急性網膜壊死の診断基準に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231131A
報告書区分
総括
研究課題名
急性網膜壊死の診断基準に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-030
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
望月 學(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 高瀬 博(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 後藤 浩(東京医科大学 眼科)
  • 岡田 アナベル あやめ(杏林大学 眼科)
  • 大黒 伸行(大阪厚生年金病院 眼科)
  • 水木 信久(横浜市立大学 眼科)
  • 園田 康平(山口大学 眼科)
  • 南場 研一(北海道大学 眼科)
  • 冨田 誠(東京医科歯科大学 臨床試験管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性網膜壊死は単純ヘルペスウイルス (HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス (VZV) が網膜に感染する事で発症する壊死性網膜炎で、失明に至る予後不良な疾患である。本症の疾患概念は今日では広く知られる様になったが、その稀少性から診断に苦慮する事も多く、未だ予後不良症例が多数存在する難治疾患である。そのため、本症の早期診断を容易にするための診断基準および治療ガイドラインの作成が急務である。本研究の目的は急性網膜壊死の診断基準を作成する事である。
研究方法
今年度は、初年度に作成した急性網膜壊死の診断基準の妥当性を本研究班員の施設(東京医科歯科大学眼科、東京医科大学眼科、杏林大学眼科、大阪厚生年金病院眼科、横浜市立大学、山口大学眼科、北海道大学眼科)の急性網膜壊死患者と対照疾患患者において後方視的に検証し、診断基準とそれを構成する項目の感度と特異度を解析し、診断基準の精緻化をおこなった。
結果と考察
急性網膜壊死患者38名、対照疾患患者266名のデータを解析した。対照の内訳は、サイトメガロウイルス網膜炎25名、眼トキソプラズマ症39名、サルコイドーシス122名、ベーチェット病40名であった。これらの患者の最終確定診断名および臨床所見のデータに基づいて、初年度作成の急性網膜壊死の診断基準の診断パラメータを算出した。その結果、急性網膜壊死の確定診断群(眼内液によるウイルス診断が陽性のもの)の感度は57.9%、特異度100%、陽性診断率 100%、陰性診断率 94.3%であった。ウイルス検査結果を考慮しない場合の臨床診断群の診断パラメータは感度52.6%、特異度100%、陽性診断率 100%、陰性診断率 93.7%であった。これらの結果から初年度作成の診断基準の感度が低いものである事が分かった。さらに、各項目の診断パラメータを検討した。その結果、初年度作成の診断基準において必須項目のうち、「1a. 前眼部に中等度以上の前部ぶどう膜炎、または豚脂様角膜後面沈着物がある」の感度は89.5%であり、「2a. 病巣は急速に円周方向に拡大する」の感度も65.8%と低いものであり、これらが診断基準の感度を低下させる主因と考えられた。他の診断パラメータに影響を与えない範囲での診断基準の改定が必要と考えられた。
以上の結果を踏まえて、初年度作成の診断基準の改定を行った。まず、初期眼所見項目の「1a. 前眼部に中等度以上の前部ぶどう膜炎、または豚脂様角膜後面沈着物がある」から「中等度以上の」の条件を削除し、「1a. 前眼部に前部ぶどう膜炎、または豚脂様角膜後面沈着物がある」とした。また、経過項目の「2a. 病巣は急速に円周方向に拡大する」を診断確定のための必須項目から外した。その結果、改定診断基準の確定診断群の感度は65.8%から92.1%に上昇し、しかし特異度は100%に保たれていた。臨床診断群の感度も57.9%から86.8%に上昇し、特異度は100%に保たれた。
これらの結果を踏まえ、平成24年度第2回班会議において「急性網膜壊死の診断基準」の最終案を確定した。
結論
感度と特異度の高い急性網膜壊死診断基準が作成された。

公開日・更新日

公開日
2013-05-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231131Z