小児新生児期における遺伝性血栓症(プロテインC異常症を含む)の効果的診断と治療予防法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201231151A
報告書区分
総括
研究課題名
小児新生児期における遺伝性血栓症(プロテインC異常症を含む)の効果的診断と治療予防法の確立に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-050
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大賀 正一(九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 康 東天(九州大学大学院医学研究院 臨床検査医学)
  • 嶋 緑倫(奈良県立医科大学小児科学)
  • 落合 正行(九州大学病院・総合周産期母子医療センター新生児内科部門)
  • 福嶋 恒太郎(九州大学病院・総合周産期母子医療センター母性胎児部門)
  • 金子 政時(宮崎大学医学部・生殖発達医学講座産婦人科学分野)
  • 高橋 幸博(奈良県立医科大学病院・総合周産期母子医療センター)
  • 瀧 正志(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院・小児科)
  • 石黒 精(独立行政法人国立成育医療センター・教育研修部・血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プロテインS(PS)、プロテインC(PC)及びアンチトロンビン(AT)欠損症は、日本人の3大血栓性素因である。変異保有者の頻度は各2%未満で、成人は静脈血栓症をおこしやすいが、小児については明らかでない。乳児や妊婦の活性は生理的に変動し、感染などによる影響から診断が難しい。補充製剤の小児への使用法も未確立である。本研究は、小児血栓症の全貌を解明し、診療ガイドラインを作成して血栓性素因を有する母子を長期管理できる体制の確立をめざす。
研究方法
小児血栓症について、分子疫学、発症様式、診断と治療を明らかにする。血栓性素因を疑う母子にスクリーニングと遺伝子解析を行う。これまでの独立した複数の調査を統合し、国内症例の網羅的解析を行い小児新生児の基盤データを作成した。これを元に日本の小児血栓症の分子疫学と臨床像を明らかにした。新規診断例には遺伝子解析と家族のカウンセリングを実施した。過去20年の小児血栓性素因解析(九州大)から、3大因子活性による効果的スクリーニング法を検討した。
結果と考察
分子疫学と臨床像:小児先天性血栓症の70%は、3因子欠乏(PC 45%, PS 15%, AT 10%)で、成人とは異なっていた。ほとんどは頭蓋内病変か電撃性紫斑病で発症する新生児PC欠乏で、両アレル変異が半数、ヘテロ変異が25%であった。変異がなく緩やかに活性値が上昇する新生児例が明らかとなった。13名の血栓性素因を解析し、3因子欠損の新規8家系(PC3、PS及びAT異常各2)を同定した。新生児発症はPC異常のみで、妊婦はPS低下と第Ⅷ因子が関与していた。
小児の活性値によるスクリーニング:小児の血栓性素因解析は、1歳未満が最も多く16%を占めた。各年齢群の活性低下を、0-2歳のPC, PSは成人下限の85%、ATは同下限の65%、3-6歳の3因子は同下限の85%、7歳以上の3因子は成人下限と同じに定義すると、低因子活性児の割合はPC 32%、PS 17%、AT 7%であった。この低因子活性児における変異保有率はPC 21%(8例)、PS 30%(8例)、AT 40%(2例)で、PC変異4例とPS変異2例(PS徳島を含む)が両アレル変異であった。PS活性と乖離した低PC活性が、PC欠損症診断に有用と考えられた。
結論
小児遺伝性血栓症例を集積し分子疫学と臨床像を明らかにした。その診断には、①新生児、乳児に発症するPC欠損とそれ以降のPS及びAT欠損にわけ、②3か月までのPS/PC活性の乖離、および③後天性PC欠乏症、に注意する必要がある。この全国規模の臨床研究が、予防と包括医療の連携基盤となる。母子の血栓素因を早期診断し、AT/PC製剤の適正使用を含む治療ガイドラインの作成を進める。

公開日・更新日

公開日
2013-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231151Z