先天代謝異常症に対する移植療法の確立とガイドラインの作成に関する研究

文献情報

文献番号
201231115A
報告書区分
総括
研究課題名
先天代謝異常症に対する移植療法の確立とガイドラインの作成に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 俊一(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 足立 壮一(京都大学医学研究科)
  • 飯田 美奈子(愛知医科大学 医学部)
  • 猪股 裕紀洋(熊本大学大学院生命科学研究部)
  • 上本 伸二(京都大学医学研究科)
  • 遠藤 文夫(熊本大学大学院生命科学研究部)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター)
  • 笠原 群生(国立成育医療研究センター)
  • 加藤 剛二(名古屋第一赤十字病院 小児血液腫瘍科)
  • 小林 博司(東京慈恵会医科大学 DNA医学研究所)
  • 酒井 規夫(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 新開 真人(神奈川県立こども医療センター 外科)
  • 田中 あけみ(大阪市立大学大学院 医学研究科)
  • 田渕 健(都立駒込病院 小児科)
  • 辻 省次(東京大学医学部附属病院 神経内科)
  • 麦島 秀雄(日本大学 医学部)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部)
  • 八幡 崇(東海大学 医学部)
  • 渡邊 順子(久留米大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
56,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天代謝異常症の根本的な治療としては欠損している酵素の定期補充療法と造血細胞移植や臓器移植などの移植療法がある。本邦においては1983~2010年の期間に約220例の造血細胞移植、1990~2009年の期間に約180例の肝臓移植が実施されているが、疾患別の治療法や治療効果についての詳細な解析は十分には行われていない。本研究においてはわが国における先天代謝異常症に対する移植療法について全国的な規模による調査研究と多施設共同研究を行うことを目的とした。
研究方法
本研究においてはわが国における先天代謝異常症に対する移植療法について全国的な規模による調査研究と多施設共同研究を行った。
① 移植症例の詳細調査(後方視的研究)
② 造血細胞移植における移植方法の統一と前向き登録による臨床研究(前方視的研究)
③ 移植ネットワークの構築
④ 移植による治療効果の評価と評価医療機関のネットワーク構築
⑤ 関連学会や他の研究組織と共同で移植治療と評価方法に関するガイドライン作成
⑥ 新しい細胞治療法開発のための基礎研究(iPS細胞など)
⑦ 海外の移植情報の収集と国際共同研究への参加
結果と考察
① 先天代謝異常の診断と治療効果評価のためのネットワーク構築
関連する日本先天異常学会との有機的な連携により、同学会のガイドライン策定委員会の協力のもとに肝移植の対象疾患の診断基準作成を行った。この基準策定に参加した専門医によるネットワークの構築に着手し、順調に進捗している。
② 先天代謝異常症に対する造血細胞移植ならびに肝移植症例の後方視的調査研究
関連する日本造血細胞移植学会、日本肝移植研究会の協力のもとに、先天代謝異常症に対する造血細胞移植と肝移植症例の一次調査を円滑に開始した。わが国における移植に関する本格的な実態調査として極めて意義のあるものであり、一次調査を踏まえた二次調査と併せて今後のガイドラインの作成や行政面での活用が期待できるものと考える。
また、Duke大学のKurtzberg教授との意見交換は国際的にみても希少疾患である先天代謝異常症に対する造血細胞移植の情報共有という点で極めて有用であった。
③ 先天代謝異常症に対する前方視的臨床研究
厚生労働省による臨床研究に関する倫理指針を遵守して前方視的臨床研究を進める場合には、研究計画立案から倫理審査までにそれぞれ数ヵ月以上の期間が必要である。 Treosulfanを用いた造血細胞移植の臨床研究においては、研究計画に十分な時間をかけ慎重に行った。
④ 対象疾患の患者会フォーラムの開催と国際交流
先天代謝異常症のような遺伝性希少疾患においては、疾患を有する患者とその家族への情報提供による早期診断と早期治療の推進が重要となる。本研究班と密接に関連する奥山班と合同で患者会フォーラムを開催し、国内のみならず国際的なネットワークを構築することができたことは、学術的にも社会的にも極めて意義深いものと考える。
また、2012年6月にオランダで開催された第12回国際ムコ多糖症と関連疾患に関する国際シンポジウムに参加し、わが国におけるムコ多糖症Ⅱ型への造血細胞移植の成績を発表するとともに、欧米の研究者と学術的な交流を行った。同シンポジウム期間中に開催された国際的な患者会にわが国からの患者家族が参加するための支援を行った。今後アジア地区における日本の果たすべき役割は大きく、継続的に協力を行っていくべきものと考えている。
⑤ 臨床試験支援システムの構築
後方視的調査研究(造血細胞移植)については田渕研究分担者が日本造血細胞移植学会ならびに日本小児血液・がん学会の登録業務の中心となっていることから、円滑に支援システムを構築できた。
また肝移植においても日本肝移植研究会の登録事務局(大阪大学外科)との連携が円滑に進められ、笠原研究分担者を中心にして研究が進行している。
前方視的臨床研究については、この分野で多数の実績を有するC-SHOTの全面的な協力により、飯田研究分担者を中心として支援システムを構築することができた。
結論
遺伝性難治性希少疾患である先天代謝異常症に対する移植療法の確立とガイドラインの作成を目的として、後方視的疫学調査研究、前方視的臨床研究、診療ネットワークの構築、ガイドライン作成の検討、海外の研究者との情報交換、該当疾患の患者会への情報提供、新しい細胞治療法開発のための基礎研究などを行った。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231115Z