肝細胞増殖因子による筋萎縮性側索硬化症の新規治療法開発

文献情報

文献番号
201231103A
報告書区分
総括
研究課題名
肝細胞増殖因子による筋萎縮性側索硬化症の新規治療法開発
課題番号
H24-難治等(難)-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅田 隆太(京都大学医学部付属病院・探索医療センター・探索医療開発部)
  • 安達 喜一(クリングルファーマ株式会社 事業開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
172,951,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、神経難病の象徴的疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対して、わが国発の肝細胞増殖因子(HGF)を用いた治療法開発を推進する。本研究代表者らは、まずALS病変が生じる中枢神経系に薬物を効率よく送達できる髄腔内投与が可能なALSモデルラットを世界に先駆けて完成した。ついでALSラットにHGF蛋白を髄腔内持続投与した結果、顕著な治療効果が得られた。このHGF髄腔内投与によるALS治療法開発を念頭に、サルを用いて臨床用量の設定と安全性試験を実施、用いる医療器具と薬物動態の検査施設を選定、GMP基準の治験薬を製造、そして治験プロトコルの作成と治験の準備を着実に進めてきた。これらの研究成果をもって、ヒトにおける安全性と薬物動態を検証する第I相臨床試験の治験届を平成23年6月に提出、同年7月に東北大学治験審査委員会の承認を得て、現在実施中である。本研究は以上の成果を第II相試験に着実に進展させることを目的とし、研究期間内に第II相試験を開始することを目標とする。
研究方法
本研究では、HGFによるALS治療法開発を第II相臨床試験へと進めるために必須となる非臨床試験、原薬および治験薬製造、品質保証試験、そしてプロトコル開発を行う。(1) 非臨床試験:第II相試験ではHGF蛋白質を長期間髄腔内に投与することから、サルを用いて髄腔内投与による慢性毒性試験を行い、長期投与の安全性を確認する。本年度は予備試験と試験に必要な分析用試薬の調整を行う。また、生殖能や次世代の発生に関する安全性を評価するための生殖毒性試験を実施する。このため、ラットおよびウサギの血漿中HGFおよび抗HGF抗体のELISA測定法のバリデーションを実施し、胚胎児試験の予備試験を実施する。さらに、ALSを対象とする唯一の既存薬であるリルゾールとの薬物相互作用試験を行う。(2) 原薬・治験薬製造:カニクイザルによる慢性毒性試験に供するHGF蛋白質の原薬を製造する。また、治験薬の予備安定性試験を行う。(3) 品質保証試験:HGF原薬の品質を確認するための規格・分析試験として、逆相クロマトグラム試験、CDスペクトル試験、ペプチドマップ試験などを行う。(4) プロトコル開発等:第II相試験のプロトコル開発に着手し、併せてモニタリング・監査・データマネジメントの整備を進める。
結果と考察
(1) 非臨床試験:カニクイザルを用いた慢性毒性予備試験では、試験の実施に必要となるサル髄腔内へのカテーテル長期留置のための術式検討試験、投与ラインへの吸着性試験を終了し、予備試験を開始した。平成25年度も継続し、GLP試験に取り組む。生殖毒性試験では、毒性を評価する上で必要となるラットおよびウサギの血漿中HGFおよび抗HGF抗体のELISA測定法のバリデーションを行った。ウサギによる胚胎児試験(セグメント2)の予備試験を開始した。平成25年度はウサギ・ラットでGLP試験を実施する。リルゾールとの薬物相互作用試験では、条件検討のための予備試験を終了した。(2)治験薬製造:平成23年度までに製造した原薬で必要量をまかなえることになったため行わないこととした。一方、治験薬の予備安定性試験にて、第I相試験終了までの間、使用中の治験薬が十分に安定であることを確認した。(3) 品質保証試験として、逆相クロマト試験、CDスペクトル分析試験、ペプチドマップ試験などを行い、終了した。(4) プロトコル開発等:進行中の第I相試験のデータを集積しつつ、第II相試験のプロトコル検討を行った。第II相試験で一定の効果があり安全性が示されればオーファン医薬品として承認申請を前倒しできる可能性もあり、オーファン申請を含め医薬品医療機器総合機構と相談を予定している。また、医療従事者を追加で増員し患者からの問合せに迅速に対応しつつ、第II相試験を専任で担当できるように人材育成を行った。
結論
ALSを対象とする第II相臨床試験を開始するために必要となる非臨床試験および原薬・治験薬関連試験のうち、本年度に実施予定であった試験を概ね終了することができた。本年度の研究達成状況に鑑み、研究期間終了までに第II相試験を開始することは、十分に達成可能と考えられる。平成25年度は引き続き各種試験を遂行し、現在実施中の第I相試験を終了した後に、すみやかに第II相試験に移行できる体制を整える。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231103Z