Pendred症候群の治療指針と診療体制モデルの構築

文献情報

文献番号
201231071A
報告書区分
総括
研究課題名
Pendred症候群の治療指針と診療体制モデルの構築
課題番号
H23-難治-一般-092
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松永 達雄(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 視覚・平衛覚研究部聴覚障害研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 泰地 秀信(東京都済生会中央病院耳鼻咽喉科)
  • 守本 倫子(独立行政法人国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科)
  • 仲野 敦子(千葉県こども病院耳鼻咽喉科)
  • 有本 友季子(千葉県こども病院耳鼻咽喉科)
  • 高木 明(静岡県立総合病院耳鼻咽喉科)
  • 小河原 昇(神奈川県立こども医療センター耳鼻咽喉科)
  • 阪本 浩一(兵庫県立こども病院 耳鼻咽喉科)
  • 大津 雅秀(兵庫県立こども病院耳鼻咽喉科)
  • 増田 佐和子(独立行政法人国立病院機構三重病院耳鼻咽喉科)
  • 加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
  • 岡本 康秀(稲城市立病院耳鼻咽喉科)
  • 杉内 智子(関東労災病院耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Pendred症候群は先天性難聴と甲状腺腫およびめまいを合併する症候群である。本研究の目的は、Pendred症候群の現在の治療実態の把握、遺伝子解析と治療成績を中心とした臨床データとの比較検討による日本人サブタイプの特徴と効果的な治療の解明、治療指針と診療体制モデルの構築である。
研究方法
本年度はPendred症候群患者のDNA検体でSLC26A4遺伝子解析を行い、各サブタイプの臨床的特徴を検討し、難聴、めまい、甲状腺腫に対する治療法別の効果を検討した。この結果を基にPendred症候群の治療指針を作成し、診療体制モデルを構築した。本研究は各参加施設の倫理委員会の承認を受け、関連する倫理指針を遵守して進めた。
結果と考察
本年度に得られた成果は以下の3点である。1) 原因遺伝子に基づく日本人サブタイプの特徴の解明、2)各サブタイプの治療法別効果の解明、3)治療指針と診療体制モデルの構築。
1)、2)においては、日本人の前庭水管拡大症ではSLC26A4遺伝子検査により、2アレルの変異が高い頻度で認められることが確認された。本研究では68例で認められたSLC26A4遺伝子変異から9種類の新規変異が認められたことから、現時点では本遺伝子検査において新規変異の可能性を念頭に置く必要があると考えられた。また、SLC26A4遺伝子検査結果から症状の詳細を予測するのは難しいと考えられた。また、今回のPendred症候群におけるSLC26A4遺伝子解析から、頻度の高い上位14変異のgenotypingとその後の直接シークエンスにより、初めから全配列解析を行った場合の94.1%の感度(スクリーニング陽性率)を得られ、検査費用は約3分の1に削減できることが判明した。このため本検査を臨床検査として活用できるためのシステム構築を開始した。
3)においては、これまで診療方針が定まっていなかったPendred症候群の遺伝子診断と治療の指針を作成、報告した(本研究事業報告書)
結論
前年度の成果と合わせて本症候群に対する治療指針と診療体制モデルの構築を充実させた。特に重要な内容としては以下の2点である。1)今回のPendred症候群におけるSLC26A4遺伝子解析から、頻度の高い上位14変異のgenotypingとその後の直接シークエンスにより、初めから全配列解析を行った場合の94.1%の感度(スクリーニング陽性率)を得られ、検査費用は約3分の1に削減できることが判明した。このため、本検査を臨床検査として活用できるためのシステム構築を開始した。2)これまで診療方針が定まっていなかったPendred症候群の遺伝子診断と治療の指針を作成し、本研究事業報告書にて報告した。

公開日・更新日

公開日
2013-05-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201231071B
報告書区分
総合
研究課題名
Pendred症候群の治療指針と診療体制モデルの構築
課題番号
H23-難治-一般-092
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松永 達雄(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 視覚・平衛覚研究部聴覚障害研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 泰地 秀信(東京都済生会中央病院耳鼻咽喉科)
  • 守本 倫子(独立行政法人国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科)
  • 仲野 敦子(千葉県こども病院耳鼻咽喉科)
  • 有本 友季子(千葉県こども病院耳鼻咽喉科)
  • 高木 明(静岡県立総合病院耳鼻咽喉科)
  • 小河原 昇(神奈川県立こども医療センター耳鼻咽喉科)
  • 阪本 浩一(兵庫県立こども病院 耳鼻咽喉科)
  • 大津 雅秀(兵庫県立こども病院耳鼻咽喉科)
  • 増田 佐和子(独立行政法人国立病院機構三重病院耳鼻咽喉科)
  • 加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
  • 岡本 康秀(稲城市立病院耳鼻咽喉科)
  • 杉内 智子(関東労災病院耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Pendred症候群は先天性難聴と甲状腺腫およびめまいを合併する症候群である。本研究の目的は、Pendred症候群の現在の治療実態の把握、遺伝子解析と治療成績を中心とした臨床データとの比較検討による日本人サブタイプの特徴と効果的な治療の解明、治療指針と診療体制モデルの構築である。
研究方法
1)22年度実施の第一次アンケート調査(Pendred症候群患者数調査)を基に、本症の診療に関わる医師を対象とした第二次アンケート調査を行う。
2)Pendred症候群患者100人のDNA検体でSLC26A4の遺伝子解析を行い、各サブタイプの臨床的特徴を検討する。
3)Pendred症候群患者を対象として各サブタイプにおける難聴、めまい、甲状腺腫に対する治療法別の効果を検討する。
4)Pendred症候群の治療指針を作成し、診療体制モデルを構築する。
結果と考察
1) Pendred症候群に対する現在の治療実態を把握した。これによりPendred症候群に対する標準的な医療の普及が可能となる。

2) 原因遺伝子に基づく日本人サブタイプの特徴を解明した。日本人の前庭水管拡大症ではSLC26A4遺伝子検査により、2アレルの変異が高い頻度で認められることが確認された。また、日本人Pendred症候群のサブタイプ別頻度と臨床的特徴が明らかになったことで、早期診断が促進される。本研究では68例で認められたSLC26A4遺伝子変異から9種類の新規変異が認められたことから、現時点では本遺伝子検査において新規変異の可能性を念頭に置く必要があると考えられた。また、今回のPendred症候群におけるSLC26A4遺伝子解析から、頻度の高い上位14変異のgenotypingとその後の直接シークエンスにより、初めから全配列解析を行った場合の94.1%の感度(スクリーニング陽性率)を得られ、検査費用は約3分の1に削減できることが判明した。このため本検査を臨床検査として活用できるためのシステム構築を開始した。一方、SLC26A4遺伝子検査結果から症状の詳細までを予測するのは困難であった。

3)各サブタイプの治療法別効果を解明し、治療指針と診療体制モデルを構築した。これにより本症の適正かつ効果的な診療体制の全国医療機関への普及が促進されると考えられた。これは本疾患に対して今後の診療を効果的に進めるために役立ち、患者の言語発達・コミュニケーション能力の促進、社会参加の機会の増加、Pendred症候群による難聴、めまい、甲状腺腫に対する不必要な検査、不適当な治療の回避に役立つ。
結論
●Pendred症候群に対する現在の治療実態を把握した。
●原因遺伝子に基づく日本人サブタイプの特徴を解明した。
●各サブタイプの治療法別効果を解明した。
●治療指針の作成と診療体制モデル構築を行った。

公開日・更新日

公開日
2013-05-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201231071C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Pendred症候群の我が国における治療実態を初めて明らかにした。原因遺伝子の変異型に基づいたサブタイプとその頻度、画像検査による前庭水管拡大の特徴に基づいたサブタイプとその頻度を解明し、臨床的特徴との関連性を明らかにした。患者由来のiPS細胞を用いて、本症の病態解明と治療薬候補を同定した。
臨床的観点からの成果
治療データが解明されたことで、現在の標準的治療を把握できた。この成果を普及することで本症の治療経験の乏しい施設においても、診療方法の選択をより適切に行うことが可能となる。既存薬の適応拡大により、本症の治療が可能となった。治験への展開に進んでいる。
ガイドライン等の開発
Pendred症候群治療実態把握のための全国調査結果を作成、公開した。遺伝子診断を組み込んだ治療指針を作成、公開した。効果的に診療を進めるための診療体制モデルも作成した。発見された治療薬を用いた治験プロトコールを策定してPMDAの事前面談を3回受けた。
その他行政的観点からの成果
本研究で発見された治療薬の候補が実用化されることにより言語聴覚リハビリテーションが促進されて難聴者の社会参加が促進されるとともに、甲状腺腫に対する適正な医学的対応が可能となり、無駄な検査などを回避できる。
その他のインパクト
iPS細胞を用いた治療薬候補の発見は、朝日新聞等の全国紙で報道された。日経サイエンス等の一般紙でも取り上げられた。患者向けの医療情報サイトでも取材を受けて取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
Laryngoscope 2014、Orphanet J. Rare Dis 2013、Int J Pediatr Oto 2013、Cell Rep 2017
その他論文(和文)
13件
診断と治療社、JOHNS、日耳鼻会報、脳21、日本臨牀、Otol Jpn、医療、音声言語医学、国立医療学会誌「医療」、日本医事新報
その他論文(英文等)
1件
Springer:Tokyo.2016;47-59
学会発表(国内学会)
12件
日本耳鼻咽喉科学会、日本耳科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会、日本炎症・再生医学会、日本神経科学会等
学会発表(国際学会等)
6件
ASHG, MBHD, ISN Special Conference, ARO Annual MidWinter Meeting,日韓耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会,日本台湾耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会議
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
7件
Pendred症候群治療実態把握のための全国調査結果公開。Pendred症候群の遺伝子診断と治療の指針(案)公開。http://www.kankakuki.go.jp/lab_c-1.html等

特許

特許の名称
内耳性難聴治療薬
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2015-007849
発明者名: 細谷誠、藤岡正人、岡野栄之、小川郁、松永達雄
権利者名: 細谷誠、藤岡正人、岡野栄之、小川郁、松永達雄
出願年月日: 20150119
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mutai H, Suzuki N, Shimizu A, et al.
Diverse spectrum of rare deafness genes underlies early-childhood hearing loss in Japanese patients: A cross-sectional, multi-center next-generation sequencing study.
ORPHANET J RARE DIS , 8 (1) , 172-172  (2013)
10.1186/1750-1172-8-172.
原著論文2
Okamoto, Mutai H, Nakano A, et al.
Subgroups of enlarged vestibular aqueduct in relation to SLC26A4 mutations and hearing loss.
Laryngoscope , 124 (4) , E134-E140  (2014)
10.1002/lary.24368
原著論文3
Hosoya M, Fujioka M, Sone T, et al.
Cochlear cell modeling using disease-specific iPSCs unveils a degenerative phenotype and suggests treatments for congenital progressive hearing loss.
Cell Rep , 18 (1) , 68-81  (2017)
10.1016/j.celrep.2016.12.020.

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231071Z