周産期の難聴のハイリスクファクターの新分類と診断・治療方針の確立

文献情報

文献番号
201231089A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期の難聴のハイリスクファクターの新分類と診断・治療方針の確立
課題番号
H23-難治-一般-111
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 竹腰 英樹(国際医療福祉大学三田病院)
  • 新正 由紀子(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 内山 勉(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 松永 達雄(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 福島 邦博(岡山大学 医学部)
  • 神田 幸彦(神田ENT医院)
  • 坂田 英明(目白大学 保健医療学部)
  • 城間 将江(国際医療福祉大学 保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
過去10年の周産期医療の進歩により、重症黄疸仮死による脳性麻痺例は減り、それまで救命が難しかった超低出生体重児の増加など、周産期難聴の基礎疾患は著しく変わって来ている。われわれは過去30年における周産期難聴の基礎疾患に大きな変化があるのではないかと見なし、調査することにした。
研究方法
都内の心身障害児療育センターの小児耳鼻科外来を受診した患者のなかで、中等度難聴を合併する障害児の基礎疾患をカルテより調べることにした。カルテは小児耳鼻咽喉科外来で設置された1980年10月より2011年12月までを約10年おきに4期に分けて比較することにした。
結果と考察
4期に分けた難聴を合併する基礎疾患のうち、上位5番目までを最も多い順番から比較すると、第Ⅰ期(1980年10月~1987年9月)は、①脳性麻痺(40)、②先天奇形(19)、③精神発達遅滞(14)、④染色体異常(10)、⑤髄膜炎後遺症(9)、第Ⅱ期(1987年10月~1994年9月)は、①先天奇形(26)、②脳性麻痺(17)、③染色体異常(15)、④精神発達遅滞(8)、⑤髄膜炎後遺症(3)、第Ⅲ期(1994年10月~2002年3月)は、①先天奇形(19)、②染色体異常(18)、③精神発達遅滞(13)、④脳性麻痺(9)、⑤先天性ウィルス疾患(2)、第Ⅳ期(2002年4月~2011年12月)は、①染色体異常(20)、②低体重出生(12)、③脳性麻痺(11)、④骨形成不全症(10)、先天奇形(10)、⑤精神発達遅滞(7)であった。次に第Ⅳ期(2002年4月~2011年12月)の難聴を合併する全疾患を先に記載した順につなげると、⑥21トリソミー以外の染色体異常(5)、⑦サイトメガロウィルス感染症(3)、Auditory neuropathy(3)、二分脊髄(3)、⑧脳炎・髄膜炎後遺症(2)、コーネリア・デ・ランゲ(2)、CHARGE症候群(2)、⑨その他であった。
難聴を合併する心身障害児の基礎疾患は、1980年代は脳性麻痺が圧倒的だが、その後減少し、過去10年はダウン症候群と低体重出生児がトップグループに変わったことがわかる。この変化は周産期医療の進歩によって新生児重症黄疸の治療や仮死に対する治療が大きく進歩したためと考えられる。しかし、先天奇形や精神発達遅滞については変わらない出現率である。第Ⅳ期にはそれまでにないAuditory neuropathyやCHARGE症候群が出現したのは新たな診断技術の進歩によって新しいカテゴリーの疾患として取り上げられるようになったためと考えられる。新たに骨形成不全症が現れたのは、心身障害児療育センターは患者の会の事務局が設置されたことの影響と考えられる。
結論
難聴を合併する心身障害児の基礎疾患は30年前とこの10年間は大きく変わった。すなわち脳性麻痺や髄膜炎は少なくなり、新たに低出生体重児やAuditory neuropathy、CHARGE症候群が見出されるようになり、新たな対応が必要となっている。染色体異常、精神発達遅滞、先天奇形は常に一定数受診することは変わらない。二分脊髄についても患者の会を通して紹介されるようになったためである。
難聴を合併する心身障害児の受診は、周産期医療の進歩及び新たに診断の基準がはっきりしたことにより変貌したと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201231089B
報告書区分
総合
研究課題名
周産期の難聴のハイリスクファクターの新分類と診断・治療方針の確立
課題番号
H23-難治-一般-111
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 竹腰 英樹(国際医療福祉大学三田病院)
  • 新正 由紀子(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 内山 勉(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 松永 達雄(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 福島 邦博(岡山大学 医学部)
  • 神田 幸彦(神田ENT医院)
  • 坂田 英明(目白大学 保健医療学部)
  • 城間 将江(国際医療福祉大学 保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1982年と1994年の米国の周産期難聴の10項目ハイリスクファクターは医学の進歩によりわが国の現状にそぐわなくなっているため新分類を提案し、人工内耳をはじめとする新しい治療、さらに予防を含め診断と治療の指針を作成する。新規のハイリスクファクターも探索する。2001年から始まった新生児聴覚スクリーニングがきっかけとなって発見される周産期の難聴は、旧来の1982年の10項目のハイリスクファクターが現実にそぐわなくなり、新たなファクター分類が必要である。3年間の研究期間内に新しい難聴のハイリスクファクターを提案し、それぞれの項目ごとに診断と治療と予防の指針を作成する。
研究方法
東京都内の心身障害児療育センターの30年間にわたる難聴を伴う心身障害児の原因疾患の推移を調べ、21世紀になってからの10年のデータを新たなハイリスクファクターの分類の参考とする。
東京医療センターの幼小児難聴・言語障害クリニック外来を中心に、研究分担および協力者の施設の難聴の原因疾患および人工内耳手術の術前検査などから、難聴遺伝子、CMV感染、内耳奇形の有無など難聴の原因を調べ、新たなハイリスクファクターの分類の参考とする。
以上より、難聴の原因となるハイリスクファクターをmajor6疾患とminor7疾患を選び、それぞれについて症例研究を行う。
難聴の診断方法については、他覚的検査法と行動反応聴力検査の長所と限界を調べ、診断の指針を作成する。
難聴の治療指針の作成を行うために、major6疾患、minor7疾患について補聴器か、聴力改善手術か、人工内耳埋込術か検討する。
結果と考察
われわれは周産期難聴のハイリスクファクターをmajor6疾患、すなわち①超低体重児、②胎内感染(CMV)、③細菌性髄膜炎、④ダウン症候群、⑤奇形症候群、⑥難聴遺伝子変異と、minor7疾患、すなわち①人工換気(低酸素障害)、②耳毒性薬物、筋弛緩剤、③CMV以外のウィルス感染、④新生児高ビリルビン血症、⑤ダウン症以外の染色体異常、⑥内耳奇形、⑦その他の稀少な新規のハイリスクファクターに新分類し、診断・治療の方針を確立すべく研究を行った。
一方、難聴を合併する心身障害児の基礎疾患、1980年代は脳性麻痺が圧倒的な和を示したが、その後減少し、過去10年はダウン症候群と低体重出生児がトップグループに変わったことがわかった。この変化は周産期医療の進歩によって新生児重症黄疸の治療や仮死に対する治療が大きく進歩したためと考えられる。しかし、先天奇形や精神発達遅滞については変わらない出現率である。第Ⅳ期(2002年~2011年)にはそれまでにないAuditory neuropathyやCHARGE症候群が出現したのは新たな診断技術の進歩によって新しいカテゴリーの疾患として取り上げられるようになったためと考えられる。
考察として、①周産期難聴の疑いのある患者の精密聴力検査を早期に実施し、診断と同時に診断に正確さを期するためにフォローアップしつつ、ABRは変化するために、ABRを繰り返して検査を行い臨床現場にフィードバックすることが重要である。②難聴と診断された症例については、高度~重度難聴症例は早期に両耳補聴を行い、難聴児通園施設あるいはろう学校等と連携し早期療育に役立てることが重要である。中等度難聴も軽視してはならない。③補聴器の効果の不十分な症例については、内耳奇形の有無にかかわらず人工内耳手術をすすめ、症例に応じた電極を選び、人工内耳症例は聴覚口話法により聴覚言語の獲得を推進することが重要で、タイミングを積極的に考えることが大切である。ただし、約10%にその後知的発達の遅れや自閉症を伴っていることが発見されるため課題を残したが、新たな療育方法と療育施設との連携が必要である。

結論
本研究で提案した周産期難聴のハイリスクファクターの新分類のmajor6疾患とminor7疾患は、現在の臨床の現場に極めて有効である。この新分類に難聴遺伝子のチェックを含めることでほとんどの問題をカバー可能であると思われる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201231089C

収支報告書

文献番号
201231089Z