遺伝性難聴および外耳、中耳、内耳奇形に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231133A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性難聴および外耳、中耳、内耳奇形に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-032
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 熊川 孝三(虎の門病院 耳鼻咽喉科・聴覚センター )
  • 東野 哲也(宮崎大学医学部 耳鼻咽喉科学講座 )
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学耳鼻咽喉科学講座)
  • 長井 今日子(群馬大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 )
  • 石川 浩太郎(自治医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 池園 哲郎(埼玉医科大学耳鼻咽喉科学講座)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院)
  • 福島 邦博(岡山大学大学院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)
  • 岩崎 聡(信州大学医学部附属病院人工聴覚器学講座)
  • 工 穣(信州大学医学部 耳鼻咽喉科学講座)
  • 松永 達雄(独)国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
  • 喜多村 健(東京医科歯科大学医歯学総合研究科耳鼻咽喉科学講座)
  • 山岨 達也(東京大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 伊藤 壽一(京都大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)
  • 小川 郁(慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 鈴木 衞(東京医科大学耳鼻咽喉科学講座)
  • 加我 君孝(独)国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
  • 坂田 英明(目白大学保健医療学部言語聴覚学科)
  • 松尾 洋孝(防衛医科大学校分子生体制御学講座)
  • 古庄 知己(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
62,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 難聴は音声言語コミュニケーションの大きな障害となるため、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こし、長期に渡って生活面に支障を来たすため、診断法・治療法の開発が期待されている。しかしながら、難聴という同一の臨床的症状を呈する疾患には、他の症状を伴わない非症候群性難聴、難聴以外の症状を伴う症候群性の難聴、外耳、中耳、内耳奇形などの奇形を伴う難聴や、蝸牛神経の低形成を伴う難聴など、多くの疾患が混在している状況であり、本邦における実態に関しては明確になっていない。本研究では、各々の疾患の罹患者数の把握、臨床像および治療実態の把握、遺伝子解析等を組み合わせた診断・治療法の開発を行うことを目的に、All Japanの研究体制で全国から試料・臨床情報を収集するとともに、治療効果および介入法の検討を行い、遺伝子診断を組み合わせた新しい診断法および診療ガイドラインの作成を目的としている。
研究方法
臨床情報の収集およびDNAバンクの構築
患者選定基準を満たす患者を対象に、十分な説明の上、書面で同意を得て臨床情報調査項目の調査を行った。また、遺伝子解析を行うための採血を行い臨床情報と併せてデータベースに登録しバンクの構築を行った。また日本人難聴患者に高頻度で見出される13遺伝子46変異に関しては、インベーダー法によりスクリーニングを実施した。また、頻度が高いGJB2、SLC26A4、KCNQ4、CDH23、TECTA、OTOF遺伝子に関して直接シークエンス法による解析を行った。また、奇形を伴う遺伝性難聴に関しては、SLC26A4、EYA1、NOG遺伝子変異の解析を行った。また、収集された症例の一部を対象に、難聴と関連することが報告されている原因遺伝子の全てのエクソン領域を次世代シークエンサーを用いて網羅的遺伝子解析を行った。

原因遺伝子による難聴のサブタイプ分類
原因遺伝子変異の明らかとなった症例を対象に、遺伝子変異の種類毎に臨床像のとりまとめを行い、難聴およびその他の臨床症状の特徴を明らかにするサブタイプ分類を行い、疾患の臨床的特徴と遺伝子変異の相関に関して詳細な検討を行った。

外リンパ瘻検出法の確立および臨床応用
従来、Western Blottingで外リンパ特異的タンパク質CTPの検出を行っていたが、より高感度で検出可能なELISA法を用いた検出法の検討を行った。また、分担研究機関を中心に臨床試験を行い検査の有効性に関する検討を行った。
結果と考察
臨床情報の収集およびDNAバンクの構築
全国の共同研究施設で臨床情報の収集およびDNAサンプルの収集を開始し当初計画の200例を超える300名のサンプル集積がなされた。また原因遺伝子解析に関しても効率的に進展しており、CDH23遺伝子、KCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、OTOF遺伝子の変異が見出され論文として報告した。また、中耳奇形を伴う難聴の原因であるNOG遺伝子変異を見出し報告した。さらに、次世代シークエンサーを用いた難聴遺伝子の網羅的解析により約70%より原因遺伝子変異が見出される事を明らかにし報告を行った。

サブタイプに応じた適切な介入法に関する研究
遺伝子変異が見出された症例を対象に、その臨床情報の取りまとめを行った。その結果、CDH23遺伝子変異では、進行性の感音難聴を呈するケースが多く、また低音部分に残存聴力を有するケースが大部分を占める事が明らかとなった。また、KCNQ4遺伝子変異による難聴では高音障害型の難聴を呈する場合が多いが、障害部位により皿形の難聴を呈するケースがある遺伝子型―表現型の相関がある事を明らかにした。

ELISA法による高感度外リンパ瘻検出法の確立および臨床応用
ELISA法を用いた高感度外リンパ瘻検出法の確立を目的に、外リンパ瘻確実例と対象群の合計97検体を用いてROC曲線による解析を行い、カットオフ値の検討を実施した。また、株式会社SRLとの共同研究により226例の臨床試験を行った。
結論
本研究により300名を超える遺伝性難聴患者の臨床情報およびDNAサンプルの集積を行うことができた。また、原因遺伝子解析に関しても効率的に進展しており、CDH23遺伝子、KCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、OTOF遺伝子変異を明らかにし報告することができた。また、中耳奇形を伴う難聴の原因であるNOG遺伝子変異を見出し報告を行った。さらに、次世代シークエンサーを用いた難聴遺伝子の網羅的解析により遺伝性難聴の70%より原因遺伝子変異が見出される事を明らかにし報告を行った。また、外リンパ漏を検出する新しい検査手法として、ELISA法を用いた内耳特異的タンパク質CTPの検出に関する臨床応用に関する検討を行い、検査の感度・特異度を明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231133Z