文献情報
文献番号
201231051A
報告書区分
総括
研究課題名
VATER症候群の臨床診断基準の確立と新基準にもとづく有病率調査およびDNAバンク・iPS細胞の確立
課題番号
H23-難治-一般-071
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 高山 真一郎(独立行政法人国立成育医療研究センター)
- 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター遺伝科)
- 小崎 里華(独立行政法人国立成育医療研究センター・器官病態系内科部・遺伝診療科)
- 岡本 伸彦(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター・遺伝診療科)
- 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー中央病院 臨床第一部)
- 工藤 純(慶應義塾大学医学部)
- 星野 健(慶應義塾大学医学部)
- 赤松 和土(慶應義塾大学医学部)
- 谷口 善仁(慶應義塾大学医学部)
- 加部 泰明(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
VATER症候群は、V: 椎体異常、A:肛門奇形(鎖肛など)、TE:気管食道瘻、R:腎奇形あるいは橈骨奇形という5徴候の頭文字の組み合わせに由来する。原因は不明である上に多彩な合併症を呈する難治性疾患である。
本研究では多角的見地から病像・疫学・発症機転について検討した。
本研究では多角的見地から病像・疫学・発症機転について検討した。
研究方法
整形外科的見地からはVATER 症候群に合併する橈側列異常の特徴を小児外科的には消化管奇形(食道奇形・鎖肛)から疫学的な検討を行った。VATER症候群は、新生児期より、多系統の症状・所見を呈する。多くの例で数回以上にわたって外科手術を必要とし、栄養管理、感染対策、リハビリテーションを要する。新生児期、乳児期、幼児期、学童期、成人期と問題点も変遷する。そこでフォローアップのためのガイドライン(案)を作成した。VATER症候群の発症機転は不明であるが、研究代表者はニワトリ胚にアドリアマイシンを局所投与することにより上部消化管の異常(食道閉鎖等)が発生することを示した。発生が比較的速く、遺伝子操作が可能な動物モデルとしてゼブラフィッシュによるVATER症候群モデルを作成した。VATER症候群の発症機転は不明であるが、感染症や環境因子の関与は否定的で遺伝子変異によって発症していると予測され、次世代シーケンサーによる解析を進めた。同定された疾患候補遺伝子と生物学的関連を有する遺伝子群を同定するためにトロント大学が開発したプログラムGeneMANIAを適用する方法を試みた。(倫理的配慮)個人情報の保護に関する法律・「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」「疫学研究指針」を遵守し、倫理委員会の承認下に研究を実施した。
結果と考察
VATER症候群の橈側列異常について、高度専門医療機関(国立成育医療研究センター)8年間のVATER連合の部分症状としての橈側列異常症13例を検討した。1)軸前性多指症を2 例(15%)、橈側列形成不全を11 例・17肢(85%)に認めた。2)軸前性多指症の2 例では,尺側母指低形成の非典型的な軸前性多指症を呈していた。3)橈側列形成不全では,母指形成不全と橈骨形成不全を合併する重症型が多いことが明らかとなった。4)手術治療を13 例中9 例に行っており、その中の3 例では、全身合併症により手術時期が遅れていた。特に気管軟化症や気管支喘息を合併する症例では、周術期の呼吸器系の管理が必要であった。
小児外科的な合併症の実態について全国調査を行った。一次調査にてVATER症候群の治療経験ありとの回答を得た111施設に二次調査を実施し、回答の得られた120例を対象として小児外科的な合併奇形を総括した。食道閉鎖症の病型であるGross分類では、回答のあった84例中、A型が7例、B型が1例、C型が74例、D型が2例で、食道閉鎖症全般でいわれている頻度と同様で、C型が圧倒的多数を占めた。十二指腸閉鎖を示した症例を10例に認め、注意すべき合併症と考えられた。鎖肛症例のうち、低位鎖肛は29.5%と最も多く、次いで高位鎖肛が25%、残り中間位鎖肛が17.5%であった。中間位症例は主に直腸尿道瘻であった。神奈川県における先天異常モニタリングプログラム(KAMP)1981年から2008年のKAMP終了までの間の26年6ヶ月のうち、1989-2000-200828737症例について解析した。食道閉鎖(TE)を手掛かりとして、観察期間に99例の食道閉鎖症例を把握、18トリソミーが15例(15%)含まれていた。99例の中で鎖肛(A)を伴う例が17例で、2例の18 トリソミー、1例の汚溝外反シーケンス、外性器異常と鼻腔閉鎖を伴うCHARGE症候群を強く疑う1例、などが含まれた。この明らかに既知の他疾患とされる4例を除いた14例のTE+A症例のうち、腎奇形(R)を伴うものは3例、心奇形を合併する例が4例だった。ほかに横隔膜ヘルニアを1例認めた。VATER症候群の動物モデルとして、アドリアマイシン曝露胚を用いた検討と次世代シーケンサーを用いた検討により、発症メカニズムに関する多角的な検討も行った。RNA結合タンパクが疾患原因候補遺伝子であることを示した。
小児外科的な合併症の実態について全国調査を行った。一次調査にてVATER症候群の治療経験ありとの回答を得た111施設に二次調査を実施し、回答の得られた120例を対象として小児外科的な合併奇形を総括した。食道閉鎖症の病型であるGross分類では、回答のあった84例中、A型が7例、B型が1例、C型が74例、D型が2例で、食道閉鎖症全般でいわれている頻度と同様で、C型が圧倒的多数を占めた。十二指腸閉鎖を示した症例を10例に認め、注意すべき合併症と考えられた。鎖肛症例のうち、低位鎖肛は29.5%と最も多く、次いで高位鎖肛が25%、残り中間位鎖肛が17.5%であった。中間位症例は主に直腸尿道瘻であった。神奈川県における先天異常モニタリングプログラム(KAMP)1981年から2008年のKAMP終了までの間の26年6ヶ月のうち、1989-2000-200828737症例について解析した。食道閉鎖(TE)を手掛かりとして、観察期間に99例の食道閉鎖症例を把握、18トリソミーが15例(15%)含まれていた。99例の中で鎖肛(A)を伴う例が17例で、2例の18 トリソミー、1例の汚溝外反シーケンス、外性器異常と鼻腔閉鎖を伴うCHARGE症候群を強く疑う1例、などが含まれた。この明らかに既知の他疾患とされる4例を除いた14例のTE+A症例のうち、腎奇形(R)を伴うものは3例、心奇形を合併する例が4例だった。ほかに横隔膜ヘルニアを1例認めた。VATER症候群の動物モデルとして、アドリアマイシン曝露胚を用いた検討と次世代シーケンサーを用いた検討により、発症メカニズムに関する多角的な検討も行った。RNA結合タンパクが疾患原因候補遺伝子であることを示した。
結論
整形外科的見地からはVATER 症候群に合併する橈側列異常の特徴を小児外科的には消化管奇形(食道奇形・鎖肛)から疫学的な検討を行った。これらの疫学的検討結果を勘案し、フォローアップのためのガイドライン案を作成した。さらにVATER症候群の動物モデルとして、アドリアマイシン曝露胚を用いた検討と次世代シーケンサーを用いた検討により、発症メカニズムに関する多角的な検討を行った。RNA結合タンパクが疾患原因候補遺伝子であることが示された。
公開日・更新日
公開日
2013-05-30
更新日
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