文献情報
文献番号
201231067A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性QT延長症候群の家族内調査による遺伝的多様性の検討と治療指針の決定
課題番号
H23-難治-一般-088
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
堀江 稔(滋賀医科大学 医学部内科学講座(循環器・呼吸器))
研究分担者(所属機関)
- 清水 渉(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
- 林 研至(金沢大学 医薬保健研究域医学系臓器機能制御学)
- 牧山 武(京都大学大学院医学系研究科循環器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先天性QT延長症候群で遺伝子変異が同定されてない患者において、コピー数異常(copy number variation, CNV)を検出することを目的として以下の研究を行った。
研究方法
CNVとはエクソン単位での大規模な遺伝子の挿入・欠失である。従来のPCRおよびダイレクトシークエンスをベースとしたSanger解析法では、その異常を検出することができない。そのため本研究では、multiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA)法を導入した。MLPA法では重複・欠失が疑われるエクソンに対し、2本のプローブが設計されている。そして対象エクソンにプローブがハイブリダイズした場合のみ、2本のプローブがライゲーションされて1本のプローブになる。そして1本になったプローブをPCRで増幅させ、対象エクソンのCNVを検出する。
今回の研究では、KCNQ1, KCNH2, SCN5A遺伝子に変異が同定されていない、20才未満の先天性QT延長症候群患者172名(男性92名)を対象とし、KCNQ1およびKCNH2のCNVの解析を行った。
なお、本研究は滋賀医大倫理委員会で承認された研究であり、匿名化データベースに登録・管理された症例について解析を行っている。倫理的に問題となるような介入などは一切行われていない。
今回の研究では、KCNQ1, KCNH2, SCN5A遺伝子に変異が同定されていない、20才未満の先天性QT延長症候群患者172名(男性92名)を対象とし、KCNQ1およびKCNH2のCNVの解析を行った。
なお、本研究は滋賀医大倫理委員会で承認された研究であり、匿名化データベースに登録・管理された症例について解析を行っている。倫理的に問題となるような介入などは一切行われていない。
結果と考察
172名の対象者のうち、5名(2.9%)にKCNQ1のCNVを同定した。KCNH2のCNVは同定されなかった。KCNQ1のCNVが検出された5名中4名が女性であり、平均年齢は13.2±3.6才であった。失神の既往は3名にあり、いずれも運動中であった。安静時の平均QTcは453.6 ± 12.9 ms1/2 と軽度延長を示していたが、運動後には542.6 ± 6.6 ms1/2 と有意に延長していた。CNVのタイプは重複が3名、欠失が2名であった。5名のうち4名は1つのエクソンに限定した重複・欠失であったが、1名はKCNQ1のエクソン12より下流への重複であった。その範囲を同定するためにCGH解析を行ったところ、約125kbもの重複が検出された。
先天性QT延長症候群では約60~75%に遺伝子変異が同定されるが、残りについては、遺伝子変異陰性として管理されている。今回の研究では、遺伝子変異陰性と診断されていた患者に対し、既知の遺伝子であるKCNQ1に、これまでの解析手法では同定できなかったCNVを同定した。その臨床像はKCNQ1変異保持者と共通であり、治療法の選択に有用であると考えられる。
先天性QT延長症候群では約60~75%に遺伝子変異が同定されるが、残りについては、遺伝子変異陰性として管理されている。今回の研究では、遺伝子変異陰性と診断されていた患者に対し、既知の遺伝子であるKCNQ1に、これまでの解析手法では同定できなかったCNVを同定した。その臨床像はKCNQ1変異保持者と共通であり、治療法の選択に有用であると考えられる。
結論
これまで、原因遺伝子変異が同定されなかった先天性QT延長症候群の2.9%にCNVを同定した。特に小児例においては、QT延長症候群1型(LQT1)に特徴的な症状である運動時や感情興奮によりQT延長を呈する場合や、積極的なCNVのスクリーニングが重要と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2013-05-15
更新日
-