患者支援団体等が主体的に難病研究支援を実施するための体制構築に向けた研究

文献情報

文献番号
201231122A
報告書区分
総括
研究課題名
患者支援団体等が主体的に難病研究支援を実施するための体制構築に向けた研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-021
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 建雄(一般社団法人日本難病・疾病団体協議会)
研究分担者(所属機関)
  • 森 幸子(一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 理事会)
  • 永森 志織(NPO法人難病支援ネット北海道 )
  • 森田 瑞樹(NPO法人知的財産研究推進機構(PRIP Tokyo))
  • 荻島 創一(NPO法人知的財産研究推進機構(PRIP Tokyo))
  • 荒牧 英治(東京大学知の構造化センター)
  • 西村 邦裕(NPO法人知的財産研究推進機構(PRIP Tokyo))
  • 安念 潤司(NPO法人知的財産研究推進機構(PRIP Tokyo))
  • 有馬 隆博(東北大学大学院医学系研究科産婦人科学)
  • 森崎 隆幸(独立行政法人国立循環器病研究センター分子病態学)
  • 鈴木 登(聖マリアンナ医科大学臨床免疫学)
  • 森 まどか(独立行政法人国立精神・神経センター病院神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,326,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
いわゆる「難治性」疾患の数は,5000とも7000ともいわれている。そのうち,国の難病対策で難治性疾患等克服研究の対象となっている疾患は,2012年現在,300にすぎず,研究奨励分野で研究が取り組まれている疾患は,この3年間でおよそ300余にすぎない。すべての疾患が研究の対象とされていない状況下で,研究の推進にあたって患者団体等が自ら研究の協力体制を構築することは極めて重要な課題であるといえる。しかし,実際には患者団体等は、研究開発に対する主体的貢献をほとんど行っていないのが現状である。そこで,本研究において、患者および患者支援団体等が研究・開発促進に向けて主体的かつ継続的に関わることのできる体制構築について検討を行うこととした。
研究方法
研究グループを3つに分けて実施した。①国内の患者団体の研究協力に関する意識調査及び難治性疾患等克服研究事業研究班における患者協力に関する意識調査(郵送によるアンケート調査等),②欧米における患者団体等の研究協力体制に関する調査(対面ヒアリング調査もしくはウェブアンケート調査等),③稀少難治性疾患の患者レジストリの構築(レジストリの構築,アンケート調査,文献調査等)
結果と考察
国内患者会調査について:研究協力する際に必要と思われるサポートは,成果報告が最も重要で,次いでコミュニケーション,丁寧な説明,費用の負担であることが明らかになった。患者会への適切な支援と事前事後の丁寧な説明,報告等を充実させることで,患者会と研究者の協力関係をより良いものにすることができると考えられる。また,患者会,研究班の認識について比較したところ研究協力内容や満足度について相違があり,その原因は研究そのものへの理解不足やコミュニケーション不足であると考えられる。
海外患者会調査について:日本国内協議会以外のすべての協議会は創薬開発までを含めて研究促進・支援活動を実施しており,専門職などを対象とした教育プログラムの作成・提供も行っていた。研究貢献活動を行っている個別患者会のなかには助成をするだけでなく成果を披露する学会の開催など研究者のモチベーションをとぎれさせないための工夫が随所になされている事例があり,国内患者会で研究貢献活動を実施するうえで参考になるといえる。
患者レジストリの構築について:既存の患者レジストリの調査やレジストリに関する文献調査等,実際のレジストリの構築を通じて,患者レジストリの運用について,患者のプライバシーへの配慮のあり方(利用目的を明確化したうえでの同意の取得),研究成果の帰属のあり方(データ提供者である患者,データ管理者であるレジストリ運営者の貢献と最終的な利益の配分との関係の整理)継続性の確保(運用資金の確保やデータ入力継続のインセンティブ確保),他のレジストリとのデータ連携(入力項目の共通化)などが課題として明らかになった。また,マルファン症候群,再発性多発軟骨炎,遠位型ミオパチー,シルバー・ラッセル病の4疾患をモデルとして実際のレジストリの構築を開始した。各疾患共通の収集項目として基本健康情報(体重,血圧などの健康記録,痛みや疲労感などの主観評価),臨床検査データ,健康診断データ等が収集項目として整理された。
結論
患者団体等が主体となった研究協力体制の構築は,資金不足や経験不足等により進んでいないことが明らかになった。今後,患者側の研究への理解を深め,研究協力体制構築を支援するためにも,「研究協力ガイドライン」の作成が必要である。患者団体等によるレジストリは,本研究で浮き彫りになった課題の克服が必要である。とりわけ,他のレジストリとの連携に関する研究が喫緊の課題である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231122Z