Perry(ペリー)症候群の診断および治療方法の更なる推進に関する研究

文献情報

文献番号
201231096A
報告書区分
総括
研究課題名
Perry(ペリー)症候群の診断および治療方法の更なる推進に関する研究
課題番号
H23-難治-一般-124
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
服部 信孝(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坪井 義夫(福岡大学 医学部)
  • 佐藤 栄人(順天堂大学 医学部)
  • 富山 弘幸(順天堂大学 医学部)
  • 斉木 臣二(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 Perry症候群はパーキンソニズム,うつ,体重減少,低換気をきたす予後不良の稀な遺伝性疾患とされる.2009年坪井らのグループによりDCTN1が原因遺伝子として報告された(Farrer et al. Nat Genet)が,本邦2家系を含む世界で9家系のみの報告で,分布や頻度、臨床像は明らかでない.L-Dopa反応性の症例もあり,パーキンソン病との異同が問題である.
 このような背景の中,その診断基準を作成し,世界及び本邦での疾患の分布,頻度およびその実態を明らかにすることを本研究の主目的とした.
 また本研究は難病の医療費公費負担,介護保険制度,療養型病床の利用など医療と介護の制度につき,より広く発展した形で社会的成果をもたらし,厚生労働行政の課題の解決の一助になる可能性を十分に秘めており,医学の向上から間接的には行政及び国民の保健・医療・福祉の向上等社会へ貢献することを究極の目的とした.
研究方法
 研究目的の達成のため,約3000例のDNAバンク症例中,日本の973例に対し,DCTN1の変異解析を行った.正常対照の解析も行い,解析可能な家系では家系内での変異の共分離も確認し,病的変異としての意義を確認した.変異陽性家系については同意を得た上で実地診療に赴き,変異陽性患者を実際に診察の上,検査所見を検討,解析した.
 その情報に基づき,臨床診断基準(案)を世界のPerry症候群患者の担当医,世界のPerry症候群患者の研究者とともに作成した.
 また,機能解析は細胞をもちいた実験でdynactinの凝集の確認,dynactin凝集体の局在の確認,免疫組織化学・生化学的検討を行った.野生型・変異型dynactinをDrosophilaに打ち込み,各lineの樹立を行った.
結果と考察
 日本に少なくとも5家系24人の患者が存在することが明らかとなり,地域特異性,創始者効果の有無,有病率,分布など疫学調査を進めることができてきた.新規変異も2家系で同定できた.この結果が得られたことにより,臨床像の評価に基づき,国際臨床診断基準を作成し公表することができた.
 機能解析研究では,運動神経細胞死・黒質神経細胞死の共通メカニズムを解明すべく,病因変異を持ったdynactinの強制発現による細胞死への影響が検討できた.変異型dynactin細胞質内凝集物を形成した細胞では細胞死が有意に高頻度で惹起されており,cleaved caspase3陽性,核濃縮・核断片化が進行しており,アポトーシスが誘導されていると考えられた.
 トランスジェニック(Tg)ショウジョウバエの検討については,野生型・変異型dynactinをショウジョウバエに打ち込み,各lineの樹立,モデルの作成を完了した.
 総じて研究結果は研究計画に沿って予定通り出てきたと考えられた.
結論
 DCTN1変異例はパーキンソン病との異同が問題になる臨床症候を呈するとともに,TDP-43プロテイノパチーとしての筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こすことも知られ,動物モデルを含むDCTN1の機能解析は封入体形成機構,神経変性機構を明らかに出来る可能性を秘めている.本研究は,特殊と考えられている疾患の研究から広く主要な神経変性疾患の根本的病態解明に繋げることを究極の目標として,医学,医療,行政などの側面から独創的で意義深い成果を生むことができてきた.

公開日・更新日

公開日
2013-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201231096B
報告書区分
総合
研究課題名
Perry(ペリー)症候群の診断および治療方法の更なる推進に関する研究
課題番号
H23-難治-一般-124
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
服部 信孝(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坪井 義夫(福岡大学 医学部)
  • 佐藤 栄人(順天堂大学 医学部)
  • 富山 弘幸(順天堂大学 医学部)
  • 波田野 琢(順天堂大学 医学部)
  • 斉木 臣二(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Perry症候群はパーキンソニズム,うつ,体重減少,低換気をきたす予後不良の稀な遺伝性疾患とされる.2009年坪井らのグループによりDCTN1が原因遺伝子として報告された(Farrer et al. Nat Genet)が,本邦2家系を含む世界で9家系のみの報告で,分布や頻度、臨床像は明らかでない.L-Dopa反応性の症例もあり,パーキンソン病との異同が問題である.
 このような背景の中,その診断基準を作成し,世界及び本邦での疾患の分布,頻度およびその実態を明らかにすることを本研究の主目的とした.
 また本研究は難病の医療費公費負担,介護保険制度,療養型病床の利用など医療と介護の制度につき,より広く発展した形で社会的成果をもたらし,厚生労働行政の課題の解決の一助になる可能性を十分に秘めており,医学の向上から間接的には行政及び国民の保健・医療・福祉の向上等社会へ貢献することを究極の目的とした.
研究方法
 研究目的の達成のため,約3000例のDNAバンク症例中,日本の973例に対し,DCTN1の変異解析を行った.正常対照の解析も行い,解析可能な家系では家系内での変異の共分離も確認し,病的変異としての意義を確認した.変異陽性家系については同意を得た上で実地診療に赴き,変異陽性患者を実際に診察の上,検査所見を検討,解析した.
 その情報に基づき,臨床診断基準(案)を世界のPerry症候群患者の担当医,世界のPerry症候群患者の研究者とともに作成した.
 また,機能解析は細胞をもちいた実験でdynactinの凝集の確認,dynactin凝集体の局在の確認,免疫組織化学・生化学的検討を行った.野生型・変異型dynactinをDrosophilaに打ち込み,各lineの樹立を行った.
結果と考察
 日本に少なくとも5家系24人の患者が存在することが明らかとなり,地域特異性,創始者効果の有無,有病率,分布など疫学調査を進めることができてきた.新規変異も2家系で同定できた.この結果が得られたことにより,臨床像の評価に基づき,国際臨床診断基準を作成し公表することができた.
 機能解析研究では,運動神経細胞死・黒質神経細胞死の共通メカニズムを解明すべく,病因変異を持ったdynactinの強制発現による細胞死への影響が検討できた.変異型dynactin細胞質内凝集物を形成した細胞では細胞死が有意に高頻度で惹起されており,cleaved caspase3陽性,核濃縮・核断片化が進行しており,アポトーシスが誘導されていると考えられた.
 トランスジェニック(Tg)ショウジョウバエの検討については,野生型・変異型dynactinをショウジョウバエに打ち込み,各lineの樹立,モデルの作成を完了した.
結論
 DCTN1変異例はパーキンソン病との異同が問題になる臨床症候を呈するとともに,TDP-43プロテイノパチーとしての筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こすことも知られ,動物モデルを含むDCTN1の機能解析は封入体形成機構,神経変性機構を明らかに出来る可能性を秘めている.本研究は,特殊と考えられている疾患の研究から広く主要な神経変性疾患の根本的病態解明に繋げることを究極の目標として,医学,医療,行政などの側面から独創的で意義深い成果を生むことができてきた.

公開日・更新日

公開日
2013-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201231096C

成果

専門的・学術的観点からの成果
DCTN1変異例はパーキンソン病との異同が問題になる臨床症候を呈するとともに,TDP-43プロテイノパチーとしての筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こすことも知られ,動物モデルを含むDCTN1の機能解析は封入体形成機構,神経変性機構を明らかに出来る可能性を秘めている.本研究は,特殊と考えられている疾患の研究から広く主要な神経変性疾患の根本的病態解明に繋げることを究極の目標として独創的で意義深い成果を生むことができてきた.
臨床的観点からの成果
日本に少なくとも5家系24人の患者が存在することが明らかとなり,地域特異性,創始者効果の有無,有病率,分布など疫学調査を進めることができてきた.新規変異も2家系で同定できた.さらには未報告の新規変異をもつ九州地方の1家系の情報を得ることができ,臨床dataの蓄積もできてきた.世界の9家系中5家系が本研究によるものであり,本研究の国際的成果,影響力も大きなものであった.この結果から,臨床像の評価に基づき,国際臨床診断基準を作成し公表することができた.
ガイドライン等の開発
平成23年2月22-23日International Symposium on Motor Neuron Disease and Perry Syndrome in Tokyoでの診断基準作成のための国際会議を開催し,国際臨床診断基準を作成し,複数の学会発表,ホームページなどを通じて広く発表していくことができた.(本会議では,Mayo Clinicのグループをはじめ世界最先端の研究者や臨床家が来日し,発症機序の解明からiPSを用いた治療の開発戦略にまで焦点をあてて議論し,協議できた.)
その他行政的観点からの成果
本研究は,稀少疾患の研究から広く主要な神経変性疾患の根本的病態解明に繋げることを究極の目標として独創的で意義深い成果を生むことができてきた.また,それらの知見の臨床応用から,診療指針の確立,国内さらには世界の患者の福利に役立てていくことを目指して研究を継続できた.このように医療費,制度等に関し,厚生労働行政の課題の解決の一助になる可能性をも広げてきており,遺伝診療,遺伝カウンセリング,病名告知,人工呼吸器装着から入院・介護など診療指針の検討・策定による行政政策への提言を可能なものとしてきた.
その他のインパクト
平成23年2月22-23日東京において、国際公開シンポジウムInternational Symposium on Motor Neuron Disease and Perry Syndrome in Tokyoを開催し、同時に本研究班員、世界のPerry症候群の研究者を中心として国際会議も開催することができた。今後においても、病理学的診断基準の付加、診断基準の改定を行い、さらには遺伝診療や突然死の予防、人工呼吸の適応など診療指針作成にもつなげ、社会へ還元できるような動きを示すことができた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ogaki K, Li Y, Atsuta N, et al.
Analysis of C9orf72 repeat expansion in 563 Japanese patients with amyotrophic lateral sclerosis.
Neurobiol Aging , 33 2527 , e11-e16  (2012)
原著論文2
Ogaki K, Li Y, Takanashi M, et al.
Analyses of the MAPT, PGRN, and C9orf72 mutations in Japanese patients with FTLD, PSP, and CBS.
Parkinsonism Relat Disord , 19 , 15-20  (2013)
原著論文3
Ando M, Funayama M, Li Y,et al.
VPS35 mutation in Japanese patients with typical Parkinson disease.
Mov Disord , 27 , 1413-1417  (2012)
原著論文4
Ishikawa K, Saiki S, Furuya N, et al.
p150glued-associated disorders are caused by activation of intrinsic apoptotic pathway.
PLOS ONE , 9 , e94645-  (2014)

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231096Z