重症骨系統疾患の予後改善に向けての集学的研究

文献情報

文献番号
201231141A
報告書区分
総括
研究課題名
重症骨系統疾患の予後改善に向けての集学的研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-040
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大薗 惠一(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 友彦(長野県立こども病院)
  • 橋本 淳(国立病院機構大阪南医療センター・免疫疾患センター)
  • 藤原 幾磨(東北大学大学院医学系研究科)
  • 道上 敏美(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター研究所)
  • 八十田 明宏(京都大学・内科学内分泌代謝学)
  • 仲野 和彦(大阪大学大学院 歯学研究科)
  • 長谷川 高誠(岡山大学病院・小児医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨系統疾患は、骨/関節のみならず全身的な症状を呈するが、重症型では呼吸機能が不十分で人工呼吸管理を要する。新生児医療の発達により呼吸管理法が進歩し、原病に対する治療、酵素補充療法など新規治療法が開発されてきたので、重症骨系統疾患をとりまく環境は大きく変化している。本研究では、複数の重症骨系統疾患を対象とし、呼吸管理を行っているかどうかを含め、診療の実態について調査研究を行う。正確な診断のために、多数の遺伝子について変異解析を行う。病態研究を行い、新たな治療法開発の戦略を提供する。
研究方法
全国の産科、新生児科、小児科、整形外科、歯科の主要施設に対し、骨系統疾患の診療実態に関してアンケート調査を行う。骨系統疾患の遺伝子解析を積極的に行う。自然発症マウス、遺伝子組換えマウスを用いて、病態の解析を行なう。ホームページ(HP)を解説し、診断基準の作成などを行い、疾患の理解を進めるとともに、相談窓口を設け、診断治療の手助けを行う。
結果と考察
低フォスファターゼ症の診断指針を、HPで公開し、周知に努めた。遺伝子解析が行われた本症の数は、9例であった。日本人の本症において2番目に多いF310L変異が周産期発症良性型に関連することについて周知を図った。アンケート調査の結果、28例の呼吸管理例が把握され、23例は生存していた。本症に対する酵素補充療法の国際共同治験が行われる事となり、5症例の治験導入に関わった。
 CNP(C型Na利尿ペプチド)シグナルが軟骨成長を促進する事が近年報告されているが、その受容体NPR-Bの機能獲得型変異を有する家系を見いだし、過成長による高身長を呈する事を世界で初めて報告した。さらに異なるNPR-B変異を有する2例目の高身長家系を見いだし、新たな疾患単位として確立した。新たに同定された機能低下型のCNP遺伝子変異マウスおよび軟骨特異的CNPノックアウトマウスを用いて、CNP/NPR-B系の生理的な骨伸長促進作用に関する解析をおこなった。
 総合周産期母子医療センター89カ所を対象に「人工呼吸管理を必要とする重症骨系統患児の実態調査」を行なった。49%の施設が骨系統疾患患児の人工呼吸管理の経験があり、全症例数は87例であった。87例中28例(32%)が自宅へ退院できておりそのうち22例は気管切開+在宅人工呼吸で退院し、3名は在宅酸素療法で退院していた。
 低フォスファターゼ症に関して、全国の歯科領域施設に対する実態調査を行い、23名の患児における詳細な情報が得られた。その結果、約80%の患児において乳歯の自然脱落が4歳頃までに生じていることが分かった。小児義歯の装着を行ったところ、審美性の回復に加えて、咀嚼および発音機能が向上する可能性が示唆された。本症モデルマウスの下顎骨を用いた免疫組織学的研究において、遺伝子治療が歯科的症状の改善にも有効であることが示された。
 骨形成不全症患者19家系中74%に1型コラーゲン遺伝子(Col1A1、Col1A2)の変異を認めた。変異陽性者のうち、GlyからSerへの変異を認める群が、その他の変異を認める群に比しより重症な表現型を呈していた。パミドロネートによる治療効果と、病型、変異遺伝子との間には、統計学的有意差は認めなかった。
 乳児悪性型大理石骨病に関するアンケート調査を行った。その結果、10例が把握され、80%の症例が骨髄移植を受けていることが明らかとなった。一方、遺伝子診断を施行された症例は20%にとどまっていたことから、大理石骨病の遺伝子診断の体制の確立が急務であった。
 軟骨低形成症21名の軟骨低形成症疑い患者に対して線維芽細胞増殖因子受容体3型遺伝子解析を行い、8名に既知の変異を認めた一方で、他の疾患であった患児(4名)や体質性低身長症が疑われた患児も認めた。致死性骨異形成症の診療の実態についてアンケート調査を行った。その結果、小児科施設において13名、産科施設において3名の生存例があることが判明した。
 骨系統疾患治療歴のある全国146施設に郵送で、過剰運動症候群、若年発症の骨パジェット病、重症の遺伝性多発性外骨腫の診療状況調査を行い、その頻度と重症度情報を得た。
結論
低フォスファターゼ症に対する診断指針の策定および広報活動により、本症の認知度が高まっている。
呼吸管理を必要とする重症骨系統疾患児の87例中28例が自宅へ退院できていた。
小児義歯の装着は残存歯の早期脱落を予防する可能性がある。
致死性骨形成不全症の遺伝子診断は、Col1A1、Col1A2のみでは不十分であり、他の遺伝子も対象とする必要がある。
8例の乳児大理石骨病において骨髄移植が行なわれ、5例が生存している。
致死性骨異形成症の生存例は増加しており、病名はふさわしくない。
過剰運動症候群の疾患概念を確立する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-05-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231141Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
45,500,000円
(2)補助金確定額
45,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 27,571,073円
人件費・謝金 1,857,268円
旅費 1,720,176円
その他 3,851,790円
間接経費 10,500,000円
合計 45,500,307円

備考

備考
直接経費と間接経費の差額307円は利息分となっております。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-