運動失調症の病態解明と治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201231030A
報告書区分
総括
研究課題名
運動失調症の病態解明と治療法開発に関する研究
課題番号
H23-難治-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 秀直(北海道大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学 医学部)
  • 岡澤 均(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
  • 吉良 潤一(九州大学 大学院医学研究院)
  • 祖父江 元(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 瀧山 嘉久(山梨大学 医学部)
  • 武田 篤(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 田中 真樹(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 辻 省次(東京大学 医学部附属病院)
  • 永井 義隆(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
  • 中島 健二(鳥取大学 医学部医学科)
  • 中村 和裕(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 西澤 正豊(新潟大学 脳研究所)
  • 貫名 信行(独立行政法人理化学研究所)
  • 水澤 英洋(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 宮井 一郎(社会医療法人大道会森之宮病院)
  • 吉田 邦広(信州大学 医学部)
  • 若林 孝一(弘前大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
51,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊髄小脳変性症(SCD)及び多系統萎縮症(MSA)について、原因と病態機序を解明し、創薬標的分子の同定、創薬シーズの探索、診断・治験評価に有用な指標を開発する。リハビリテーションの有効性を検証する。
研究方法
原因不明の遺伝性SCAの家系を集積して当該遺伝子/起因変異を同定する。関連解析によりMSA素因遺伝子を同定する。剖検組織やモデル系を用いて病態の分子機構を解明する。痙性対麻痺(SPG)とMSAの全国多施設共同研究及び、自然史調査を行う。神経生理学、画像、症候学、生化学的手法により鋭敏で定量可能な重症度評価法を検討する。リハビリテーション効果を検証し、在宅療養用の指導書を作製する。
結果と考察
1)MSA:剖検例の検討により病変が自律神経障害に関与する部位に偏在する例のあることを明らかにした;素因遺伝子は探索中である;既存のスケール複数を6カ月毎で評価した結果、UMSARSとBerg Balance Scaleが最も鋭敏であった。2)指標:髄液中インターロイキンとケモカインの定量、髄液のプロテオミクス解析、血漿・髄液・FFPE標本のmiRNA解析、ジョセフ病(MJD)患者の脳MRS等を行い、各々に病態を反映した異常を認めた;リズム形成障害を各運動課題により検討した結果、運動速度の変動係数が既存の指標と高く相関した;等速反復運動の速度変動を測定する検査プログラムを開発・検証した結果、速度の変動係数は既存のスケールと相関し、日内変動・日差変動、評価者内誤差、評価者間誤差は共に小さかった;心理物理検査はSCDが時間予測に基づいた行動制御が困難であることを示した;小脳には外界に適応した運動プログラムを作る機能があるので、プリズム眼鏡で視覚に偏移を与えた場合の順応過程を検討したところ、眼鏡装着により健常者は順応して的に指をあてることができるようになり眼鏡を外すと逆に指を反対側にずれた場所を指す現象がみられるが、患者ではこの順応は欠如していた。3)遺伝性SCAの原因:KCND3変異によりSCA18/22が日本人にも同定された;SCA31は(TGGAA)n伸張によるが、(TAAAA)n及び(TAAAATAGAA)n伸張に因る例が見いだされた;SPGの新規当該遺伝子/起因変異が三つ報告された。4)疾患の表現型:SCA36の臨床と病理像を明らかにした;SCARB2変異に因るaction myoclonus-renal failure syndromeの新規変異剖検例の臨床と病理所見、SCARB2遺伝子の組織発現低下などを明らかにした;SCA31にみるプルキニエ細胞周囲のcoat-like構造の詳細を明らかにした。5)自然史研究:MJD、SCA6の前向き研究を継続中である;パーキンソニズムを主徴とするMSAの疫学研究を開始した。6)病態機構:選択的オートファジーに関与するp62とNBR1はMSA及びレビー小体病の封入体に局在し、凍結組織の生化学的解析では正常対照例の2倍以上に発現が増加していた;p62とその翻訳後修飾p62S403リン酸化のpoly Q分解制御における意義を明らかにした;MSA in vitroモデル系で、SNCAの細胞外排出にはRab11が関与する小胞輸送システムが、細胞内取り込みにはダイナミンが関与し、ダイナミンをセルトラリンにより阻害するとSNCAの細胞内取り込みが抑制された;免疫組織学的検討でALS関連蛋白質の局在を検討したところ、poly Q病及びMSAでは正常と局在の異なるものがあり、本来の機能が損なわれている可能性を示した:SCA1ノックインマウスは末梢神経の病理と機能異常を再現したのでモデル動物として有用である;CRAG遺伝子を導入したAAV9を新生時期MJDモデルマウスに静脈投与するとプルキニエ細胞の機能が回復した;病態関連分子としてSCA1ではHMGB1/2、ハンチントン病ではKu70とHMGB1を同定した;poly Q病ショウジョウバエモデルはカロリー制限により疾患進行が抑制された;7)治療:著しい企図振戦を呈した例に視床Vim核を深部脳刺激すると、運動失調は変わらないが振戦が消失した;リハビリテーション前後で失調評価項目と小脳萎縮の程度との相関を検討したところ、小脳萎縮はリハ直後の運動失調と強く相関し、歩行速度は虫部萎縮の強い方が改善した;在宅療養リハの指導書を作成した。
結論
対象疾患が多いが、病因・素因解明、重症度評価系、分子病態機構、疾患モデル作製に取り組んでいる。今までの成果をもとに、目標である治療法開発、評価系の開発に向けた研究を推進し、診断基準の改定、リハビリテーションの有効性検証、指導書の作製を継続する。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231030Z