文献情報
文献番号
201231062A
報告書区分
総括
研究課題名
TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)の病態の解明と診断基準作成に関する研究
課題番号
H23-難治-一般-083
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 孝彦(九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 石ヶ坪 良明(横浜市立大学 大学院医学研究科)
- 武井 修治(鹿児島大学 医学部)
- 鷲尾 昌一(聖マリア学院大学 看護学部 )
- 簑田 清次(自治医科大学 内科学講座)
- 楠原 浩一(産業医科大学 医学部)
- 高橋 裕樹(札幌医科大学 第一内科)
- 藤井 隆夫(京都大学 大学院医学研究科)
- 井田 弘明(久留米大学 医学部)
- 田平 知子(九州大学 生体防御医学研究所)
- 宮原 寿明(国立病院機構九州医療センター)
- 塚本 浩(九州大学 大学院医学研究院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
TNF受容体関連周期性症候群(TNF receptor-associated periodic syndrome: TRAPS)は、常染色体優性の家族性周期性発熱疾患である。繰り返す発熱に加えて、皮疹、筋痛、関節痛、腹痛、胸痛、結膜炎、眼窩周囲浮腫など多彩な症状を呈する代表的な自己炎症疾患の一つである。最終年の本年度には、わが国のすべてのTRAPS患者の情報を収集、解析し、わが国TRAPS患者の病態に即したTRAPS診療ガイドラインを作成した。ここに3年目の研究成果を発表する。
研究方法
3年目の本年度は、私どもの研究の過程で新たに診断されたTRAPSに加え、既報、未報のTRAPS症例を発掘した。これら症例について、症状、検査所見、家族歴などについて詳細に検討した。その結果をもとにわが国TRAPS患者の特徴をまとめ、欧米のTRAPS患者の特徴と比較した。
本年度は、遺伝子異常についても詳細に検討した。すなわちTRAPSにおけるTNFRSF1A遺伝子異常は、大きく構造に変化を与えてTNF受容体1型が細胞表面に発現できなくなる構造的変異と、細胞表面への発現は妨げられない非構造的変異の、2種類に分けられる。ヒト293T細胞の中に、蛍光色素GFPに各遺伝子異常cDNAを結合させた発現ベクターをトランスフェクションし、細胞内ならびに細胞表面でのTNF受容体1型の局在を検討した。
本年度は、遺伝子異常についても詳細に検討した。すなわちTRAPSにおけるTNFRSF1A遺伝子異常は、大きく構造に変化を与えてTNF受容体1型が細胞表面に発現できなくなる構造的変異と、細胞表面への発現は妨げられない非構造的変異の、2種類に分けられる。ヒト293T細胞の中に、蛍光色素GFPに各遺伝子異常cDNAを結合させた発現ベクターをトランスフェクションし、細胞内ならびに細胞表面でのTNF受容体1型の局在を検討した。
結果と考察
わが国で既報、未報すべてのTRAPS患者情報を収集し、わが国においては少なくとも35家系存在することを明らかした。わが国TRAPS患者の臨床症状や経過、遺伝子異常の詳細が本研究で初めて解明された。欧米のTRAPS患者と比較すると、発熱、皮疹、関節痛などの頻度は差がないが、腹痛、胸痛、筋肉痛、眼症状は本邦TRAPSできわめて乏しいことがわかった。TRAPSの症状に人種差があることがわかった。さらに遺伝子異常の種類によって、重症型、軽症型の大きく2種類に分類するが、遺伝子異常を見た時に2種類のどちらかを鑑別するための実験系を確立した。この系を用いて患者の症状や予後を若年時に早期から推測できるようになった。こうした一連の成果を反映させて、わが国初のTRAPS診療ガイドラインを完成した。
結論
わが国で初めてといえるTRAPS診療ガイドラインを作成した。わが国のTRAPSの実態は全く分かっていなかったが、本研究で臨床症状に特徴があることが分かった。その成果を今回の診療ガイドライン作成に反映した。TRAPS患者は主に欧米から報告されているが、わが国以外のアジア諸国からの報告は皆無といってよい。人種差に配慮した本ガイドラインはわが国のみならずアジアでも役立つことが期待される。臨床象、病態、診断方法、治療法について記載しており当研究班ホームページで公開している。
http://www.1nai-collagen-disease.com/
http://www.1nai-collagen-disease.com/
公開日・更新日
公開日
2013-05-27
更新日
-