結節性硬化症の皮膚病変に対する有効で安全性の高い治療薬の開発と実用化

文献情報

文献番号
201231109A
報告書区分
総括
研究課題名
結節性硬化症の皮膚病変に対する有効で安全性の高い治療薬の開発と実用化
課題番号
H24-難治等(難)-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
金田 眞理(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院 医学系研究科 )
  • 玉井 克人(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 濱崎 俊光(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 梅垣 昌士(大阪大学 臨床医工学 脳神経外科学)
  • 中村 歩(大阪大学 医学部附属病院 薬剤部)
  • 齋藤 充弘(大阪大学 医学部部族病院 未来医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
130,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
結節性硬化症(TSC)はmTORの活性化の結果、全身の過誤腫、精神発達遅滞、てんかん、自閉症などを呈する疾患で、ラパマイシン等のmTOR阻害剤が有効であるが、全身投与では副作用が憂慮される。そこで本症皮膚病変に対して安全性の高いラパマイシンの外用治療薬を開発し、薬事承認をめざした医師主導治験を行ない、有効な治療薬のないTSCの皮膚病変に対するラパマイシン外用薬の開発と実用化をめざす。
研究方法
 ラパマイシンの原薬(原薬GMP適合)を用いて我々が開発した方法で、GMPレベルを遵守する当院薬剤部でGMPレベルの外用薬を製造した。
 製造した各濃度のラパマイシン外用薬を製造時から製造4ヶ月後まで、1ヶ月ごとに、LC/ESI-MSシステムにてラパマイシンの濃度を測定し、その安定性を検証した。
 我々が新規開発した、臨床試験使用基剤より、さらに吸収がよい新基剤と、従来の基剤、及び内服薬の剤形変更による主剤と、非GLPレベルで、GMPレベルの原末を主剤とした外用剤について、培養モデル人工皮膚LSE-high(TESTSKINTM (TOYOBO)を用いて、真皮部分のラパマイシン濃度をLC/ESI-MSシステムで測定し、ラパマイシン外用薬の経皮吸収量を調べた。
 非GLPレベルで、ラパマイシン外用薬の毒性の検証のために、BALB/cマウスの皮膚に各濃度のラパマイシン外用薬を1日1回7日間塗布し、塗布後7日目まで、皮膚刺激の有無を観察し、同時にマウスの外用部皮膚の組織学的検討をおこなった。ラパマイシンの真皮内濃度、血中濃度をC/ESI-MSシステムでの測定し、血中への移行を検討した。
 非GLPレベルの毒性試験の結果をふまえて、GLPレベルの 1) 規格特性試験(安定性試験を含む)  2) 幼若ラット・1週経皮投与予備毒性試験 3) 幼若ラット・7週経皮投与毒性試験(TK付き) 4) ラット・経皮投与体内動態予備試験 5) ラット・13週+R6週経皮投与毒性試験(TK月付き)6) ラット吸収比較試験 7) モルモット・皮膚感作性試験 8) モルモット・皮膚光感作性試験 9) モルモット・皮膚光感作性補足試験10) 牛角膜を用いた眼刺激試験を施行した。
 PMDAの事前面談を経て、1) 稀少難治性疾患で患者数が少ないこと、2) 小児の割合が高いこと、 3) 臨床試験で血中への薬剤の移行が認められなかったこと、4) 特に小児に有効で、有害事象がなかったことを踏まえて, 外用薬の濃度を臨床試験で実施済みの0.2%までに変更し、小児を含む1,2相試験として治験実施計画書を作成した。
 ラパマイシンは海外では免疫抑制剤として承認済みで、ファイザーより外用薬の実用化の際に必要な内服薬の非臨床・臨床データの提供をうけた。それらとGLPレベルの前臨床試験のデータを併せて治験薬概要書を作製した。
 医師主導治験終了後の国内引き受け企業とLOIを締結した。
結果と考察
 製造したラパマイシン外用薬は製造4ヶ月目では肉眼的な変化はなく、ラパマイシンの濃度も実測値/理論値は95%~100%の間で、外用薬の安定性が確認できた。
 ラパマイシン原薬を用いた外用薬はラパマイシン試薬を用いた外用薬とほぼ同等の吸収量で、内服薬から製造した外用薬より、経皮吸収の効果がよかった。また、新基剤の外用薬は従来基剤より吸収がよいことが確認された。
 毒性に関しても、ラパマイシン原薬を用いた外用薬、及び新基剤の外用薬は内服薬からの剤形変更の外用薬、とほぼ同等で安全であることが確認できた。
 GCP基準の医師主導治験実施計画書と治験薬概要書を作製した。
 幼若ラット・7週経皮投与毒性試験(TK付き)の結果経皮吸収のよい新基剤では試験最低濃度でも、ラパマイシンの血中への移行が認められた。今回実験に使用したヘアレスラットは従来のラットより、経皮吸収がよいが、安全性を優先して従来の基剤の外用薬で医師主導治験を遂行することとした。
 医師主導治験終了後の国内引き受け企業と早期の契約締結をめざし、第Ⅲ相以降の企業への移行の準備を行う。
結論
TSCの顔面血管線維腫に対する、ラパマイシン外用薬の治験に必要な、治験実施計画書及び治験薬概要書を作成し、医師主導治験のための準備を整えた。今後PMDA対面助言、学内IRBの承認、治験届の提出を行い、医師主導治験の施行を目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-05-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231109Z