原発性免疫不全症候群患者支援団体による患者レジストリの構築を通した研究支援体制の構築に関わる研究

文献情報

文献番号
201231123A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性免疫不全症候群患者支援団体による患者レジストリの構築を通した研究支援体制の構築に関わる研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-022
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
今井 耕輔(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科小児・周産期地域医療学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校 小児科)
  • 宮脇 利男(富山大学小児科)
  • 原 寿郎(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野)
  • 小原 收(公益財団法人かずさDNA 研究所ヒトゲノム研究部門)
  • 佐藤 弘樹(防衛医科大学校病院医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2006年から原発性免疫不全症に関する調査研究班(PID調査研究班)である国内13大学は、理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究センター(RCAI)、かずさDNA研究所(KDRI)とを結んだ免疫不全症の診断のための全国規模のネットワーク(PIDJネットワーク)の構築に携わってきた。2008年にPIDJデータベースを理研RCAIに設置し、一般医がデータベースに直接入力することによりPID専門医への「電子紹介状」となり、PID研究班施設、RCAIでの機能解析、KDRIでの遺伝子解析を通して、正確な診断と一般医への助言が可能となる仕組みである。本調査研究班は、PID患者支援団体NPO法人PIDつばさの会により個人電子医療記録機能を持つ患者レジストリ"Pier":Primary immunodeficiency electronic recordを構築し、患者情報、病歴、治療経過に関する情報を、既存のPIDJネットワークに提供することで、効果的な診療に役立て、研究を加速し、患者の予後を改善することを目的とした。
研究方法
本研究班では、患者および患者家族が、症状の経過、検査データや治療、生活の様子を記録し、自己管理するために利用可能な個人電子医療記録機能を持つ患者レジストリPierを KDRI内のセキュアサーバー上に新たに構築した。
既存のPIDJデータベースと連携する方法についても平行して検討した。
結果と考察
患者、主治医、PID調査研究班、基礎研究者からのニーズを聞き取り、必要な機能の選定を行い、委託業者により個人電子医療記録機能を持つ患者レジストリ”Pier”の構築を行い公開を開始した(http://pier.kazusa.or.jp/pier/jsp/)。公開後、PID患者支援団体「PIDつばさの会」の患者理事らとの会合により、患者や患者家族が感じている現状の問題点やニーズを調査し、個人電子医療記録Pierにより解決できる課題点を整理した。Pierにおいて記載が必要な項目(検査結果、日常生活の記録など)や画面表示機能(時系列表示など)についても精査し、プロトタイプのPierを作成した。その結果、短い診察時間では、詳細な情報を患者側から医療側へ十分に伝えることが難しく、情報の重要性の認識も患者側と医療側で大きく異なることもあることが改めて示された。患者とその家族において、日常の生活の記録を管理したいというニーズのみならず、患者同士での症状や生活の工夫などについての意見交換や交流の場として、掲示板機能への期待も高いことが明らかとなった。Pierにはプロフィール、症状、検査結果、感染症、治療に関する情報を記録する機能を実装した。血圧や体温などについては経時的なグラフ表示など、視覚的な理解を助ける工夫を設けた。患者から同意が得られた場合、ID・パスワードが、PIDつばさの会事務局より発行される。これにより通常のインターネットブラウザ(スマートフォン・タブレット端末を含む)を介して、かずさDNA研究所に設置されたセキュアサーバー内のPierレジストリに登録し、その機能を利用することが可能となる。各患者本人(あるいは家族)に閲覧を許可されたPierユーザー(患者)、主治医、PID調査研究班施設医師が閲覧可能であるが、IDを持っていない一般人からは閲覧できない。匿名化したデータについては、統計解析等に利用可能である。今年度は、東京医科歯科大学倫理委員会にて、審議、承認(平成24年12月25日)を受けた後、PIDつばさの会(会員数140名前後)を通じて、登録を呼びかけたが、構築準備に時間がかかったこと、修正の必要な部分があることから、登録は限定的であった(約25例)であった。PIDJ構築時に得られている全国のPID患者約2200例に対しては、次年度に主治医を通して、Pierへの登録・利用を呼びかける予定である。記載された臨床情報の統計解析、PIDJとの連携や、Pierの継続的な維持発展に向けた環境作り、Pierを生かしたアンケート調査事業等への応用についてはこれからの検討事項である。
結論
全国のPID患者が把握できる質の高いデータベースが構築できた。今後はPierに登録されたデータについても適宜解析し、原因探索も進めることで、主治医とともに患者のQOL向上、治療の一助とする情報基盤として活用していきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231123Z