学 看護学部)
  • 紀平 為子(関西医療大学 保健医療学部)
  • 辻 省次(東京大学医学部付属病院 神経内科)
  • 富山 弘幸(順天堂大学医学部 脳神経内科・神経疾患病態治療探索講座)
  • 長谷川 成人((公財)東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能分野)
  • 広川 佳史(三重大学大学院医学系研究科 腫瘍病態解明学講座)
  • 村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター研究所 老年病理学研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来の研究を発展させ疾患の病態解明と治療法の開発を行い、研究終了時には、発症関連遺伝子の同定と治療薬開発を目標とする。24年度は、発病者の全ゲノム解析と患者由来iPS細胞の作成実験を行う。中長期的な目標は、早期診断と治療介入による患者のQOLと生命予後の改善、さらに発症要因解明と予防介入による発症防止と疾患の根絶である。
研究方法
1) 牟婁病の中のC9orf72変異例:紀伊半島における集積の発見と臨床像の解明 (石浦、紀平、吉田、富山、小久保、葛原、辻) 2) 環境要因:ALS減少に影響を与えた生活と食習慣の変化に関する検討、脳内BMAA 研究 (紀平、岡本、小久保)、3) 遺伝要因 (石浦、岩田、辻)、4) MultipleProteinopathy (森本、小久保、村山、長谷川)、5) iPS 細胞研究 (広川、江良)、6) 臨床研究 (小久保)の各項目について検討した。
結果と考察
結果
1)紀伊半島の2大多発地のひとつ、古座川地区症例の20%にC9orf72変異症例を認めた。各症例の詳細な臨床像を明らかにした。2)多発地区における食品摂取内容、飲用水、仕事内容について、1960年代と現在の比較から、食生活の西欧化、肉体労働の減少を確認した。グアム島のALS/PDC の発症要因として提唱されている蘇鉄由来の脳内BMAAについて、紀伊半島症例では認めなかった。3) 大家系に属する2名のmarried-inの発症者の連鎖解析を行った。affected-persons-only methodを用いた解析では、新たにLODスコアが2.8となるマーカーを認めた。2名の全ゲノム配列解析については、シーケンスは終了し、現在情報解析を行っている。エピゲノム解析では異常を認めるCpGの位置としてはMAPTが非翻訳領域exon1の5’側,GSKがexon-1の上流であった.4) Multiple Proteinopathy: 小脳の検討で高頻度に異常Purkinje cellsおよびリン酸化タウ陽性構造物を認めた。2012年に新たに剖検された2症例の異常蛋白質解析を行い、3R+4R タウおよび DLB タイプのリン酸化α-synuclein を認めた。5) 2例の患者からiPS細胞を樹立した。神経細胞への分化を試みている。6) 5例の患者にエダラボンの臨床研究を行い、軽症の2例で意欲や活動性に改善が見られた。最も病状の軽かった1例では、UPDRS, CAS やる気スコアであきらかな改善がみられた。
考察
紀伊半島のALS/PDC の一部がC9orf72変異を有するという発見は、紀伊ALS/PDC がいくつかの疾患からなる症候群であることを示唆する。ALSタイプの激変にもかかわらず、多発地に特異的な環境変化はみとめられなかったことから、50年前までの生活環境に対する脆弱性がALS発症に関わっていた可能性が高い。一方、タウオパチーとして包括できるPDC は、α-synucleinやTDP-43など様々な異常凝集蛋白質が蓄積し、濃厚な家族歴を有する 独特なmultiple proteinopathy と理解できる。いずれにしても、発症には遺伝的素因が大きく関与しているものと考えられるので、全ゲノム解析やエピゲノム解析の進展が望まれる。本疾患に対して、世界で初めて行ったエダラボンを用いた臨床研究では、酸化ストレスの軽減が一定の効果を有することが示された。今後、iPS 細胞を用いた病態解明が期待される。
結論
牟婁病は、tauopathy を基盤とした病型の他に C9orf72 遺伝子変異を有する病型などいくつかの subtype からなる症候群と考えられる

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231159Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,200,000円
(2)補助金確定額
7,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,835,393円
人件費・謝金 86,474円
旅費 1,243,035円
その他 736,344円
間接経費 1,350,000円
合計 7,251,246円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」との差額51,246円のうち、自己負担 51,230円、利息 16円です。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-