文献情報
文献番号
201231064A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトiPS細胞を用いた致死的循環器疾患の病態解明と治療方法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-難治-一般-085
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
湯浅 慎介(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
致死的循環器疾患としては突然死症候群として知られている心筋イオンチャンネル遺伝子の突然変異による遺伝性QT延長症候群患者およびブルガダ症候群患者等よりiPS細胞を樹立し疾患解析を行っている。これらの疾患は根本的な治療方法はなく対処療法を行うことしかできず、突然死を防ぐ根本的な手立てがない。これまでの、これらの疾患解析は遺伝子改変マウスなどの実験動物や変異遺伝子をCHO細胞などに過剰発現させた細胞などを用いた疾患解析が中心であった。患者の心筋細胞で本当に起こっていることが、これらのモデルで本当に再現されているかも不明であった。すなわち適切なヒトの疾患モデルが存在せず、解析手法が無く新規治療方法の開発も期待はされていなかった。しかしながら、これらの患者からiPS細胞を作製し心筋細胞に分化することで、ヒトの生きた心筋細胞を用いた致死的循環器疾患モデルの構築が可能となり、疾患解析と新規治療方法の開発が可能となる。すなわち疾患特異的iPS細胞を原因遺伝子と表現型の関連を解明するための新たなツールとして用いることで、これまで明らかではなかった病態の発見や創薬につなげることが可能となる。
研究方法
iPS細胞樹立に関して、ヒト末梢血から分離した単核球細胞を培養皿上でCD3抗体とIL2にてT細胞を刺激し、3~5日間ほど培養するとT細胞は選択的に増殖しコロニーを形成してくる。センダイウィルスは活性化した細胞に選択的に感染・遺伝子導入されるために、同条件ではT細胞に選択的に感染する。患者から採血後、全単核球細胞の培養からのT細胞活性化を行い、センダイウィルス感染を経てiPS細胞樹立を行う。心筋細胞分化誘導に関しては、ヒトES細胞と同様にヒトiPS細胞も浮遊培養させることで胚様体を形成し、胚様体のまま培養を続けることで1~3週間で自己拍動を呈する細胞塊が得られる。拍動する細胞塊を選別し、RT-PCR、免疫染色等により各種心筋マーカー、イオンチャネルの発現と心筋細胞として典型的な形態を確認する。
結果と考察
ヒトiPS細胞は、様々な致死的循環器疾患を有する患者より、少量末梢血を用いて樹立可能であることが確認できた。また同iPS細胞は心筋細胞に分化誘導可能であり、様々な不整脈疾患の病気表現系が培養皿上で再現され、薬効評価などの各種解析が可能であることを確認した。これまではスクリーニング系構築のための基盤技術の構築を行っており、疾患iPS細胞を用いたドラッグクリーニングを行い、今後は未知の病態や新規治療法の開発を行っていく。
結論
本研究により、各種遺伝性致死的不整脈疾患の病態はiPS細胞を用いることにより再現可能であることが確認された。また同細胞を用いて、様々な薬剤評価も可能であることが確認された。今後はiPS細胞を用いた評価系により革新的治療方法の開発が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2013-06-11
更新日
-