腸管希少難病群の疫学、病態、診断、治療の相同性と相違性から見た包括的研究

文献情報

文献番号
201231137A
報告書区分
総括
研究課題名
腸管希少難病群の疫学、病態、診断、治療の相同性と相違性から見た包括的研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-036
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
日比 紀文(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 守(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 中島 淳(横浜市立大学 医学部)
  • 山本 博徳(自治医科大学 医学部)
  • 松本 主之(九州大学 医学部)
  • 金井 隆典(慶應義塾大学 医学部)
  • 松井 敏幸(福岡大学 筑紫病院)
  • 平田 一郎(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 三浦 総一郎(防衛医科大学校 医学教育部)
  • 清水 誠治(西日本旅客鉄道株式会社 大阪鉄道病院 診療部)
  • 田中 正則(弘前市立病院 臨床検査科)
  • 福土 審(東北大学 医学部)
  • 藤本 一眞(佐賀大学 医学部)
  • 正木 忠彦(杏林大学 医学部)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 岩男 泰(慶應義塾大学 医学部)
  • 小林 清典(北里大学 東病院)
  • 岡本 隆一(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 松橋 信行(NTT東日本関東病院 消化器内科)
  • 佐藤 俊朗(慶應義塾大学 医学部)
  • 武林 亨(慶應義塾大学 医学部)
  • 松岡 克善(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
55,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在原因不明の腸管障害としては、潰瘍性大腸炎、クローン病が代表的な疾患であり、両疾患ともに診断基準、治療指針が確立されている。しかし、その他の希少腸管難病は、診断基準・治療指針はもとより実態調査も進んでいないのが実情である。そこで、今回の研究班では、腸管希少難病として、腸管ベーチェット病/単純性潰瘍、非特異性多発性小腸潰瘍症、Cronkhite-Canada症候群、セリアック病、蛋白漏出性胃腸症・吸収不良症候群、静脈硬化性大腸炎、腸管気腫症、顕微鏡的大腸炎、Henoch-Schönlein紫斑病を取り上げ、複数の疾患の病態の相同性と相違性に着眼し、さらにオールジャパンの研究組織としてのスケールメリットを活かし、実態調査・診断基準作成・治療指針策定を行うことを目的としている。
研究方法
(1) 単純性潰瘍/腸管ベーチェット、(2) 非特異性多発性小腸潰瘍症、(3) 顕微鏡的大腸炎、(4) Cronkhite-Canada症候群、(5) 粘膜逸脱症候群、(6) 蛋白漏出性胃腸症、(7) 吸収不良症候群、(8) Henoch-Schönlein紫斑病の8疾患を対象とし、それぞれの疾患について、① 全国規模の疫学調査、② 診断基準の確立、③ 治療ガイドラインの作成、④ 基礎病態の解明を行う。以上の研究を通じて、腸管希少難病の実態を明らかとし、診断基準・治療ガイドラインを作成する。
結果と考察
腸管ベーチェット/単純性潰瘍については実態調査・コンセンサスステートメントとしての治療指針作成まで進んでいる。実態調査では、全国49施設から338例の症例が集積された。単純性潰瘍/腸管ベーチェットの患者数は全国で約3,000名と考えられており、これはその約10%にあたる症例数である。その結果、腸管に潰瘍を発症しているものの、ベーチェット徴候を有さない症例が約40%いることが明らかとなった。これらの症例は腸管ベーチェットと診断することはできないため、本邦から新たな疾患概念として発信する必要があり、現在その診断基準について検討中である。非特異性多発性小腸潰瘍症については全国調査で75例の症例が集積し、診断基準案を作成した。顕微鏡的大腸炎については、全国調査を行い140例の症例を集め解析を行った。その結果、長期的な中心静脈栄養管理や外科手術を要した症例は共通して初発年齢が20-30代の女性であり、発症年齢・性別が難治化を予想する因子である可能性が示された。診断基準及び治療指針のドラフトを作成、専門家のコンセンサスをもとに最終版を作成中である。その他の疾患については、各プロジェクトリーダーのもとで、実態調査を開始した。
結論
本研究班では、これまで患者数が少ないゆえに、診断・治療において統一された基準が存在しない腸管希少難病について、実態把握・診断基準・治療ガイドラインが作成することを目的としている。今回の研究班を通して、オールジャパン体制で症例を集積し、研究を進める体制が整った。今後、各々の疾患の実態を明らかとした上で、診断・治療法の確立を進めて行きたい。実態調査・診断基準・治療指針を定めることで、腸管希少難病で苦しむ患者に対して、一般消化器医であっても腸管希少難病を診断し、治療することが出来るようになることが期待できる。また、行政政策的には、本研究班の研究成果は、腸管希少難病で苦しむ患者に対する効果的な支援体制づくりのための資料として活用することができると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231137Z