文献情報
文献番号
201231079A
報告書区分
総括
研究課題名
Aicardi症候群の疾患病態解明と診断・治療法の開発研究
課題番号
H23-難治-一般-100
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 紀子(横浜市立大学 医学部 遺伝学教室)
研究分担者(所属機関)
- 松本 直通(横浜市立大学大学院)
- 加藤 光広(山形大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Aicardi症候群 [MIM %304050] は、1965年にAicardiらが初めて報告した新生児期~乳児期早期に発症する先天性奇形症候群である。重度の神経発生異常を本態とする。脳梁欠損、網脈絡膜異常、点頭てんかんを三主徴とし、殆どの症例が女児(男児症例は47,XXYに限定され、通常致死性)であることから、X染色体優性遺伝形式をとると考えられている。de novoの均衡型転座症例 46,X,t(X;3)(p22;q12)の報告により暫定的に、Xp22.2にマッピングされているが、責任遺伝子は未同定である。一方、近年では本症候群での男児例の報告が散見されるようになり、常染色体上の限性発現遺伝子の異常の可能性も示唆されている。本研究は、本邦におけるAicardi症候群の疫学・臨床像を正確に把握し、責任遺伝子を単離・同定することを第1の目的とする。責任遺伝子を同定した際には、発現および機能解析を行い、疾患発症のメカニズムとその病態を解明することにより、診断・予防・治療を含む医療を見据えた研究を展開する。
研究方法
I. 脳波所見の評価
我々が以前に実施した全国疫学調査の一次調査で把握された日本国内のAicardi症候群の疑われる症例に対して二次調査として脳波の送付を依頼し、返答のあった27例中、脳波所見の得られた25例(女23例、男2例)を対象として、背景活動とてんかん性異常波に関して評価を行った。
II. キャプチャー技術を併用した次世代シークエンサーよるゲノム解析
現在までに集積された本症候群患者は、37症例である。そのうち、両親検体の協力が得られたのは21家系のみであった。今回、常染色体優性遺伝形式およびX染色体優性遺伝形式(男性致死)を想定し、de novoの変異を抽出することとした。
我々が以前に実施した全国疫学調査の一次調査で把握された日本国内のAicardi症候群の疑われる症例に対して二次調査として脳波の送付を依頼し、返答のあった27例中、脳波所見の得られた25例(女23例、男2例)を対象として、背景活動とてんかん性異常波に関して評価を行った。
II. キャプチャー技術を併用した次世代シークエンサーよるゲノム解析
現在までに集積された本症候群患者は、37症例である。そのうち、両親検体の協力が得られたのは21家系のみであった。今回、常染色体優性遺伝形式およびX染色体優性遺伝形式(男性致死)を想定し、de novoの変異を抽出することとした。
結果と考察
I. 脳波所見の評価
25症例中21例に背景活動の異常を認めた。9例はヒプスアリスミアを呈し、そのうち7例は左右非対称性であった。非同期性の記載は1例のみであった。その他、高振幅徐波活動が2例、基礎波やhump、spindleなど正常な脳波活動が認められない症例が3例、suppression-burstが1例に認められた。
てんかん性異常波は25症例中24例に認められた。ヒプスアリスミアとサプレッション・バーストを除く14例中、8例は焦点性もしくは多焦点性異常波を呈し、5例は広汎性異常波を示した。1例は焦点性と広汎性の両者を示した。
II. キャプチャー技術を併用した次世代シークエンサーよるゲノム解析
全エキソーム解析により、14家系それぞれに1~8個のde novoのバリアントが検出された。そのうち、2家系以上に共通して変異が認められた遺伝子は遺伝子A (仮名) 1個のみであった。本遺伝子に認められたバリアントは、ナンセンス変異とフレームシフト変異であった。これらをSander法で確認し、de novo変異であることを確認した。しかし、ほかの症例をHigh resolution Melting法でもスクリーニングしたが、ほかに同遺伝子に変異を認める症例はいなかった。
25症例中21例に背景活動の異常を認めた。9例はヒプスアリスミアを呈し、そのうち7例は左右非対称性であった。非同期性の記載は1例のみであった。その他、高振幅徐波活動が2例、基礎波やhump、spindleなど正常な脳波活動が認められない症例が3例、suppression-burstが1例に認められた。
てんかん性異常波は25症例中24例に認められた。ヒプスアリスミアとサプレッション・バーストを除く14例中、8例は焦点性もしくは多焦点性異常波を呈し、5例は広汎性異常波を示した。1例は焦点性と広汎性の両者を示した。
II. キャプチャー技術を併用した次世代シークエンサーよるゲノム解析
全エキソーム解析により、14家系それぞれに1~8個のde novoのバリアントが検出された。そのうち、2家系以上に共通して変異が認められた遺伝子は遺伝子A (仮名) 1個のみであった。本遺伝子に認められたバリアントは、ナンセンス変異とフレームシフト変異であった。これらをSander法で確認し、de novo変異であることを確認した。しかし、ほかの症例をHigh resolution Melting法でもスクリーニングしたが、ほかに同遺伝子に変異を認める症例はいなかった。
結論
脳波所見の検討により、Aicardi症候群の脳波所見として左右非対称性のヒプスアリスミアを認めるが、頻度は半数以下であり、他が原因の点頭てんかんとは異なることが明らかとなった。
また、全エキソーム解析により、2症例に共通して遺伝子Aに非同義置換のde novo変異を同定した。今後、本遺伝子の発現や機能を明らかにし、本遺伝子に同定された変異の影響を検証していくことは、病態解明の糸口になる。しかしながら、37症例中2症例にしか本遺伝子に変異が同定されず、本候補遺伝子以外に責任遺伝子が存在すること(遺伝的異質性)も示唆された。今後は、候補遺伝子Aを軸としたパスウェイ解析等を行い、その結果も考慮しつつ、別の候補遺伝子の検索を継続して行う。更に、エキソーム解析では網羅できない領域もあるため、今後は全ゲノムシークエンスを用いた解析も検討する。
また、全エキソーム解析により、2症例に共通して遺伝子Aに非同義置換のde novo変異を同定した。今後、本遺伝子の発現や機能を明らかにし、本遺伝子に同定された変異の影響を検証していくことは、病態解明の糸口になる。しかしながら、37症例中2症例にしか本遺伝子に変異が同定されず、本候補遺伝子以外に責任遺伝子が存在すること(遺伝的異質性)も示唆された。今後は、候補遺伝子Aを軸としたパスウェイ解析等を行い、その結果も考慮しつつ、別の候補遺伝子の検索を継続して行う。更に、エキソーム解析では網羅できない領域もあるため、今後は全ゲノムシークエンスを用いた解析も検討する。
公開日・更新日
公開日
2013-05-08
更新日
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