スモンに関する調査研究

文献情報

文献番号
201231101A
報告書区分
総括
研究課題名
スモンに関する調査研究
課題番号
H23-難治-指定-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小長谷 正明(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤木 直人(独立行政法人国立病院機構北海道医療センター 神経内科)
  • 亀井 聡(日本大学 医学部内科学系神経内科)
  • 小池 春樹(名古屋大学 医学部附属病院神経内科)
  • 小西 哲郎(独立行政法人国立病院機構宇多野病院 神経内科)
  • 坂井 研一(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター 臨床研究部)
  • 藤井 直樹(独立行政法人国立病院機構大牟田病院 神経内科)
  • 橋本 修二(藤田保健衛生大学 医学部衛生学講座)
  • 千田 圭二(独立行政法人国立病院機構岩手病院 神経内科)
  • 三ツ井 貴夫(独立行政法人国立病院機構徳島病院 臨床研究部)
  • 勝山 真人(京都府立医科大学 医学研究科)
  • 久留 聡(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院 神経内科)
  • 鳥居 剛(独立行政法人国立病院機構呉医療センター 神経内科)
  • 武藤 多津郎(藤田保健衛生大学 医学部脳神経内科)
  • 大沼 歩(広南会広南病院 神経内科)
  • 齋藤 由扶子(独立行政法人国立病院機構東名古屋病院 診療部)
  • 蜂須賀 研二(産業医科大学 リハビリテーション医学)
  • 寳珠山 稔(名古屋大学 大学院医学系研究科リハビリテーション療法学)
  • 朝比奈 正人(千葉大学 大学院医学研究院神経内科)
  • 吉田 宗平(関西医療学園関西医療大学 神経内科)
  • 阿部 康二(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 池田 修一(信州大学 医学部内科学)
  • 吉良 潤一(九州大学 医学研究院神経内科)
  • 小池 亮子(独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院 統括診療部)
  • 鹿間 幸弘(山形県立河北病院 第二診療部神経内科)
  • 田中 千枝子(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 藤村 晴俊(独立行政法人国立病院機構刀根山病院 臨床研究部)
  • 水落 和也(横浜市立大学 附属病院リハビリテーション科)
  • 溝口 功一(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 神経内科)
  • 犬塚 貴(岐阜大学 大学院医学系研究科神経内科)
  • 上野 聡(奈良県立医科大学 神経内科)
  • 大井 清文(いわてリハビリテーションセンター 診療部)
  • 川井 元晴(山口大学 大学院医学系研究科神経内科)
  • 菊地 修一(石川県 健康福祉部)
  • 熊本 俊秀(大分大学 医学部総合内科学第三講座)
  • 志田 憲彦(松山赤十字病院 神経内科)
  • 嶋田 豊(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 下田 光太郎(独立行政法人国立病院機構鳥取医療センター 神経内科)
  • 杉本 精一郎(独立行政法人国立病院機構宮崎東病院 神経内科)
  • 高橋 美枝(高田会高知記念病院 神経内科)
  • その他(当研究班の分担者は76名。その他の分担者については研究報告書を参照。)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
85,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
キノホルムによる薬害であるスモンは視覚障害や下肢の感覚障害と運動障害を主症状とし、同剤の禁止により新規患者発生はなくなったが、既発患者は発症後40年以上経過した現在においてもこれらの症状は持続している。さらに高齢化と併発症により、患者の医学的、福祉的状況が悪化している。本研究では、全国のスモン患者の検診を行い、神経学的および全身的病態,療養や福祉サービス状況を調査し、その実態を明らかにし、恒久対策の一環として寄与することを目的とする。また、キノホルムの神経毒性について検討する。
研究方法
原則として各都道府県に一人以上配置された班員により、患者の検診を行い、各地区及び全国のデータを集積・解析して、医学的福祉的状況を把握し、対症療法の開発や療養状況の悪化予防を行う。
 また、スモン患者に対する検診は過去25年にわたって行われており、これをデータベース化し、時系列的解析を行うことにより、障害者の身体的、機能的、福祉的予後を明らかにする。さらに、近年の基礎医学的知見の発達を基に、キノホルムの神経毒性についても検討を行う。 医療・福祉関係者に、スモンなどの難病、および薬害についての啓発を行うための市民公開講座を開催する。患者・家族も参加した形で行う。
 研究成果を、患者の療養に資するために冊子を作成配布し、スモン患者に還元する。
結果と考察
全国で732例の検診を行い、うち730例(男:女=218:512)がデータ解析に同意し、新規検診受診者は17例である。平均年齢は78.0±8.7歳であった。身体症状は指数弁以下の高度の視力障害9.2%、杖歩行以下の歩行障害56.6%、中等度以上の異常感覚76.3%であった。何らかの身体的随伴症状は、回答者の98.6%にあり、白内障62.7%、高血圧52.6%、四肢関節疾患35.6%、脊椎疾患40.4%などの内訳である。55.7%に精神徴候を認め、認知症は8.0%であった。診察時の障害度は極めて重度4.9%、重度23.0%、中等度42.9%であり、障害要因はスモン+併発症が67.0%と2/3を占めていた。介護保険は725人中364人50.2%が申請しており、要介護4と5は併わせて54名で、受診者全体の7.4%であった。療養上の問題は医学上78.8%、家族や介護47.2%、福祉サービス23.2%、住居経済19.5%であった。スモン患者の障害は、一般高齢者より進行が早かった。
2.スモン患者は、社会的に孤立化する傾向が明らかになり、検診活動は、スモン患者の療養支援に有意義と考えられた。
3.スモン患者の生活と福祉・介護状況などの検討では、制度上や患者ニーズについて検討し、今後多様な対人系サービスの利用促進が必要と考えられた。
4.1989-2011年までの検診患者、のべ24,308人、実人数3,327人の検診票がデータベース化された。また、1977-1987年度の旧データ(延べ3,983人、1361人)の追加を行った。
5.キノホルムの神経細胞毒性が検討され、これはSOD1活性の阻害によってもたらされた活性酸素種の過剰再生を介していることや、癌抑制性転写因子p53の活性化が関与することが明らかになった。
6.精神医学的介入が必要な重度うつ病態にある患者は約1割とみられ、スモン患者の特性を踏まえ生物心理社会的要因を考慮し、介入方法を検討すべきと示唆された。
7.スモン患者における認知症の有病率は、現時点では、65歳以上住民の有病率と同等であった。
8.スモン患者の運動能力低下や易転倒性に、骨格筋量や骨塩量の低下、自律神経障害の関与が明らかにされた。
9.広報をスモンの風化対策として講演会を二つ催した。班員を対象にしたワークショップでは、「スモンの医学」の問題を取り上げた。スモン患者と医療福祉従事者対象には『スモンの集い』を設け、スモン患者の現状や医療福祉問題、スモン発症時の闘病の様子などの講演会を行った。本年度行ったワークショップ、スモンの集いの講演集は冊子にまとめて、スモンの啓発や風化防止に供する。
10.啓発用に冊子『スモン療養のしおり』『スモン患者さんのためのチカラになる情報』を作成し、スモン全患者に配布した。
結論
スモン患者の現状は、本来の視覚障害、運動障害、感覚障害に加えて、様々な身体的随伴症状が加わり、患者の医学的状況や生活の質の低下を来たしてきており、良好な健康状態の維持が必要である。今後も引き続き、検診活動の場を通してや、検診結果に基づいた医療および福祉面の指導と啓発が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231101Z