間脳下垂体機能障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231024A
報告書区分
総括
研究課題名
間脳下垂体機能障害に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大磯 ユタカ(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森 昌朋(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 肥塚 直美(東京女子医科大学 医学部)
  • 石川 三衛(自治医科大学附属さいたま医療センター 内分泌代謝科)
  • 片上 秀喜(帝京大学ちば操業医療センター 内科・臨床研究部)
  • 横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
  • 峯岸 敬(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 島津 章(国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター)
  • 柳瀬 敏彦(福岡大学 医学部)
  • 沖 隆(浜松医科大学 医学部)
  • 中里 雅光(宮崎大学 医学部)
  • 有田 和徳(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 岩崎 泰正(高知大学 教育研究部)
  • 高野 幸路(東京大学 医学部附属病院)
  • 竹腰 進(東海大学 医学部)
  • 清水 力(北海道大学 医学部附属病院)
  • 巽 圭太(宝塚大学 看護学部)
  • 菅原 明(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 有馬 寛(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 高橋 裕(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 田原 重志(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
57,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は間脳・下垂体系内分泌疾患の病態生理、分子生理、分子病理的解析による基礎的研究と、新規病態の発見および病態分類の策定に代表される診断学、発症予防、増悪抑止に向けた新規治療法の開発とその評価にかかわる治療学、長期予後解析などを行う疫学などの臨床的研究を各々の領域の専門研究者が遂行し、有効でQOLの高い診断・治療法を開発し臨床へフィードバックすることを目的としている。研究対象は下垂体病変の7病態10疾患を超え、多様な難治性疾患について効率的に研究を進めることが求められているため、疾患横断的研究と個別疾患研究が研究事業の両輪となる。
 また、既に行っている研究の国際交流をさらに進め、世界的に統一された診断基準、治療マニュアルの設定に積極的に関与するとともに、国内の関連する患者会との連携を今後も深め、研究者と患者、さらに厚生行政の三者が効果的なネットワークを構築し疾患治療を良質化するようその中心となって機能することも重要な目的となる。
研究方法
疾患横断的な重点研究課題としては、新規下垂体病変の疾患単位の確立を目的とした診断法の開発、精度の高い診断・治療基準の策定、例えば積極診断が困難なリンパ球性漏斗下垂体後葉炎の診断法の確立と症例の蓄積による臨床像の再分類を行う。また内科的に有効な治療方法を持たないCushing病に対する新規治療法の開発に向けた研究の実施、さらに機能性下垂体腺腫の腫瘍発生機序と腫瘍増殖に関する研究として成長ホルモン産生下垂体腺腫のエピゲノム解析等を行う。個別研究としては、バゾプレシン、プロラクチン、ゴナドトロピンおよびTSH分泌異常症、先端巨大症、クッシング病、下垂体機能低下症の7病態を対象として、下垂体疾患の発症機構の解明、新規診断法・治療法の開発に向け集学的アプローチにより研究を進める。
結果と考察
本研究班の代表的研究課題であるリンパ球性漏斗下垂体後葉炎の解析では、本研究で発見した責任抗原に対する自己抗体のELISAキット構築のための研究を進めており、また2012年11月にPMDA薬事戦略相談の個別面談を受けるなど、今後早期に世界初の本疾患の診断検査薬となるよう実用化に向けた研究を進めている。また、同様に重点研究課題であるCushing病の新規治療薬開発では、レチノイドX受容体アゴニストであるHX630が、下垂体ACTH産生細胞におけるPOMC遺伝子転写抑制を転写因子Nur77ならびにNurr1の発現抑制を介し発現する事を明らかとし、X630が新規Cushing病治療薬となる可能性を得た。
 また、個別研究の代表的成果では、これまで臨床現場から強く求められていたIGF-1基準値の全年齢をカバーする平滑化曲線を作成した。新生児から18歳の健常小児と18歳以上の健常成人の合計1,685例のIGF-1値を解析し、各年齢でBox-Cox変換により歪度を調整して正規分布化を行い、3次スプライン関数により平滑化を行った。新しいIGF-1曲線では、全年齢のデータを同時解析し平滑化することによりトランジション年齢でも使用可能な基準値が設定され、直ちに臨床応用可能な診断用基礎情報を提供することができた。また、種々の大分子ACTHあるいはproγ3-MSHに対する特異的な高感度測定法を開発し,Cushing病との鑑別がきわめて困難な異所性ACTH産生症候群の診断を可能とする簡便で非侵襲的な診断法の構築を行った。本研究の進展は各種間脳下垂体疾患の発症機構の解明、特異的な治療法・治療薬の開発応用を可能とし、現在の対症的治療を原因治療へと展開する可能性が期待される。本研究で得られる難治性疾患の新規治療法の開発は、患者の身体的並びに経済的負担を軽減するだけではなく、創薬等の新規展開による医薬領域の活性化にも大きなメリットをもたらすと予測される。
結論
今年度の研究成果により、間脳下垂体疾患の新規診断法・治療法の開発が一段と進み、診断の平易化、治療の単純化はもとより患者の予後やQOL改善という日常臨床現場からの強い要請に応えることが次第に可能となってきた。さらにわが国独自の難病研究組織である本研究班が世界に向けてこの領域をリードする研究成果を発信し、グローバルな視点での間脳下垂体疾患の診断・治療への貢献を行った。今後はこれまでの研究業績を基盤として、ES細胞、iPS細胞を利用した人工下垂体構築など大きな課題達成も視野に入っており、近い将来、現在の医療水準を全く異なるレベルへと移行させることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
73,000,000円
(2)補助金確定額
73,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 50,555,355円
人件費・謝金 1,285,650円
旅費 1,014,740円
その他 4,683,255円
間接経費 15,461,000円
合計 73,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
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