特発性発汗異常症・色素異常症の病態解析と新規治療薬開発に向けた戦略的研究

文献情報

文献番号
201231140A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性発汗異常症・色素異常症の病態解析と新規治療薬開発に向けた戦略的研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-039
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(東京医科歯科大学・大学院 医歯学総合研究科・皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 玉田 康彦(愛知医科大学皮膚科)
  • 室田 浩之(大阪大学大学院)
  • 佐藤 貴浩(防衛医科大学校皮膚科)
  • 渡邉 大輔(愛知医科大学皮膚科)
  • 佐々木 成(東京医科歯科大学腎臓内科)
  • 水澤 英洋(東京医科歯科大学神経内科)
  • 中野 創(弘前大学皮膚科)
  • 岩瀬 敏(愛知医科大学生理学)
  • 朝比奈 正人(千葉大学医学研究院神経内科学)
  • 中里 良彦(埼玉医科大学神経内科)
  • 新関 寛徳(国立成育医療研究センター皮膚科)
  • 佐野 健司(信州大学医学部附属病院臨床検査部 外科病理学+分子病 理学)
  • 藤本 智子(多摩南部病院皮膚科)
  • 鈴木 民夫(山形大学医学部皮膚科学)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学)
  • 錦織 千佳子(神戸大学大学院医学系研究科皮膚科学)
  • 山下 英俊(山形大学医学部眼科学)
  • 深井 和吉(大阪市立大学大学院医学研究科臨床医科学専攻皮膚科学)
  • 川上 民裕(聖マリアンナ医科大学皮膚科学)
  • 金田 眞理(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学)
  • 大磯 直毅(近畿大学医学部皮膚科学・医学部附属病院安全管理部)
  • 川口 雅一(山形大学医学部皮膚科学)
  • 種村 篤(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学)
  • 河野 通浩(名古屋大学大学院医学系研究科・皮膚病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
[発汗異常症班]顔面多汗症のガイドラインも作成。各種既存治療法の臨床効果を臨床研究にて検証。アクアポリン5、アセチルコリン受容体の発汗異常症の汗腺における役割を解析。原因遺伝子解析は遺伝子多型マーカーを用いてハプロタイプ解析。
[色素異常症班]遺伝性色素異常症は、今回、全国的な疫学調査を行い、得られた知見やエビデンスに基づいた実践的な治療と生活指導指針の作成を目的。一方で、疾患モデルマウスや培養細胞を用いた病態解明と治療実験を行い、新規治療法の開発、臨床応用を目指す。
研究方法
発汗異常班
今年度2回、ガイドライン委員会を開催。多汗症に対する塩化アルミニウム外用療法、ボトックス療法の有効性を二重盲検試験で検討。また、掌蹠多汗症に対するボトックス療法の臨床研究も予定している。
①特発性後天性全身性無汗症((AIGA)の電気生理学的な病態の解析
②病因遺伝子決定
遺伝子多型マーカーを用いてハプロタイプ解析を行い確認。外胚葉形成不全症 、肥厚性皮膚骨膜症の原因遺伝子の解析
③SPECTによる病態解析班
脳血流シンチ(SPECT)により発汗量と血流量の相関関係をさらに症例数を増やして検討。
④汗腺におけるアクアポリン5の発現動態と役割
色素異常班
全国の皮膚科と眼科を対象に疫学調査を今年度実施。
①眼皮膚白皮症、まだら症、ワールデンブルグ症候群疫学調査の結果から、新たに多数の遺伝性色素異常症家系をリクルートし、変異検索を行い遺伝子診断。
②遺伝性対側性色素異常症に対する新規治療法の開発
これまでに遺伝子診断にて診断が確定して同意が得られる患者で、白斑部に1mmパンチ・グラフトを試行してその効果を検討。
③まだら症、ならびにワールデンブルグ症候群に対する新規治療法の開発
患者の白斑部由来組織や培養細胞を用いて、c-kitの発現の有無等を検討。
④白斑・白皮症研究班にて結節性硬化症の脱色素斑に対し、M-TOR阻害薬外用の有効性を検討。
結果と考察
発汗異常班 
今年度、顔面多汗症診療ガイドラインを作成中。特発性全身性無汗症の診療ガイドラインも策定(自律神経雑誌、印刷中2013年3月号)。また、多汗症に関するQ and Aを作製して日本皮膚科学会ホームページに掲載準備中。多汗症の第一選択療法である塩化アルミニウム療法、第二選択肢であるボトックス療法は保険適応外のため、多汗症に対する塩化アルミニウム外用療法、ボトックス療法の有効性に関し二重盲検臨床試験を施行し有効性を確認(日本皮膚科学会誌、印刷中2013年2月号)。ボトックス療法は保険適応になった。外用療法は保険適応申請予定。日本人の原発性性局所多汗症家系の一部では原因遺伝子が第14番染色体のq11.2-q13にマッピングされている可能性があり、新規に集積した患者家系において遺伝子多型マーカーを用いてハプロタイプ解析。外胚葉形成不全症 、肥厚性皮膚骨膜症の原因遺伝子の解析も行った(PediatrDermatol, [in press]).脳血流シンチ(SPECT)により発汗誘発刺激により掌蹠多汗症の前頭葉の血流が増加し発汗量と正の相関にあることを認めた。ヒト、マウスのエクリン汗腺の分泌部にアクアポリン5が発現し発汗増加したときにアクアポリン5が細胞質からappicalに移動し重要な役割を果たすことを解明。
色素異常班
疫学調査は、全国の631施設の皮膚科と眼科を対象に行ない、計397通の回答があり現在集計中。ガイドライン作成は5つの対象疾患を決め、眼科と連携をとりつつ執筆中。本年、日本皮膚科学会雑誌に掲載した尋常性白斑診療ガイドライン(日本語:12巻、1725-1740、2012)を英文化(J Dermatol, in press)。また、白斑に関するQ and Aを作製して日本皮膚科学会ホームページに掲載準備中。病因遺伝子変異の同定は、この1年間に新たに計約30症例の遺伝子診断依頼があり、個々の症例の遺伝子変異を検索中。アルビノ・チップの開発は順調に進でおり、本年の日本色素細胞学会で成果を発表。新規治療法の開発については、1型白皮症に対してTgマウスの作成を念頭にまずは原因遺伝子変異細胞を作製した。今後、新規治療法開発を行なう。遺伝性対側性色素異常症の発症メカニズムについては、新知見が得られ科学雑誌に掲載した(Nat Genet2012)。新規治療法として、白斑部に1mmパンチ・グラフトにより良好な結果が得られている。結節性硬化症の脱色素斑に対しては、M-TOR阻害薬外用が有効であることを確認。
結論
発汗異常症・色素異常症の診断基準はすでに作成され疫学調査により患者数も把握された。また、各種疾患の診療ガイドラインも策定され今後は原因遺伝子を検索しその遺伝子をターゲットとした新規治療法の開発が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231140Z