門脈血行異常症に関する調査研究

文献情報

文献番号

201231042A

報告書区分

総括

研究課題名

門脈血行異常症に関する調査研究

課題番号

H23-難治-一般-026

研究年度

平成24(2012)年度

研究代表者(所属機関)

森安　史典(東京医科大学　内科学第四講座)

研究分担者(所属機関)

橋爪　誠(九州大学大学院医学研究院　先端医療医学講座)
川崎　誠治(順天堂大学医学部　肝胆膵外科)
北野　正剛(大分大学)
前原　喜彦(九州大学大学院医学研究院　消化器・総合外科)
馬場　俊之(昭和大学医学部　消化器内科学)
塩見　進(大阪市立大学大学院医学研究科　核医学)
小嶋　哲人(名古屋大学大学院医学系研究科　医療技術学専攻病態解析学講座　)
國吉　幸男(琉球大学大学院　胸部心臓血管外科学講座)
廣田　良夫(大阪市立大学大学院医学研究科　公衆衛生学)
中沼　安二(金沢大学大学院医学系研究科・医薬保健学域医学類　形態機能病理学)
鹿毛　政義(久留米大学医学部　病理学教室)
松谷　正一(千葉県立保健医療大学健康科学部　看護学科)
江口　晋(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科　移植・消化器外科)
吉田　寛(日本医科大学多摩永山病院　外科)
福井　博(奈良県立医科大学医学部第三内科　消化器病学・肝臓病学)
小原　勝敏(福島県立医科大学附属病院　内視鏡診療部)
坂井田　功(山口大学大学院医学系研究科　消化器病態内科学)
國分　茂博(順天堂大学医学部附属練馬病院　消化器内科)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金疾病・障害対策研究分野難治性疾患等克服研究（難治性疾患克服研究）

研究開始年度

平成23(2011)年度

研究終了予定年度

平成25(2013)年度

研究費

10,770,000円

研究者交替、所属機関変更

-

研究報告書（概要版）

研究目的

本研究班では、原因不明で門脈血行動態の異常をきたす、特発性門脈圧亢進症（IPH）、肝外門脈閉塞症（EHO）、バッド・キアリ症候群（BCS）を対象疾患として、基礎的・臨床的な検討を加え、その病因病態を解明することを目的とする。本研究により、これら3疾患の診断精度の向上が期待され、治療法の選択や術式の改善により予後の向上が期待できる。

研究方法

１）病理学的・分子生物学的検討、２）臨床的検討、３）疫学的検討、の各側面から研究を行った。基礎的分野では最新の分子生物学的手法や病理学的検討を行うことで、門脈血行異常症の病因病態をより深く解明する。また、臨床分野では、検体保存センターの活用、門脈血管や異常血行路の血行動態の解析、門脈圧亢進症における脾摘術・シャント術や肝移植などの手術成績を検討した。疫学的検討では臨床疫学特性をモニタリングするためのシステム（定点モニタリングシステム）を構築して登録を進めた。

結果と考察

【病理学的・分子生物学的検討】、IPH患者の末梢血リンパ球の検討から、CD4+，CD8+細胞が減少し，それに伴い活性化リンパ球も減少している免疫異常を見いだした。
　DNAチップを用いた網羅的遺伝子解析を行い、IPHでは、ADA、T-cell系やB-cell系等に関連する遺伝子群の発現が低下しており、免疫系に関わるpathwayが多く関与していることが示された。
新たなBudd-Chiari症候群（BCS）の分類を提唱した。BCSは２つの病型、すなわち狭義のBCSとHepatic venous outflow obstruction（HVOO）に分類した。この分類は、BCSとHVCSの其々に成因、臨床経過、予後が異なるので、治療方針の決定や経過観察を行う上で有用である。
【臨床的検討】せん断弾性波の伝播速度から組織硬度を定量化する超音波的手法を用いて、肝臓と脾臓の硬度を測定した結果、特発性門脈圧亢進症では，肝臓と脾臓の硬度に違いがあることを見出した。門脈血栓症ではD-dimerは線溶能や血栓の線溶反応性など様々な病態を反映していることが推察された。
検体保存センターとして全国から集められた検体の匿名化の円滑な運営体制を確立した。
【疫学的検討】
研究班・班員の所属施設および関連病院の協力を得て、定点モニタリングシステムを構築して登録を進めた。これにより、患者の臨床疫学特性の経時的なモニタリングのみならず、手術率や死亡率、手術や死亡に対する予測因子の検討等を行なった。

結論

最新の分子生物学的手法を用いた研究や、臨床的検討・疫学的検討を行う事で、門脈血行異常症（IPH、EHO、BCS）の病因病態をより深く解明し適確な治療選択が行えるようになった。