副腎ホルモン産生異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231025A
報告書区分
総括
研究課題名
副腎ホルモン産生異常に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
柳瀬 敏彦(福岡大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 諸橋 憲一郎(九州大学大学院 医学研究院)
  • 宮本 薫(福井大学 医学部)
  • 田中 廣壽(東京大学 医科学研究所)
  • 高柳 涼一(九州大学大学院 医学研究院)
  • 成瀬 光栄(京都医療センター 臨床研究センター)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部)
  • 田島 敏広(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 勝又 規行(国立成育医療研究センター研究所)
  • 棚橋 祐典(旭川医科大学 医学部)
  • 西川 哲男(横浜労災病院)
  • 柴田 洋孝(慶應義塾大学 医学部)
  • 武田 仁勇(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 曽根 正勝(京都大学大学院 医学研究科)
  • 佐藤 文俊(東北大学病院)
  • 岩崎 泰正(高知大学 臨床医学部門)
  • 笹野 公伸(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 上芝 元(東邦大学 医学部)
  • 山田 正信(群馬大学 医学部)
  • 方波見 卓行(聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院)
  • 三宅 吉博(福岡大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
26,787,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
副腎ホルモン産生・作用異常症の実態把握と病因・病態の解明により、適切な診断・治療法を提示する。特に疫学研究では、過去、我が国の疫学調査で欠落していた治療と疾患予後との関連性を明らかにすることに重点を置く。
研究方法
1. 疫学研究
(1)全国疫学調査:追加二次調査により原発性アルドステロン症(PA)1706例、サブクリニカルクッシング症候群(SCS)390名、アジソン病146名のデータ集積を行い、最終統計解析をおこなった。(2) 21-OHD以外の先天性副腎過形成、先天性副腎低形成、偽性低アルドステロンの全国疫学調査の実態調査を行った。(3)施設研究としてSCSの手術による予後の検討を行った。
2. 基礎・臨床研究:先天性ステロイド産生異常症の成因解明やPA等の副腎腫瘍の成因に関する研究、iPS細胞からのステロイド産生再生等の種々の研究を行った。
結果と考察
1.疫学研究
(1)全国疫学調査:2003-2007年における疾患群の実態と期間内での治療予後が明らかとなった。PAにおける高血圧、低K血症の改善予後に関して薬物療法より手術療法の優位性が明らかになった。PAにおける高血圧、低K血症の改善予後に関して薬物療法に較べ、手術療法の統計学的優位性が明らかとなった。またSCSにおいて、副腎腫瘍径3.5cm以上がオッズ比2.28で高血圧の予後不良因子と判明した。これらはPA, SCSの今後の治療指針の作成上、参考になる貴重なデータと言える。また平成25年度計画としての新たな疾患予後調査の一環として、副腎偶発種の10年後予後調査の調査票の策定がなされた。(2)先天性副腎低形成57例のうち、DAX-1異常症22例、SF-1異常症1例、MC2R異常症2例、遺伝子変異なし16例、遺伝子解析未施行16例と判明した。先天性副腎低形成には依然、病因不明の病態が存在することが明らかとなり、新たな原因遺伝子の探索が望まれる。(3)施設研究として高血圧や糖尿病を合併する副腎性SCSでは、腫瘍摘出によりこれらの心血管イベントリスク要因の改善が期待される結果が得られた。SCSの治療指針の作成上、有益なデータと言える。

2.基礎・臨床研究
(1)iPS細胞から、胚葉体形成を介して、ステロイドホルモン産生細胞の創生に成功した。先天性、後天性副腎不全症患者への将来的な治療応用研究が期待される。(2)SF-1の新たな標的遺伝子として解糖系酵素群、glutathione S-transferase(GST)familyのうち、GSTA1とGSTA3が3β-HSDと同様、イソメラーゼ活性を有していることが明らかにされた。それぞれステロイド産生細胞の細胞増殖やステロイド代謝との関連が示唆された。(3)ミトコンドリアエネルギー制御に関与するERRαは思春期後成人副腎、胎児期副腎永久層、副腎腫瘍では副腎皮質癌における相対的高発現を認め、副腎細胞増殖との関連が示された。またCYP11B2転写調節機序の研究からアンジオテンシンII(AII)やKは少なくとも一部Ca2+/NFATシグナル伝達系を介して副腎のアルドステロン合成を調節している可能性が示唆された。(4)日本人小児2例ではじめて、アルドステロン欠損症におけるCYP11B2変異が明らかとなった。 (5) PA腺腫の成因として注目されているKチャンネルのKCNJ5遺伝子変異とその臨床型(変異有り群では相対的に重症型)との関連が複数の施設研究から明らかにされた。(6) 特発性アルドステロン症患者の血清中にはPKAあるいはAII 非依存性のアルドステロン分泌促進因子が存在する可能性が示唆された。(7) スピロノラクトン長期使用により臨床的寛解を示すPA症例が呈示され、今後のPA治療指針の作成上、重要な示唆を与えた。(8)現行のPA診断基準の簡易化、標準化をめざす一環として生食負荷試験において現行の2L/4時間ではなく、1L/2時間においても施行可能であることが示された。(9) 超選択的 副腎静脈サンプリングの施行により、両側PA腺腫を正常副腎温存両側副腎手術により治癒させることが可能であることが示された。現時点では、治療可能施設は限られるが、PAの今後の先端的治療の可能性が提示された。
結論
得られた成果は、本領域の疾患の病態の理解、新たな診断法や治療指針の提示、治療法の開発に有用である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231025Z