小児重症拡張型心筋症へのbridge-to-transplantation/recoveryを目指した骨格筋芽細胞シートの開発と実践

文献情報

文献番号
201231104A
報告書区分
総括
研究課題名
小児重症拡張型心筋症へのbridge-to-transplantation/recoveryを目指した骨格筋芽細胞シートの開発と実践
課題番号
H24-難治等(難)-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(国立大学法人大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮川 繁(国立大学法人大阪大学 医学系研究科)
  • 松山 晃文(国立大学法人大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
  • 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
124,584,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自己骨格筋芽細胞シートは、臨床研究として開発、成人虚血性心疾患を適応としてテルモ株式会社が引き受けて確認申請(当時)を取得、治験が実施される。一方、市場性が小さいために小児の拡張型心筋症のunmet medical needsは満たされていない。そこで本研究では、医師主導型治験により適応の拡大を図り、産業界の力を借りて幅広く小児拡張型心筋症の治療に資することを射程にいれる。特に本申請においては、小児に適応するために必須な幼若動物(ブタ)での非臨床不毒性試験・非臨床安全性薬理試験等を実施し、小児拡張型心筋症への適応拡大を図るための非臨床試験・品質試験を実施することを目的とする。
研究方法
1)幼若ブタ心不全モデル動物作成、骨格筋芽細胞シート移植と短期有効性検証
離乳早期幼若ブタを用い、骨格筋芽細胞シート移植の1カ月間の短期有効性に関して検証する。
2)非臨床急性・亜急性安全性試験パッケージの構築
成人を対象とした非臨床急性・亜急性安全性試験のパッケージは、テルモ株式会社が確認申請取得に用いたものが参考となる。小児に関しては、成長の過程にあるということ、生殖器の獲得の過程であることから、上乗せ試験が求められる。この点に留意して、パッケージ構築を行う。
3)cGMP対応の細胞培養システムの構築
製品標準書、製造手順書、製造指図書、製造記録書を策定にむけたデータ収集を行なうとともに、患者さんに投与する前のいわゆるcold runを開始、品質の検討を行う。
結果と考察
研究結果
1)幼若ブタ心不全モデル動物作成、骨格筋芽細胞シート移植と有効性検証
幼若ブタと成獣ブタ(生後8カ月)の筋芽細胞の性質を比較検討したところ、幼若ブタの筋芽細胞は、成獣の筋芽細胞と比較して、Sirt-1、Sirt-7といった抗アポトーシスシグナルを高発現しており、また、血管新生因子であるVEGFの発現も有意に高値であった。また、幼若ブタの筋芽細胞はスクラッチテストにて、成獣の筋芽細胞と比較して、増殖能が高く、Ki67陽性細胞も高値であった。
幼若ブタの前下行枝をカテーテルにて閉塞させ、心筋梗塞モデルを作成することが可能となった。自己筋芽細胞シートを4枚左室前壁から側壁に移植した。移植後は正常と同等の体重増加を認め、筋芽細胞を採取した部位の歩行障害も認めず、成長は順調であった。正常移植後1カ月、2ヶ月後での心機能検査では、駆出率、心拍出量の増加を認め、また、梗塞部位のdyssynchronyが是正されており、短期間での効果が確認された。
2)非臨床慢性安全性試験・体内動態試験併合試験パッケージの構築
単回移植慢性毒性試験と体内動態試験を併合試験にて1本の試験として実施可能となった。評価項目に関して検討を加え、パッケージを構築ができており、今後上記1)の幼若大動物試験に反映させる予定である。
3)cGMP対応の細胞培養システムの構築
すでにテルモ社で作成されているGMP基準を満たした筋芽細胞シートを本治験で使用する予定であり、製品標準書、製造手順書、製造指図書、製造記録書は作成されている。
4)小児を対象とした骨格筋芽細胞シート移植による臨床研究の申請・実施
小児心不全患者に対する自己骨格筋筋芽細胞シートの臨床研究プロトコールが大阪大学未来医療センターにて承認され、現在厚労省ヒト幹細胞委員会に提出され、ヒト幹細胞委員会にて承認された。今後臨床研究の実施を行う予定であり、本臨床研究の結果を参照しながら、治験を目的とした計画書、SOP、患者説明文書を作成し、治験を行う予定である。
考察
現在、GMP基準を満たす筋芽細胞シートを作成することが可能であり、小児心不全に対する筋芽細胞シートのPOCも獲得できている。また、本臨床研究はヒト幹細胞委員会に承認され、pilot studyとして数例の臨床研究が施行される予定である。臨床研究にて取得されたデータを還元し、適切なエンドポイント、治験プロトコールを探索し、それらの知見を反映させた医師主導型治験の計画書を作成する予定である。そして、最終的には医師主導型治験への移行を行う。
結論
本研究にて、小児心不全に対する筋芽細胞シートのPOCを取得でき、また、GMP基準を満たす筋芽細胞シートの使用も可能となっている。数例の臨床研究のデータを医師主導型治験に反映させ、良質な医師主導型治験を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231104Z