希少難治性筋疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231129A
報告書区分
総括
研究課題名
希少難治性筋疾患に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-028
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林 由起子(国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第一部)
  • 小牧 宏文(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科)
  • 高橋 正紀(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 平澤 恵理(順天堂大学大学院医学系研究科老人性疾患病態治療研究センター 脳神経内科・神経内科)
  • 大野 欽司(名古屋大学 大学院医療系研究科)
  • 杉江 和馬(公立大学法人 奈良県立医科大学 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
65,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成21年度から設立された厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業の研究奨励分野によりこれまで同事業としては対象になっていなかった多くの希少難治性筋疾患の調査研究が開始された。本研究はこれまでの研究奨励分野での成果を元に、希少難治性筋疾患を1.周期性四肢麻痺、非ジストロフィー性ミオトニー症候群といった筋チャネル病やSchwartz -Jampel症候群(SJS)などの細胞膜興奮伝達障害による「筋シナプトパチー・チャネロパチー」2.Danon 病や過剰自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチーなどの「自己貪食空胞性ミオパチー」(AVM)ならびに3.封入体筋炎の3群に大別して診断基準の確定および関連学会での承認、診療ガイドラインの作成を行う。さらにはこれらによる新たな患者登録、患者検体の集積およびそれを利用した解析研究、治療法の開発を行う。またこれまでに研究奨励分野に取り上げられなかった4.先天性ミオパチーについても全国調査による本邦における患者数の把握などによって診断基準の作成を目指す。最終的には本邦で報告されている希少難治性筋疾患の全ての疾患を研究対象とする。
研究方法
これまでの研究実績を元に1.周期性四肢麻痺、非ジストロフィー性ミオトニー症候群といった筋チャネル病やSchwartz -Jampel症候群(SJS)など、細胞膜興奮伝達障害による「筋シナプトパチー・チャネロパチー」2.Danon病や過剰自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチーなどの「自己貪食空胞性ミオパチー」(AVM)ならびに3.封入体筋炎の3群に大別して研究を行う。さらに4.先天性ミオパチーについても研究対象に追加し解析を行う。診断基準の確定、関連学会での承認:平成23年度までに各奨励研究班で行った全国調査やそれに基づき作成した診断基準を確定する。その後、日本神経学会・日本小児神経学会等にこれらの診断基準を提出して学会診断基準として承認を受ける。診療ガイドラインの策定:全国調査の二次調査票の集計結果より、これまで施行された治療方法を整理して、現状で最適な診療ガイドライン作成を行うべく検討を行う。患者検体の収集および分子病態の解析: 新たな診断基準に基づき患者登録、患者検体の集積およびそれを利用した解析研究を継続する。次世代シークエンサーによる解析を行い、新たに同定された遺伝子変異について培養細胞やツメガエル卵母細胞、マウスモデルを用いた解析を行う。筋チャネル病患者由来iPS細胞の樹立が確認できたため、病態研究・治療薬スクリーニングにむけての準備を行う。
結果と考察
診断基準の確定、関連学会での承認:平成23年度までに各奨励研究班で行った全国調査やそれに基づき作成した診断基準を確定した。日本神経学会・日本小児神経学会に対してこれらの診断基準を提出して学会診断基準として承認を受けた。これらの成果により臨床的には疾患の認知度を高め、正確な診断に至る症例が増えると考えられ、また将来臨床試験を行う際に適切な症例を選択することが可能となるため、その意義は高い。診療ガイドラインの策定:全国調査の二次調査票の集計結果より、これまで施行された治療方法を整理して、現状で最適な診療ガイドライン作成を行うべく引き続き検討中である。患者検体の収集および分子病態の解析:筋チャネル病疑いの約30症例の遺伝子解析を研究協力者と施行した。次世代シークエンサーによる全エクソーム解析と、それに引き続くチャネルの機能解析により、Andersen-Tawil症候群のあらたな原因遺伝子の同定と、Schwartz -Jampel症候群(SJS)を疑う症例にパールカンをコードする遺伝子に変異を確認した。自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)の臨床病態について臨床病理学的および遺伝学的解析を行い、世界で初めて診断基準を作成し、本邦で初めての疫学調査によるAVM患者の実態調査を行った。各臨床病型により重症度や発症年齢、合併症、生命予後は大きく異なることを明らかにした。
結論
診断基準の作成については各対象領域で作成することができた。診療ガイドラインに関しては、前項調査等を通じてその妥当性について検討を続ける。先天性ミオパチー全体ならびに各病型の頻度については,NCNP骨格筋レポジトリーのデータを分析することで明らかにすることができた。病因解析、画像解析は当初の研究計画通り順調に進んでいる。患者検体の収集、次世代シークエンサーを用いた解析に関しても一部疾患ですでに開始しており、当初の目標通り、順調に進んでいる。今後も継続して前向き調査での病態解明や患者数把握が必要である。同時に診断基準の精度についても検証していく。さらにモデルマウスの開発や患者血清・筋サンプルを用いた病態解明を行っていく。公費負担を含めた社会的支援も必要と考える。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231129Z