リンパ脈管筋腫症に対するシロリムスの安全性確立のための医師主導治験

文献情報

文献番号
201231111A
報告書区分
総括
研究課題名
リンパ脈管筋腫症に対するシロリムスの安全性確立のための医師主導治験
課題番号
H24-難治等(難)-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中田 光(新潟大学 医歯学総合病院)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 義一(独立行政法人 国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター)
  • 瀬山 邦明(順天堂大学 医学部)
  • 赤澤 宏平(新潟大学 医歯学総合病院 )
  • 三嶋 理晃(京都大学 大学院)
  • 高田 俊範(新潟大学 医歯学系)
  • 西村 正治(北海道大学 大学院)
  • 服部 登(広島大学 医学部)
  • 久保 惠嗣(信州大学 医学部)
  • 渡辺 憲太朗(福岡大学 医学部)
  • 海老名 雅仁(東北大学 大学院)
  • 田澤 立之(新潟大学 医歯学総合病院 )
  • 三上 礼子(東海大学 医学部)
  • 中山 秀章(新潟大学 医歯学総合病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
178,960,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リンパ脈管筋腫症(LAM)は若年女性が罹患し、呼吸不全が進行する難病である。70%が気胸を経験し、36%が在宅酸素療法を受けている。90年代後半に発症機序が解明されて以来、シロリムスが治療薬として有望視され、米国でI/II相試験が行われ、呼吸機能の改善が示唆された。2006-10年まで第Ⅲ相試験として行われたMILES試験では、シロリムスはLAMの進行を防ぎ、病勢を安定させることが確認された。しかし、米国ファイザー社では、同薬の物質特許有効期間がほとんど残されていないことから、LAMに対する適用拡大をFDAに申請していない(現在検討中である)。患者の一部でシロリムスの個人輸入が始まっているが、肺臓炎などの重篤副作用が見逃される懸念があり、LAMの治療に習熟した治療拠点の確立も課題である。また、薬物濃度のトラフ値を測定し、用量を調節する必要もある。本事業では、シロリムスを2年間投薬する医師主導治験を実施する。その目的は、1.治験データをPMDAに報告し、薬事承認を得るとともに、2.シロリムスの長期投与の安全性を確立し、3.全国にLAM治療拠点を創ることである。
研究方法
本研究は、ファイザー社、ノーベルファーマ社、厚生労働省難治性疾患克服研究事業呼吸不全に関する調査研究班の支援を得て実施する多施設共同医師主導治験である。新潟大学医歯学総合病院に治験調整事務局をおき、全国9施設で統一プロトコールに基づいて行われる。以下に治験の体制と概要を示す。
1.治験体制 
治験調整委員会:プロトコールの立案、倫理申請、規制当局、製薬企業との連絡交渉を行う。調整医師:中田 光、井上義一、瀬山邦明、田澤立之、高田俊範、GCPアドバイザー:三上礼子 情報センター:新潟大学医歯学総合病院医療情報部 EDC作成、管理、データ解析:赤澤宏平 
治験調整事務局:新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センターに置く。
血清バイオマーカー測定(VEGF-D):近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター(責任者:井上義一) 治験実施施設:北海道大学病院、東北大学病院、順天堂大学病院、信州大学病院、京都大学病院、国立病院機構近畿中央胸部疾患センター、新潟大学医歯学総合病院、広島大学病院、福岡大学病院 受託臨床試験機関(CRO):調整事務局業務をサポートする。綜合臨床メディフィ 治験薬提供:ファイザー社
2.治験の概要
LAMと診断された18歳以上の女性患者に1日量2mgのシロリムス内服から開始し受診毎に薬剤血中濃度(トラフ値)を測定し、5-15ng/mlの範囲に収まるように薬用量を調節しつつ、2年間服薬する。コントロールは設けず、シングルアームオープン試験で実施する。受診日に血液検査、尿検査、尿妊娠検査、呼吸機能検査、アンケート調査を実施し、データはEDCを通じて新潟大学医歯学総合病院医療情報部に送信される。主要評価項目は、有害事象の頻度であり、副次項目として呼吸機能、QOL,血清VEGF-Dを測定する。治験期間は、2012年9月5日から2015年1月31日まで。


結果と考察
2012年6月29日に治験届をPMDAに申請し、7月に新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センター内に治験調整事務局を立ち上げた。7月14日に9施設の関係者を集めて、キックオフミーティングを行い、8月26日に4万5千錠のシロリムスを米国ファイザー社より輸入した。薬剤は新潟大学に一旦保管された後、参加施設に送付された。9月5日より、新潟大学、順天堂大学、近畿中央胸部疾患センターにおいて患者が登録され、ついで、10月11日より、北大、東北大、信州大、京大、広島大、福岡大が登録を開始し、2012年12月31日まで63例の被験者が登録された。現在順調に治験が進行しており、2013年4月26日までに388件の有害事象が報告され、うち、重篤有害事象は12件であった。付随研究として、10人の被験者に薬物動態調査を実施した。
 LAMの進行が非常に遅いことを考えると、シロリムスの長期投与によるQOLの改善や安全性は今後の課題であり、患者や医師にとって最も知りたいところである。また、MILES試験では、再発性気胸や進行性の乳糜胸水の患者は除外されたために、(患者のQOLを左右する)これら二大合併症に対するシロリムスの予防効果の検証は将来に持ち越された。本研究では、以上の点が明らかにされる可能性が高く、国内ばかりでなく、国際的に意義のある研究である。
結論
リンパ脈管筋腫症に対するシロリムス療法の安全性の確立を目的とする全国9施設共同医師主導治験を開始した。2013年8月に6ヶ月のデータをもって、ノーベルファーマ社が薬事承認申請し、2014年3月以降承認の見込みである。

公開日・更新日

公開日
2013-05-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231111Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
198,525,000円
(2)補助金確定額
198,525,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 53,529,200円
人件費・謝金 28,200,173円
旅費 4,568,907円
その他 92,662,026円
間接経費 19,565,000円
合計 198,525,306円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
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