文献情報
文献番号
201231052A
報告書区分
総括
研究課題名
Usher症候群に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-072
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 岩崎 聡(信州大学医学部附属病院人工聴覚器学講座)
- 工 穣(信州大学医学部 耳鼻咽喉科学講座)
- 村田 敏規(信州大学医学部眼科学講座)
- 熊川 孝三(虎の門病院 耳鼻咽喉科・聴覚センター )
- 東野 哲也(宮崎大学医学部 耳鼻咽喉科学講座 )
- 佐藤 宏昭(岩手医科大学耳鼻咽喉科学講座)
- 長井今日子(群馬大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)
- 石川 浩太郎(自治医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
- 池園 哲郎(埼玉医科大学耳鼻咽喉科学講座)
- 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院)
- 福島 邦博(岡山大学大学院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)
- 松本 希(九州大学医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Usher症候群は視覚・聴覚の重複障害となり日常生活に多大な支障を来す疾患であるため、どのようにQOLを確保するかが大きな課題となっている。海外では現在までに9つの原因遺伝子が報告されており遺伝子診断が可能となってきた。また、介入法としては視覚障害・聴覚障害とも適切な介入法は無い状況であったが、近年人工内耳の発達により、聴覚障害に関しては医学的介入によりQOLを改善することが可能となってきたため、治療指針の確立が望まれている。本研究ではUsher症候群に関する疫学調査および遺伝子解析を行い、遺伝子診断を用いた新しい診断法の開発、遺伝子診断に基づいた新しい治療ガイドラインの確立を目的にしている。
研究方法
Usher症候群患者の実態把握
Usher症候群患者の臨床像および治療法の把握を行うことを目的に、分担研究者・研究協力者の所属する全国13施設において臨床実態の調査を行った。視覚症状、聴覚症状、前庭機能評価を調査した。
臨床情報の収集およびDNAバンクの構築
患者選定基準を満たす患者を対象に、十分な説明の上、書面で同意を得て臨床情報調査項目の調査を行い、患者の実態把握を行った。また、遺伝子解析を行うための採血を行い臨床情報と併せてデータベースに登録しバンクの構築を行った。
日本におけるUsher症候群患者の原因遺伝子解析
Usher症候群の原因遺伝子として報告されている9遺伝子のうち、欧米において頻度が高いとされるMYO7A、CDH23、USH2A遺伝子の直接シークエンス解析を行った。また、Usher症候群Type1症例では、生下時より重度難聴であるのに対して、網膜色素変性症は思春期以降に自覚するため、当初は非症候群性感音難聴と区別が困難なため、非症候群性感音難聴症例96例に関しても同様に遺伝子解析を実施した。また、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析を行った。
網膜色素変性症患者の会、日本盲ろう者協会との連携
網膜色素変性症の患者の会(JRPS・日本網膜色素変性症協会)の会報に本研究班の研究内容と協力依頼の広告を行った。また、日本盲ろう者協会と打ち合わせを行い、生活のハンディキャップにおけるアンケート調査を実施した。また、第21回全国盲ろう者大会(愛媛)に参加し、Usher症候群に関する講演を行うとともに、会場でインフォームドコンセントおよびのDNAサンプルの収集を行いサンプルを収集した。
Usher症候群患者の臨床像および治療法の把握を行うことを目的に、分担研究者・研究協力者の所属する全国13施設において臨床実態の調査を行った。視覚症状、聴覚症状、前庭機能評価を調査した。
臨床情報の収集およびDNAバンクの構築
患者選定基準を満たす患者を対象に、十分な説明の上、書面で同意を得て臨床情報調査項目の調査を行い、患者の実態把握を行った。また、遺伝子解析を行うための採血を行い臨床情報と併せてデータベースに登録しバンクの構築を行った。
日本におけるUsher症候群患者の原因遺伝子解析
Usher症候群の原因遺伝子として報告されている9遺伝子のうち、欧米において頻度が高いとされるMYO7A、CDH23、USH2A遺伝子の直接シークエンス解析を行った。また、Usher症候群Type1症例では、生下時より重度難聴であるのに対して、網膜色素変性症は思春期以降に自覚するため、当初は非症候群性感音難聴と区別が困難なため、非症候群性感音難聴症例96例に関しても同様に遺伝子解析を実施した。また、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析を行った。
網膜色素変性症患者の会、日本盲ろう者協会との連携
網膜色素変性症の患者の会(JRPS・日本網膜色素変性症協会)の会報に本研究班の研究内容と協力依頼の広告を行った。また、日本盲ろう者協会と打ち合わせを行い、生活のハンディキャップにおけるアンケート調査を実施した。また、第21回全国盲ろう者大会(愛媛)に参加し、Usher症候群に関する講演を行うとともに、会場でインフォームドコンセントおよびのDNAサンプルの収集を行いサンプルを収集した。
結果と考察
Usher症候群の臨床的特徴および治療実態
研究分担者の所属する13施設において、臨床像の詳細に調査を行ったところ、本邦においても臨床像に基づいて大きく3つのサブタイプに分類可能である事が明らかとなった。しかし、どのタイプか判定できない症例が多数あり、分類基準の曖昧さに原因があると考えられた。特に、前庭機能障害に関しては、めまい症状を自覚していないケースも存在するため、カロリックテストなどの前庭機能検査が重要であることが示唆された。そこで、全国統一した臨床的タイプ分類を実施することを目的に、タイプ分類のためのフローチャートを論文化して提唱した。
本邦におけるUsher症候群の遺伝子変異解析
分担研究施設より収集されたUsher症候群患者を診断基準(試案)に基づいてタイプ分類すると、タイプ1は21.6%、タイプ2は 27%、タイプ3は24.3%、非典型例は27%であった。Usher症候群type1に分類された10症例を対象にMYO7A遺伝子の解析を行った結果、5症例(50%)で原因遺伝子変異が見出された。遺伝子変異の頻度としては海外の報告とほぼ同程度であり、Usher症候群の原因遺伝子として主要な部分を占めることが明らかとなった。また、非症候群性感音難聴症例96例に関しても遺伝子解析を実施した結果、1例よりMYO7Aの遺伝子変異が同定された。当該症例は遺伝子診断後に、眼科的な精査により網膜色素変性症と診断され、今後の視覚障害の進行を考慮して、両耳に人工内耳を装用するなどの介入を行った。このように、遺伝子診断は網膜色素変性症の発症予測診断として有用であることを示すことができた。
研究分担者の所属する13施設において、臨床像の詳細に調査を行ったところ、本邦においても臨床像に基づいて大きく3つのサブタイプに分類可能である事が明らかとなった。しかし、どのタイプか判定できない症例が多数あり、分類基準の曖昧さに原因があると考えられた。特に、前庭機能障害に関しては、めまい症状を自覚していないケースも存在するため、カロリックテストなどの前庭機能検査が重要であることが示唆された。そこで、全国統一した臨床的タイプ分類を実施することを目的に、タイプ分類のためのフローチャートを論文化して提唱した。
本邦におけるUsher症候群の遺伝子変異解析
分担研究施設より収集されたUsher症候群患者を診断基準(試案)に基づいてタイプ分類すると、タイプ1は21.6%、タイプ2は 27%、タイプ3は24.3%、非典型例は27%であった。Usher症候群type1に分類された10症例を対象にMYO7A遺伝子の解析を行った結果、5症例(50%)で原因遺伝子変異が見出された。遺伝子変異の頻度としては海外の報告とほぼ同程度であり、Usher症候群の原因遺伝子として主要な部分を占めることが明らかとなった。また、非症候群性感音難聴症例96例に関しても遺伝子解析を実施した結果、1例よりMYO7Aの遺伝子変異が同定された。当該症例は遺伝子診断後に、眼科的な精査により網膜色素変性症と診断され、今後の視覚障害の進行を考慮して、両耳に人工内耳を装用するなどの介入を行った。このように、遺伝子診断は網膜色素変性症の発症予測診断として有用であることを示すことができた。
結論
本研究で実施した調査の結果より、本邦においても、海外と同様に臨床症状に基づいたタイプ分類が可能であることが示唆された。しかし、どのタイプか判定できない症例があったため、タイプ分類のためのフローチャートを作成し提唱した。また、遺伝子解析においては、MYO7A、CDH23、PCDH15、USH2A、CLRN1の遺伝子変異を見出し報告した。特に次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析手法が非常に有用であることを示した。今後の次世代シークエンサーを用いた遺伝子診断技術の発達と普及が期待される。
公開日・更新日
公開日
2013-06-04
更新日
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