混合性結合組織病の病態解明、早期診断と治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201231046A
報告書区分
総括
研究課題名
混合性結合組織病の病態解明、早期診断と治療法の確立に関する研究
課題番号
H23-難治-一般-030
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 俊治(藤田保健衛生大学 医学部リウマチ・感染症内科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 尚(名古屋市立大学医学研究科 生体機能分子医学細胞分子生物学)
  • 川口 鎮司(東京女子医科大学リウマチ科)
  • 川畑 仁人(東京大学医学部付属病院アレルギーリウマチ内科)
  • 桑名 正隆(慶応義塾大学医学部リウマチ内科)
  • 田中 住明(北里大学医学部膠原病感染内科学)
  • 中西 宣文(国立循環器病研究センター研究所肺高血圧先端医療学研究部)
  • 深谷 修作(藤田保健衛生大学 医学部 リウマチ・感染症内科 )
  • 藤井 隆夫(京都大学大学院医学研究科 リウマチ性疾患制御学講座)
  • 松下 雅和(順天堂大学医学部膠原病内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,316,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
混合性結合組織病(MCTD)には肺動脈性肺高血圧症(PAH)や間質性肺炎(IP)など生命予後に影響を及ぼす病態が存在する。そこで、MCTDの発症や病態形成に関与する因子、PAHの(早期)診断、病態解明を目的とした。
研究方法
1. MCTD発症に関与する因子
 生体試料バンク(連結可能匿名化を施した詳細な臨床情報を含む)の拡充を進めながら、全ゲノム関連解析を行った(プロジェクト研究)。独自に開発した抗核抗体産生系マウスで、follicular helper T細胞への分化に関与する因子、自己抗体産生follicular helper T細胞のサブセットを検討した。臨床調査個人票を用いてMCTD発症に至るまでのステップ数の検討を行った。
2. MCTDの病態形成に関与する因子
 抗U1RNP抗体により産生が亢進するType1インターフェロン(IFN)が肺血管に与える影響を検討した。 IPや肺動脈狭窄に関連するFos-related antigen-1(Fra-1)の発現を末梢血単球、肺組織で検討した。 抗ARS抗体のMCTDでの陽性率、関与する病態を検討した。
3. PAHの病態解明
 End-PATを用いて指尖動脈のNO依存性血管拡張能をレイノー現象、PAHに関して検討した。膠原病性PAHの剖検例を用いて、肺静脈閉塞性病変(POV)の有無、程度と臨床パラメーターを比較検討した。
4. PAHの(早期)診断
 NOS2遺伝子多型の偏りとPAH発症との関連を検討した(プロジェクト研究)。平成22年度に改訂したMCTDのPAH診断の手引きの感度・特異度を検証した(プロジェクト研究)。安静時に三尖弁圧較差の増加を認めない膠原病患者における運動負荷心エコー検査の有用性を検討した。
結果と考察
1. MCTD発症に関与する因子
 生体試料バンクに461例が収集された。288例の解析では全身性エリテマトーデス(SLE)と強皮症(SSc)両者に共通する遺伝子が抽出された。バンクの充実、MCTDの病態別遺伝子解析も必要である。抗U1-RNP抗体産生に関与するCXCR5-follicular helper T細胞サブセットがヒトでも存在し、その分化には腸内フローラやBcl-6が関与していた。自己抗体産生機序の解明やMCTDに特異的な治療法の開発に結びつく可能性がある。MCTDの発症には3ステップの変化が必要で、MCTDに認められる遺伝子異常も3グループに分けられる可能性が示された。
2. MCTDの病態形成に関与する因子
 肺動脈内皮細胞や肺微小血管細胞などへのIFN刺激で、PAHに関与するRANTES、fractalkineが増加した。抗U1RNP抗体がIFNを介してPAH発症に関与する可能性を示すものである。MCTD・SSc患者の末梢血単球、肺組織の単核球、線維芽細胞ではFra-1の高発現を認め、Fra-1がIPやPHに関与する可能性が考えられた。MCTDと多発性筋炎・皮膚筋炎とで抗ARS抗体陽性患者での背景となる病態は異なっており、抗ARS抗体産生機序の異なる可能性が示された。
3. PHの病態解明
 レイノー現象、PHを有する患者でNO依存性血管拡張能は低下し、両者とも指尖動脈レベルの血管でのNO依存性拡張障害に関連性のあることが示された。膠原病性PAHではPOVは高頻度で、POV率は肺循環動態と関連していた。POVは膠原病性PAHにおいて重要な病態と考えられた。
4. PHの(早期)診断
 NOS2遺伝子多型はMCTD、SScではPAH発症に関与し、SLEでは関与せず、PAHの発症機序の異なる可能性が示された。
 平成22年度に改訂したMCTDのPAH診断の手引きの感度・特異度は94.3%、75.0%で、従来の手引き(73.1%、79.2%)より優れていた。安静時心エコー検査で検出できないPHを、運動負荷心エコー検査で検出しえた。運動負荷心エコー検査はPHスクリーニングツールの一つと考えられた。
結論
1. 診断
 短期的には改訂MCTDのPAH診断の手引き普及に努める。中期的にはゲノム解析結果も含めた、早期診断を目指したMCTD診断基準の作成が望まれる。また、NOS2遺伝子多型などの解析結果や種々のBiomarkerなども含め、低侵襲でさらに早期診断が可能なPAH診断基準/手引きの作成が期待される。
2. 治療
 中期的にはMCTDの様々な病態の改善が期待できる治療法の提示が必要であり、PAHや自己抗体に関連する臨床研究の継続が必要である。長期的にはMCTDの病因解明や抗U1RNP抗体産生に対する特異的な治療が望まれる。遺伝子解析やCXCR5-follicular helper T細胞サブセット、Fra-1などの基礎的研究は特異的治療につながる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2013-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231046Z