自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立

文献情報

文献番号
201231127A
報告書区分
総括
研究課題名
自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立
課題番号
H24-難治等(難)-一般-026
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
平家 俊男(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 西小森 隆太(京都大学大学院医学研究科発達小児科学)
  • 中畑 龍俊(京都大学iPS細胞研究所)
  • 斎藤 潤(京都大学iPS細胞研究所)
  • 原 寿郎(九州大学大学院医学研究院)
  • 横田 俊平(横浜市立大学発生成育小児医療学)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院小児病態学)
  • 井田 弘明(久留米大学内科)
  • 神戸 直智(千葉大学大学院皮膚科)
  • 金澤 伸雄(和歌山県立医科大学医学部・皮膚科)
  • 上松 一永(信州大学医学研究科感染防御学)
  • 谷内江 昭宏(金沢大学医薬保健研究域医学系小児科学)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学小児科学)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校小児科)
  • 武井 修治(鹿児島大学医学部保健学科)
  • 小原 收(理研免疫アレルギー科学総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自己炎症疾患とは、周期性発熱を主症状とする遺伝性疾患であり、主として自然免疫系関連遺伝子変異により発症する。また遺伝子異常が同定されていないが、同様の炎症病態が推測されている疾患群として広義の自己炎症疾患が存在する。これらの疾患は、その臨床症状の類似性により、診断・鑑別に難渋する。さらに病態解明が不十分であり、標準的な治療が定まっていない疾患群が多数存在し、病態解明それに基づく治療ガイドラインが求められている。上記の疾患におけるunmet needsを解決する具体的方策として、1)自己炎症疾患およびその類縁疾患の診断体制の整備・開発、2)患者登録の導入による長期的な患者予後調査システムの構築、3)各疾患診療ガイドラインの作成、4)分子標的薬、遺伝子治療の可能性を含む新規治療開発の基盤形成、を行う。
研究方法
自己炎症疾患は、その類縁疾患を含めて現時点ではその類似性により鑑別診断が困難で有り、確定診断として遺伝子解析が有用である。従来、遺伝子検査は、理研と厚労省原発性免疫不全症研究班が運営するPIDJ(Primary Immunodeficiency Database in Japan)においてサンガー法で行ってきた。しかし、需要増大に対して、対応困難な状況となった。これを受け、マルチプレックスPCR法+次世代シークエンサー法による新規の遺伝子解析システムを整備する。併せて、各自己炎症疾患の診療ガイドラインを作成し、診断に加えて治療、重症度判定において標準手順を策定し、より効率的な医療資源の活用を実現する。また、希少疾患であるがため、疾患の長期予後に関する取り組みは皆無である。各患者の現状及び長期予後の把握のため、患者登録システム整備し、これをもとに治療ガイドラインのブラッシュアップ、早期診断、早期適切な治療開始を実現することにより、合併症頻度の低減、程度の軽減が目指す。さらに長期フォローによる治療効果・合併症の把握により、治療介入による効果・問題点の把握が遅滞なく行われる。また本邦未承認薬、適応未承認薬については、その必要性を検討し、治験・臨床研究へ結びつける。さらに疾患特異的iPS細胞等の手法を用いた病態解析を行うことにより、新規治療法の開発の基盤形成につなげる。
結果と考察
本研究での具体的計画として、1)自己炎症疾患およびその類縁疾患の診断体制の整備・開発、2)患者登録の導入による長期的な患者予後調査システムの構築、3)各疾患診療ガイドラインの作成、4)病態解析、治療基盤の確立、の提示を行った。
1)については、マルチプレックスPCR法+次世代シークエンサー法を用い、自己炎症疾患に対する多疾患一括遺伝子解析基盤確立を行った。現在は、同手法が稼働することのバリデーションを行った段階であるが、この方法を運用することにより、自己炎症疾患の診断の精度、迅速性が担保されることになり、治療選択においても重要な情報を提供できる。
2)については、平成24年度において、冊子ベースでの患者登録を、パイロットスタディとして行った。この患者登録における設問は、EUで稼働している自己炎症性疾患踏力事業(Eurofever)と、相互にデータ照会が可能なフォーマットをとっている。平成24~25年度には、このフォーマットの整合性の有無を多方面の観点から検証し、改訂版を作成する。平成25年度には、これをWEBベースに移行し、順次全症例登録を目指すことにより、精度の高い登録システムが構築できる。
3)については、各自己炎症性疾患に対する診療ガイドライン素案作成を行った。この診療ガイドラインは、①疾患概要、②診断フローチャート、③治療フローチャートの型式に統一するため、各疾患の比較対照が容易であり、その臨床症状の類似性により診断・鑑別に難渋する場合が多い中、使用しやすいな診療ガイドラインを目指している。今後、エビデンスに基づく治療選択の明示等、ブラッシュアップを行い、典型・非典型症例集を追加して、より使用しやすい診療ガイドラインを目指す。
4)我々が診療している高IgD症候群に対して、臨床応用として、アナキンラ使用を開始した。希少疾患であるという制約の中、高IgD症候群に対する抗IL-1製剤の効果を把握し、高IgD症候群に対する治療方法確立を目指す。また、自己炎症性疾患iPS細胞作製も、順調に進展している。また、病態発症組織としての造血組織、軟骨組織への分化系も確立しており、今後、更なる病態解明、それを基にした治療薬開発が期待できる。
結論
平成24年度に設定した研究目標は、全項目においてほぼ達成できた。さらに、定義が明確でない自己炎症類似疾患のエクソーム解析においては、最初の解析例において候補遺伝子を絞り込むことができ、成果を前倒しできている。

公開日・更新日

公開日
2013-04-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231127Z