文献情報
文献番号
201231061A
報告書区分
総括
研究課題名
家族性地中海熱の病態解明と治療指針の確立
課題番号
H23-難治-一般-082
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
右田 清志(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 中村 好一(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門 公衆衛生学)
- 上原 里程(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門 公衆衛生学)
- 谷内江 昭宏(金沢大学医薬保健研究域小児科講座)
- 上松 一永(信州大学医学研究科感染防御学)
- 増本 純也(愛媛大学大学院医学系研究科ゲノム病理学分野 プロテオ医学研究センター)
- 矢崎 正英(信州大学医学部内科学(脳神経内科、リウマチ・膠原病内科))
- 中村 昭則(信州大学医学部附属病院内科(脳神経内科、リウマチ・膠原病内科))
- 古川 宏(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
- 安波 道郎(長崎大学熱帯医学研究所)
- 井田 弘明(久留米大学医学部呼吸器・神経・膠原病内科)
- 寺井 千尋(自治医科大学附属さいたま医療センター アレルギー・リウマチ科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
典型的FMF(typical)、非典型的FMF(incomplete)のgenotype-phenotypeの関連を明らかにすると同時、これら2群を識別するのに有用な分類基準を作成することを目的とした。さらに血清などの臨床検体を用いたバイオマーカーの測定が両群の識別に有用であるか検討した。またFMFの遺伝形式は、常染色体劣性であるが、MEFV遺伝子変異がヘテロ接合であっても発症している症例が多く見られ、MEFV遺伝子以外の発症に関わる遺伝的要因の存在が示唆されている。FMFの発症に関わる修飾遺伝子についても解析を行った。
研究方法
当研究班で作成したFMFの診断基準を満たすFMF症例をTel-Hashomerの診断基準を参照にTypical(典型例)とIncomplete(不完全型)に分類した。
具体的には下記の分類基準の
①12時間から4日間続く38℃以上の発熱を3回以上繰り返す
②漿膜炎、関節炎、発作を3回以上繰り返す
①②のいずれかを有するものを典型例
①②のいずれの所見を有さない症例を不完全型として2群に分類した。
これら2群(Typical vs Incomplete)の臨床所見を個人調査票から調べ、2群間で単変量解析を行い、統計学的に有意な項目(p<0.05)を用い多変量解析を行った。
バイオマーカーの測定は、臨床像と遺伝子解析から、家族性地中海熱典型例ならびに非典型例と診断した症例を対象とした。発作時ならびに発作間歇期の血清サイトカインをIL-18はELISAによって、他のサイトカインはCBA flex beads法で測定した。
遺伝子多型の解析はFMFの確定診断がなされた89名のFMF患者を対象としインフラマゾーム関連分子の遺伝子多型を解析した。
具体的には下記の分類基準の
①12時間から4日間続く38℃以上の発熱を3回以上繰り返す
②漿膜炎、関節炎、発作を3回以上繰り返す
①②のいずれかを有するものを典型例
①②のいずれの所見を有さない症例を不完全型として2群に分類した。
これら2群(Typical vs Incomplete)の臨床所見を個人調査票から調べ、2群間で単変量解析を行い、統計学的に有意な項目(p<0.05)を用い多変量解析を行った。
バイオマーカーの測定は、臨床像と遺伝子解析から、家族性地中海熱典型例ならびに非典型例と診断した症例を対象とした。発作時ならびに発作間歇期の血清サイトカインをIL-18はELISAによって、他のサイトカインはCBA flex beads法で測定した。
遺伝子多型の解析はFMFの確定診断がなされた89名のFMF患者を対象としインフラマゾーム関連分子の遺伝子多型を解析した。
結果と考察
【FMFの典型例と非定型例の臨床像の解析】FMF症例の全国疫学調査の結果より、本邦のFMF症例は、典型例に加え非典型例が一定数存在することが明らかになった。この両者を識別する目的で、典型例と非典型例の2群を比較し、単変量解析、多変量解析を行った。その結果、発熱期間(4日以内)に加え、遺伝子変異(exon10およびexon3)が独立して2群を識別する因子として抽出された。これら項目を中心に2群を識別するスコア―を作成した。
【FMF診断に有用なバイオマーカーの探索】FMFの診断に有用なバイオマーカーを明らかにする目的で、血清サイトカインプロファイルを解析した。その結果、FMF典型例、あるいはexon10に変異を有するFMF症例で血清IL-18の上昇が観察され、この上昇は発作間歇期にも観察された。一方、非典型例、exon3 variants症例においては血清IL-18の上昇は認めず、血清IL-18の測定が典型例と非典型例の識別に有用であることが判明した。
【FMF発症に関与する遺伝子多型】FMF発症に関与するMEFV遺伝子以外の遺伝的要因を明らかにする目的で、HLA、インフラマソーム関連分子の遺伝子多型を解析した。その結果、AAアミロイドーシスのリスク因子であるSAA1.3アレル、SAA-13Tアレルが健常人に比べFMF患者で有意に増加していることが判った。その成果としてまたFMF患者では健常人に比べHLA-B40保有率が有意なことが判った。
その他の成果としてFMFの経過中にTolosa-Hunt症例などの多彩な神経合併症を併発した症例が見い出された。MEFV遺伝子変異が肥大性骨関節の発症、増悪に関与する可能性も示された。インフラマソームを構成する分子をタグ化することより、in vitroでインフラマソーム形成を誘導するアッセイ系が確立された。
【FMF診断に有用なバイオマーカーの探索】FMFの診断に有用なバイオマーカーを明らかにする目的で、血清サイトカインプロファイルを解析した。その結果、FMF典型例、あるいはexon10に変異を有するFMF症例で血清IL-18の上昇が観察され、この上昇は発作間歇期にも観察された。一方、非典型例、exon3 variants症例においては血清IL-18の上昇は認めず、血清IL-18の測定が典型例と非典型例の識別に有用であることが判明した。
【FMF発症に関与する遺伝子多型】FMF発症に関与するMEFV遺伝子以外の遺伝的要因を明らかにする目的で、HLA、インフラマソーム関連分子の遺伝子多型を解析した。その結果、AAアミロイドーシスのリスク因子であるSAA1.3アレル、SAA-13Tアレルが健常人に比べFMF患者で有意に増加していることが判った。その成果としてまたFMF患者では健常人に比べHLA-B40保有率が有意なことが判った。
その他の成果としてFMFの経過中にTolosa-Hunt症例などの多彩な神経合併症を併発した症例が見い出された。MEFV遺伝子変異が肥大性骨関節の発症、増悪に関与する可能性も示された。インフラマソームを構成する分子をタグ化することより、in vitroでインフラマソーム形成を誘導するアッセイ系が確立された。
結論
本邦のFMF症例に含まれる非典型症例の臨床像を解析した。その結果、非典型症例では、典型例に比べ、発熱発作期間が4日以内ではなく、MEFV遺伝子exon10変異例が少なくexon3変異例が多いことが判った。血清サイトカインの解析では、典型例では血清IL-18が発作時、発作間歇期を通して接続的に上昇しており、異典型例ではこのような所見を認めないことが明らかになった。このような遺伝的特徴、臨床所見、サイトカインプロファイル等で、典型例と非定型例の識別が可能と考えられた。また本邦FMF症例においてはその発症に、MEFV遺伝子以外の遺伝的要因の存在が示唆されており、その1つとしてSAA1遺伝子多型、HLA遺伝子の関与が考えられた。
公開日・更新日
公開日
2013-05-30
更新日
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