急性高度難聴に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231037A
報告書区分
総括
研究課題名
急性高度難聴に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-021
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小川 郁(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 喜多村 健(東京医科歯科大学 医学部)
  • 中島 務(名古屋大学 医学部)
  • 宇佐美 真一(信州大学 医学部)
  • 岡本 牧人(北里大学 医学部)
  • 暁 清文(愛媛大学 医学部)
  • 福田 諭(北海道大学 医学部)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学 医学部)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部)
  • 原 晃(筑波大学 医学部)
  • 福島 邦博(岡山大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では対象疾患を1)急性高度感音難聴(突発性難聴、外リンパ瘻、ムンプス難聴、急性低音障害型感音難聴、急性音響性難聴)と2)進行性または慢性高度感音難聴(遺伝性難聴、特発性進行性感音難聴、老人性難聴、騒音性難聴)として、各疾患の難聴発症メカニズムを解明し、その治療・予防法を確立することが目標である。今回は特に10年毎に行ってきた急性感音難聴の全国疫学調査を実施することと、これまで作成してきた診断基準を見直し、新しい診断基準に基づいた診療ガイドラインを作成すること、高度感音難聴発症に関与する遺伝子または遺伝子変異を検出し、難聴発症機構を分子細胞レベルで解明することを大きな目的とする。
研究方法
本研究は3年計画であり、本年度は多施設横断的研究で各疾患の1)疫学調査、2)発症や予後に関連する遺伝子または遺伝子異常の検出、3)QOLへの影響、4)発症と予後に関わる活性酸素やバイオマーカーの検索、5)新しい鼓室内局所療法の有効性の検証、6)各疾患の診断基準の見直しと、診療ガイドラインの作成を目的に2年目の研究を行なった。一方で各施設での独創的なアプローチによる3T-MRIによる内耳画像診断法などの新しい診断法や各種実験動物モデルの検討による急性高度感音難聴の発症機序の解明と新しい治療法の確立を目指した研究を継続した。
結果と考察
1. 疫学・診断:(1) 10年に1回の突発性難聴の疫学調査のため、疫学調査班(小橋元班員)と準備したが、今回は岩手、愛知、愛媛県での地域調査を行なうことにした。(2) 外リンパ瘻調査研究班と協力して外リンパ瘻の診断基準の見直しを行った。来年度に最終案を確定する。(3) 突発性難聴をはじめとする急性感音難聴のQOLについて調査票を用いての調査を行い、その結果を報告した(日本聴覚医学会、日本耳科学会)。 (4)各急性高度難聴の診断基準を見直した。その結果から、診療ガイドライン作成のためのコンテンツと役割分担を決めた。
2. 実験動物モデルによる検討:(1) プロサポシン由来合成ペプチド、セラミド、sphingosine-1-phosphate (S1P)受容体(S1PR)アンタゴニスト、アデノシン受容体阻害薬の急性感音難聴に対する効果について検討した。(2) 副腎皮質ステロイドの鼓室内投与に関する実験的検討を行った。 (3) 突発性難聴モデル、急性音響性難聴モデル、薬剤性難聴モデルを用いてフリーラジカルスカベンジャー、アポトーシス抑制関連薬剤、アルドース還元酵素阻害薬、ナノカプセル型人工酸素運搬体による治療および予防効果について検討した。
3. 難聴遺伝子による難聴発症機構の解析: (1) 突発性難聴の関連遺伝子の検索を行った。ゲノムワイドの相関解析等の手法を用いて特発性両側性感音難聴の原因遺伝子の解析を進めた。(2)「難治性内耳疾患の遺伝子バンク構築研究班」の遺伝子バンク構築事業を継続した。本年度まで217例の検体を登録した。
4.急性感音難聴の病態と臨床像に関する研究
5. 急性感音難聴診断のための画像診断法確立:(1) 7T-MRIを用いて内耳動脈の撮像を試みた。(2) 急性低音障害型感音難聴の内耳MRI水腫所見について検討した。(3) Optical Coherence Tomographyを用いた内耳画像診断法の可能性について検討した。
6. 治療:(1) 急性高度感音難聴の新しい治療法としてのステロイド鼓室内注入療法の多施設臨床試験を行った。(2) 2005年度から行ってきた急性低音障害型感音難聴の単剤治療の臨床成績を解析、終了した。
結論
超高齢社会を迎えて10年後には聴覚障害者は3~4倍にも増加すると予測されている。突発性難聴の発症者数は2002年の疫学調査研究班との共同調査で年間約35,000人、人口100万人対で275人の罹患率と考えられている。1993年の疫学調査と比較して約1.5倍に増加しており、今回、最新の疫学調査を行うことによって、最新の動向が明らかにできる。また、 各急性高度難聴の診断基準の見直しを行い、その結果から、今年度末の完成を目標に急性高度難聴診療ガイドラインを作成中である。エビデンスに基づいた急性高度難聴診療ガイドラインによって急性高度難聴診療の標準化が進むものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231037Z