文献情報
文献番号
201231026A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢性摂食異常症に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小川 佳宏(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 芝崎 保(日本医科大学大学院医学研究科)
- 児島 将康(久留米大学分子生命科学研究所)
- 正木 孝幸(大分大学医学部)
- 中尾 一和(京都大学大学院医学研究科)
- 久保 千春(九州大学病院)
- 中里 雅光(宮崎大学医学部)
- 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科)
- 鈴木 眞理(政策研究大学院大学保健管理センター)
- 堀川 玲子(国立成育医療研究センター)
- 遠藤 由香(東北大学病院)
- 岡本 百合(広島大学保健管理センター)
- 間部 裕代(熊本大学医学部附属病院)
- 横山 伸(長野赤十字病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、中枢性摂食異常症の成因・病態に関する基礎研究と臨床研究、臨床現場に有効な対処法・治療法の開発のための臨床研究を組み合わせて本症の新しい治療法と予防法の開発を推進することである。以上により、難治性疾患としての中枢性摂食異常症の克服に向けて有効な予防法と治療法に関する基盤データの集積とインフラの整備を推進し、患者自身のQOLの向上のみならず、本症患者と予備軍の減少により医療福祉行政における経済損失の抑制につなげたい。
研究方法
基礎研究では、摂食・エネルギー代謝調節関連分子あるいは受容体の遺伝子改変動物を用いて、中枢性摂食異常症の成因と病態に関する摂食・エネルギー代謝調節の分子機構と中枢性摂食異常症における主要な中枢性神経伝達分子の病態生理的意義を検討した。臨床研究では、機能的磁気共鳴画像法や近赤外線スペクトロスコピーなどの方法論も導入し、摂食障害の病態の解析を開始した。「摂食障害のプライマリケアを援助する基幹医療施設のネットワーク形成を目指したWG」により、前年度より進めている小学生・中学生・高校生を対象とした全国疫学調査のパイロット研究を継続した。小児思春期摂食障害の評価におけるEAT26の有用性の検証とともに、基幹医療施設のネットワークの充実に向けて、本邦における摂食障害家族会の実態調査を実施した。
結果と考察
1)中枢性摂食異常症に関する基礎研究:遺伝子操作マウスやラットなどモデル動物を用いる検討により、飢餓時の骨格筋アミノ酸代謝における転写調節因子FOXO1の機能的意義、低出生体重が成長後に摂食行動異常を示す可能性、褐色脂肪組織におけるグレリンの体温低下・代謝活動抑制作用、消化管ホルモンの摂食調節作用における迷走神経求心路の役割、飢餓時の脳内側坐核ヒスタミンの摂食調節における機能的意義が明らかにした。
2)中枢性摂食異常症に関する臨床研究:機能的磁気共鳴画像法を用いた脳神経活動の解析の有用性、中枢性摂食異常症患者における中鎖脂肪酸経口投与の臨床応用の可能性、語流暢課題時の近赤外線スペクトロスコピーにより評価される脳血流や頭部MRI画像によるVBM解析による体制感覚野や視床の体積の優位な低下などを明らかにした。本症の合併症として骨粗鬆症の薬物療法に関する臨床研究を開始した。性腺補充治療介入例と未介入例について成長成熟障害と骨粗鬆症の予後を比較検討し、性腺補充例は速やかな体重回復と骨密度の増加が認められた。成長障害持続例では成長ホルモン治療により成長率の著しい回復が認められた。
★疫学調査:2010年度以降、養護教諭へのアンケート方式で東京都の高校生の有病率を検討し、 全日制の都立高校 129校中54校と共学あるいは女子私立高校179校中96校より回答を得た。神経性食欲不振症の診断や疑い例として医療機関で加療されているのは、3学年66084人中107人、未受診の疑い例は56人、総患者数は163人で、女子高校生10万人あたり247人と算出された。男子生徒の神経性食欲不振症は3学年44156人中、疑い例も含めて5名であった。この方法による神経性大食症や特定不能の摂食障害の生徒数は神経性食欲不振症より少なかった。2つの都立高校の生徒より得られたEating Attitudes Test(EAT26)の結果と身長・体重の実測値から、無効回答の有無、検査時のBMIとEAT26の得点の分布、過去1年間のBMIの変化量とEAT26の得点も分布を解析し、本研究方法の妥当性を解析した。首都圏における疫学調査の結果を踏まえて、2012年度は、小学生(宮崎県、熊本県)、中学生(宮城県、宮崎県、熊本県)、高校生(長野県、福岡県、宮崎県、熊本県)を対象に本人への質問紙(EAT26)と身長体重の実測値、養護教諭へのアンケートによる疫学調査を実施中である。既に解析が終了した長野県の女子高校生の神経性食欲不振症の有病率は0.2%であり、首都圏とほぼ同等であることが明らかになった。一方、大学生(広島県、愛知県)については、スクリーニングは身長体重実測値と質問紙で行い、次いで面接により判定している。
★診断基準の見直し:日本摂食障害学会理事の鈴木が中心となって、同学会にて本症の診断基準の見直し、医学用語の統一について審議を継続している。
2)中枢性摂食異常症に関する臨床研究:機能的磁気共鳴画像法を用いた脳神経活動の解析の有用性、中枢性摂食異常症患者における中鎖脂肪酸経口投与の臨床応用の可能性、語流暢課題時の近赤外線スペクトロスコピーにより評価される脳血流や頭部MRI画像によるVBM解析による体制感覚野や視床の体積の優位な低下などを明らかにした。本症の合併症として骨粗鬆症の薬物療法に関する臨床研究を開始した。性腺補充治療介入例と未介入例について成長成熟障害と骨粗鬆症の予後を比較検討し、性腺補充例は速やかな体重回復と骨密度の増加が認められた。成長障害持続例では成長ホルモン治療により成長率の著しい回復が認められた。
★疫学調査:2010年度以降、養護教諭へのアンケート方式で東京都の高校生の有病率を検討し、 全日制の都立高校 129校中54校と共学あるいは女子私立高校179校中96校より回答を得た。神経性食欲不振症の診断や疑い例として医療機関で加療されているのは、3学年66084人中107人、未受診の疑い例は56人、総患者数は163人で、女子高校生10万人あたり247人と算出された。男子生徒の神経性食欲不振症は3学年44156人中、疑い例も含めて5名であった。この方法による神経性大食症や特定不能の摂食障害の生徒数は神経性食欲不振症より少なかった。2つの都立高校の生徒より得られたEating Attitudes Test(EAT26)の結果と身長・体重の実測値から、無効回答の有無、検査時のBMIとEAT26の得点の分布、過去1年間のBMIの変化量とEAT26の得点も分布を解析し、本研究方法の妥当性を解析した。首都圏における疫学調査の結果を踏まえて、2012年度は、小学生(宮崎県、熊本県)、中学生(宮城県、宮崎県、熊本県)、高校生(長野県、福岡県、宮崎県、熊本県)を対象に本人への質問紙(EAT26)と身長体重の実測値、養護教諭へのアンケートによる疫学調査を実施中である。既に解析が終了した長野県の女子高校生の神経性食欲不振症の有病率は0.2%であり、首都圏とほぼ同等であることが明らかになった。一方、大学生(広島県、愛知県)については、スクリーニングは身長体重実測値と質問紙で行い、次いで面接により判定している。
★診断基準の見直し:日本摂食障害学会理事の鈴木が中心となって、同学会にて本症の診断基準の見直し、医学用語の統一について審議を継続している。
結論
臨床現場において有効な中枢性摂食異常症に関する対処法・治療法の開発を目指して、本症の成因・病態に関する基礎研究と臨床研究を推進した。基礎研究により中枢性摂食異常症に関連する病態と中枢性摂食調節の分子機構が明らかになり、臨床研究により中枢性摂食異常症の病因・病態の臨床的理解が進んだ。摂食障害のプライマリケアを援助する基幹医療施設のネットワークを活用して、本症の実態把握に向けた全国疫学調査を実施した。
公開日・更新日
公開日
2013-05-22
更新日
-