疾病中心から患者中心の希少難治性疾患研究を可能とする患者支援団体と専門家集団とのネットワーク構築

文献情報

文献番号
201231120A
報告書区分
総括
研究課題名
疾病中心から患者中心の希少難治性疾患研究を可能とする患者支援団体と専門家集団とのネットワーク構築
課題番号
H24-難治等(難)-一般-019
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
福嶋 義光(信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松原洋一(東北大学 )
  • 野村文夫(千葉大学)
  • 斎藤加代子(東京女子医科大学)
  • 高田史男(北里大学)
  • 小杉眞司(京都大学)
  • 玉置知子(兵庫医科大学)
  • 櫻井晃洋(信州大学)
  • 関島良樹(信州大学)
  • 涌井敬子(信州大学)
  • 加藤光広(山形大学)
  • 小泉二郎(NPO法人希少難病支援事務局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
11,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,希少難病患者支援事務局(SORD),遺伝子医療(遺伝カウンセリング)部門,遺伝学的検査部門,拠点研究班,およびその他の研究班など,希少難治性疾患研究の推進に必要な部門間の有機的連携ネットワークシステムを構築し,すべての領域にわたる難治性疾患の研究を推進させるための基盤を構築することである.
研究方法
NPO法人希少難病患者支援事務局(SORD)<http://www.sord.jp/>は希少難病患者・家族間のコミュニティー形成,および希少難病の研究推進を目的に2008年に設立された非営利団体で,全国にいる希少難治性疾患患者の参加を促している.SORDには難治性疾患克服研究事業の対象になっていない希少難治性疾患患者がすでに300名以上登録されている.
SORDで既に開発した患者情報登録システムに,研究支援の側面をもたせた研究アンケート機能を新たに加え,患者自身が研究参加への意思表示,患者自身が抱える要望や問題点について,記載・登録ができるように整備する.SORDに登録された患者情報を臨床診断支援グループが検討し,研究対象候補を抽出し,他の研究班または拠点研究班に解析を依頼する.研究を実施する際に必要となるインフォームドコンセントの取得,患者の個人情報管理,および患者と主治医との連絡をSORDが行う.市民フォーラム開催,HPなど様々な広報活動を行い,登録患者数を増加させる.
結果と考察
「研究・災害手帳」のシステム開発を行った.SORDに登録された355例の患者情報を検討し,より詳細な診断支援の可能性があるもの,および研究対象候補となりうる可能性のある9疾患(群),25例を抽出した.そのうち,7例(責任遺伝子未解明の同一骨系統疾患3例,同一小児神経疾患2例,先天奇形症候群1例,未診断1例)について,SORDを介し,患者の研究協力についての考え方・希望,および患者の主治医の情報を得る段階に入っている.責任遺伝子未解明の同一の骨系統疾患3例については,拠点研究班の了解が得られ,SORDおよび患者主治医を介して,患者・家族からのインフォームドコンセントの取得,および検体採取が近日中に行われることになっている.
国際的には,5000~7000種類も存在するといわれている希少難治性疾患のうち,少なくとも70%程度は遺伝子の変化によるものである.現在,難治性疾患克服研究事業に採択されている疾患は,約300程度であり,網羅的に希少難治性疾患の研究を推進するには限界がある.従来の研究事業では採択されていない疾患や未分類の疾患の研究を推進させるためには,支援団体の協力を得て,希少難病患者の臨床情報を収集し,臨床的診断を支援し,既知の疾患ではないことを従来の遺伝学的検査により否定した上で,次世代遺伝子解析装置による解析・研究に移行させるネットワーク構築は,極めて有効である.
結論
患者支援団体,臨床診断支援グループ,遺伝子医療部門,遺伝学的検査部門,拠点研究部門,等の連携を図るネットワークシステムを構築し,運用を開始した.このネットワークの推進により,未診断例や未採択疾患を含め全ての希少難治性疾患の研究が進むことが期待される.

公開日・更新日

公開日
2013-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231120Z