胎児・新生児肺低形成の診断・治療実態に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231135A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児・新生児肺低形成の診断・治療実態に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-034
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 規朗(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田口 智章(九州大学 大学院医学研究院)
  • 左合 治彦(国立成育医療研究センター 周産期センター)
  • 黒田 達夫(慶應義塾大学 医学部)
  • 北川 博昭(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 前田 貢作(自治医科大学 医学部)
  • 奥山 宏臣(兵庫医科大学 医学部)
  • 西島 栄治(兵庫県立こども病院)
  • 金森 豊(国立成育医療研究センター 臓器運動器病態外科部)
  • 稲村 昇(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 早川 昌弘(名古屋大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター)
  • 松岡 健太郎(国立成育医療研究センター 病理診断部)
  • 高橋 重裕(国立成育医療研究センター 周産期センター)
  • 中村 知夫(国立成育医療研究センター 周産期センター)
  • 石井 桂介(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 広部 誠一(東京都立小児総合医療センター)
  • 渕本 康史(国立成育医療研究センター 臓器運動器病態外科部)
  • 鈴木 貞夫(名古屋市立大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、呼吸器系の希少難治性疾患である胎児・新生児肺低形成に関し、多施設共同研究あるいは全国実態調査を行ってその診断と治療の実態を明らかにし、各疾患における胎児治療の適応基準を定めるとともに、今後胎児治療を推進していくための基礎的データを集積することである。
研究方法
本研究では、先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、胎児胸水、胎児尿路閉塞性疾患の各疾患について、多施設共同研究あるいは全国調査研究によって、後方視的コホート観察研究を行った。症例データの収集は、JCRACデータセンターを通じて疾患ごとに作成した症例調査票を用いて行った。症例調査票による調査に先立ち、症例数の把握と症例調査の承諾を得るための一次調査を行った。先天性横隔膜ヘルニアについては、平成23年度に614例のデータベース構築を完了していたため、このデータベースを利用してデータ解析を行った。先天性嚢胞性肺疾患については、日本小児呼吸器外科研究会と連携し、施設会員を対象として過去20年間の症例について多施設共同形式で後方視的コホート観察研究を行った。胎児胸水および胎児尿路閉塞性疾患については、日本胎児治療学会の幹事施設を中心に日本周産期・新生児医学会の協力を得て、過去5年間の症例について全国調査形式による後方視的コホート観察研究を行った。先天性嚢胞性肺疾患、胎児胸水、胎児尿路閉塞性疾患における調査項目の詳細は、各疾患の調査研究総括責任者を中心に検討を行い、研究実施計画書とともに決定した。各疾患とも調査実施施設は連結可能匿名化を行った上で症例調査票にデータを記入して、JCRACデータセンターに返送した。JCRACデータセンターは、症例調査票の郵送、調査実施施設との連絡、データ入力、およびデータクリーニングを担当した。
結果と考察
先天性横隔膜ヘルニアは一次調査にて83施設における674症例が集計され、二次調査にて72施設における614症例が調査された。先天性嚢胞性肺疾患は7つの分担研究施設において392例が集計された。胎児胸水は一次調査にて531症例が集計された。胎児尿路閉塞性疾患は一次調査にて112症例が集計された。先天性横隔膜ヘルニアでは、約95%の症例で出生後24時間以内に呼吸困難症状が発症していた。本症に対する胎児治療である内視鏡下胎児気管閉塞術の適応症例を推計したところ、614例中32例~54例(5.2~8.8%)が該当した。症例数による施設規模ごとの治療成績を比較すると、治療症例数の多い施設は治療症例数の少ない施設より治療成績が良好であった。しかし、これら治療症例数の多い施設の間でも、分娩方法や手術時期、gentle ventilationを中心とした呼吸管理の基準値、使用される薬剤などについての治療方針には一定のコンセンサスが得られていなかった。胎児胸水では76.8%が原発性胎児胸水、19.4%がダウン症候群による続発性胸水、3.8%が肺分画症による続発性胸水であった。また、50.7%に胸腔穿刺または胎児胸腔-羊水腔シャント術などの胎児治療が施行されていた。
結論
呼吸器系の希少難治性疾患である胎児・新生児肺低形成を随伴しうる疾患、すなわち先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、胎児胸水、胎児尿路閉塞性疾患について、多施設共同研究あるいは全国調査研究によって、後方視的コホート観察研究を行った。今年度は一部の疾患であるが、その診断と治療の実態が明らかとなり、胎児治療を推進していくための基礎的データを集積することができた。今後、わが国の多数の施設が互いに協力しあい、胎児・新生児肺低形成の治療指針を作成し、胎児治療を推進できるシステムを構築すべきであると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231135Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,800,000円
(2)補助金確定額
39,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,618,901円
人件費・謝金 6,683,698円
旅費 5,803,848円
その他 5,694,091円
間接経費 9,000,000円
合計 39,800,538円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
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